第287話 ファティリタス復興編 【第4クール】 いったい何なんだ?
俺達はベリアルの様子を見にベリアル宅に向かった。――なぜか、両サイドの腕をルルカとアンリさんにそれぞれ取られている。
歩きにくいし恥ずかしいから断りたかったが、なぜか二人の表情に余裕がなく、振りほどくのははばかられた。
ベリアル宅に着き、ベリアルを呼ぶ。
◆
「やぁ、ユウス……なんだい? 僕に見せつけてるのかい?」
出迎えに来てくれたベリアルだが、ルルカとアンリさんに腕を組まれた俺を見ると、笑顔で怒り出した。
見ると、ルルカとアンリさんも笑顔だ。だが、“笑っていない”。――いったい、どういうことだ?
「ちょっとごめんなさい」
ルルカはそう言うと、ベリアルに顔を近づけてスンスンと匂いを嗅ぎ出した。何かに気付いたように距離を取るベリアル。だが――
「やっぱりぃ! ベリアル様の匂い!!」
「? なんのことだ?」
ルルカがベリアルを指差してそう叫ぶ。ちょっと涙目だ。ベリアルはベリアルなんだから当たり前だろうに。意味がわからない。
「ベリアルさん! 抜け駆けなんて酷いです!」
アンリさんも怒っていた。『ギュッ!』と引き絞られる腕の痛みで俺は悲鳴を上げる。
「アンリさん、痛い! 痛い!」
「痛いのは私の心です!!」
苦情を言ったら逆に怒られた。腕を解かれて襟首をつかまれる。――だから、いったいなんなんだ!?
◆
「~~~♪」
二人ににらまれるベリアルはどこ吹く風だ。そっぽを向いて口笛なんぞふいている。――だが、若干気まずそう?
「「う~~~っ!!」」
ルルカとアンリさんが涙目でうなっている。
――どうしてこうなった?
「すまん、聞いていいのかわからんが、何があったんだ?」
俺がそう言うと、アンリさんに『キッ!』とにらまれた。
「ご自分の胸に手を当てて、よく考えて下さい!!」
言われるままに胸に手を当ててみる。そして、目を閉じて集中する。が――
「――すまん。本当にわからなくて……」
素直にそう言ったのだが、ルルカとアンリさんの反応は苛烈だった。
「もういい! ユウスケなんて知らない!!」
「ベリアルさん! 負けませんから!!」
「――ふぺっ!?」
ルルカにビンタされた。アンリさんは涙目のままベリアルにそう告げた。そのまま二人は走り去って行く。
ベリアルと二人、玄関前に取り残された。
「ほんとに何だったんだ?」
「――さぁ?」
ベリアルは若干気まずそうにそっぽを向く。
「こんな所で立ち話もなんだし、少し休んでいきなよ」
ルルカとアンリさんのことは気になるが、今は機嫌が悪いので、会いに行くのはまずそうに思う。
俺はそのままベリアル宅でしばしゆっくりするのだった。




