第293話 ファティリタス復興編 【第4クール】 魔族排斥の決
――中央都市・神殿――
枢機卿の仕切りで会議が始まる。さながら、異端審問会議と呼ばれるような代物だった。皆が、魔族やユウスケ達の排斥を望む。――いや、一部を除いて。
「バカな!? 彼らはそこで暮らしているだけだろう!? こちらに害を与えている訳でもない!!」
「軍属とは思えぬ発言ですな、騎士団長。この世界の治安を維持するのが貴殿らの仕事ではないですかな?」
「魔族やそれと共に暮らす同胞を根絶やしにすることがそうとでも!?」
「その通り。先の戦で魔族から受けた被害は大きい。本来なら、完膚なきまでに根絶やしにすべきなのです。それを、我らの温情で生き長らえていることも忘れ人と共存するなど、あってはならぬことです。その様な悪しき思想に染まり魔族と共存する者共も同様です」
思想が根本的に違う。教会と軍の意見は平行線となる。教会はあくまで、魔族を異端とし、それと共存する人間も含め排除する考えだ。それに対して、軍は人に害を成す存在は排除するが、魔族の排斥については一歩引いている。
確かに教団員の言う通り、先に人間と魔族の大きな戦争はあった。だが、そこで痛手を受けたのは人間だけではない。むしろ、戦に負けた魔族側の方が大きいだろう。住み処を追い出され、今も死滅への道を進んでいる。
――『勝者こそが正義』
――『歴史は勝者が決める』
戦争において、そのようなところは確かにある。だが、負かした相手を根絶やしにするのは、過激過ぎはしないだろうか。
「私達も枢機卿のお考えに賛同する。何か起きてからでは遅いのだ。聞けば、奴らは一つ所に続々と集結しているらしいではないか。反乱軍になっても困る」
「寄り添い生きていくのは魔族に限った話では無いだろう!! それに、人間と共存出来ているというではないか! それも幼い子供達が!! 『怖いから滅ぼす!』 それでは、その子供達よりも情けないぞ!!」
国政を担う役人は教団側についた。いくら女騎士団長が言葉を尽くそうと、事は教団側に有利に進んだ。
「満場一致とはいきませんでしたが、過半数が魔族の排斥に賛同しておりますので、その方向で」
「軍からは兵を出さんぞ!!」
「それは残念です。でしたら、教会から兵を出しましょう」
女騎士団長は自分達は協力しないことを名言するが、枢機卿が教団の有する戦力――異教徒狩りと教会の防衛を目的とした神聖騎士団――の派遣を申し出る。女騎士団長は舌打ちしたくなるが、もう流れは止められなかった。
「出征は三日後とします。皆様、後は我々にお任せください」
枢機卿がそう締め、役人達からの拍手をもってその場は解散するのだった。




