第304話 ファティリタス復興編 【第4クール】 教会軍出立
【ユウスケ達がクラウディアと打ち合わせていた頃】
――中央都市・教会――
「枢機卿。軍の編成が済みました」
「数はどの程度です?」
「八百となります」
「? 千はいたでしょう?」
司教の報告内容に枢機卿が首をかしげる。司教は、実にいいづらそうに報告を再開した。
「そ、それがですね……。今回の<異端審問>には従えないという者達もいまして……」
「は? なんでそんな者共が教会にいるのです? ――嘆かわしい! 三十年前の大戦を忘れたというのか!?」
枢機卿が憤るが、司教からしてみたら『そんなこと、自分に言われても……』である。
(だから言いたくなかったんですよ……)
心中でため息をつくが、もちろん表には出さない。さらに面倒なことになるのは分かりきっている。
「まぁ、いいでしょう……。では、予定通り明朝出立しますよ?」
「? 枢機卿もおもむかれるので?」
「当然です。久々の大掃除――楽しみではないですか」
枢機卿がクツクツと笑う。
(そんなんだから、呆れて離れる奴らも出るんですよ~)
司教の心の声はもちろん通らない。部屋には、枢機卿の暗い笑い声がしばらく響き渡るのだった。
◆
【翌朝】
「圧倒的じゃないですか? 我が軍は」
「そうですね……」
枢機卿と司教が、広場に整列した八百人を眺める。枢機卿は、とても満足げに、うんうん頷いている。
(練度は騎士団の方が上なんですけどね……まぁ、ご機嫌だし、いいか)
「そろそろ宜しいかと。御訓辞をお願いします」
司教は、騎士団と衝突したくないな……と思いつつも、枢機卿に出立の音頭を取らせる。
枢機卿は満足げに大声でのたまう。
「皆、よくぞ集まってくれました!! 私達の目的は、神のご意志! 魔族が懲りずに反抗の兆しを見せるため、これより討伐に向かいます! それでは、出立!!」
枢機卿の号令で、兵が一斉に都市の南門へと向かう。なんだなんだと珍しさに寄ってくる住人を見送りとし、枢機卿率いる八百の兵が、<異端審問>のため森林跡地へと出立するのだった。




