第281話 ファティリタス復興編 【第4クール】 子供の数
――魔城・食堂――
「ベリアル。君は私のことを誤解しているよ」
「何がさ? 子供、何人いるんだっけ?」
穏やかな夕食時、ベリアルから爆弾が投下された。本人にそのつもりはなかったのだろうが、バイラルの妻達にとっては一大事なのだった。
◆
「ミユは二人~」
「わたくしは三人産んでますわ」
「私は四人です」
ミユ、レイラ、ヒルダが次々にそう主張する。……いやいや、ちょっと待て!
「はぁ!? なんでそんなにいるんだよ!?」
「いや、なんでユウスケがキレてるのさ?」
ベリアルから冷静なツッコミが入るが、俺としては……俺としては、なんだか許せなかった! こんなキレイな嫁さんが何人もいて、さらに! そんなに子供がいるのに……。
俺は思わずリンダを見る。
「私も……一人目ができました」
「……」
リンダがほおを赤らめて言う。――あ、ヤバい。アルトじゃないけど、キレそう。うらやましすぎて。血の涙が出そう。
「魔族と人間じゃ、“当たり”率も低いでしょうに。――どんだけ頑張ったんだよ……」
ベリアルがあきれたように言う。当のバイラルは『こほん!』とわざとらしく咳払いをすると――
「私は妻達を愛しているからね。頑張るのは当たり前さ」
当然のように言い切った。
――クソゥ! 今すぐこいつを殴ってやりたい!
「ユ、ユウスケさん! 落ち着いて!!」
「放してくれアンリさん! すべての男の怨霊が俺にささやくんだ! 『こいつを殴ってくれ!!』と!」
モテない男達の嘆きの声が聞こえた。――そう。確かに聞こえたんだ! でも、殴ったらさすがにマズかっただろう。アンリさんに羽交い締めされ、なんとかことなきを得る。
「なに? ユウスケも子供が欲しいの?」
「そりゃあ、種の保存は生物としての当然の欲求で――」
ベリアルから面と向かって言われると、口ごもってしまう。欲しいけど、それをはっきり言うのはやっぱり気恥ずかしい!
ベリアルは「ふ~ん」と言ったきり黙りこんでしまった。何かを考え込んでいるようだ。
「こ、子供達もいますし、この辺にしておきましょう?」
アンリさんのセリフにハッとして子供達を見ると、エミリーとフランはキャイキャイ盛り上がっていた。やはり女の子なので、色恋事は大好物なのだろう。
対面のリンダに色々と聞いては顔を赤くしていた。
「そ、そうだな。この話はこれくらいにしよう」
そうして、その後は平和に食事を続け、夕食会はお開きになるのだった。




