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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第3クール】
275/321

第275話 ファティリタス復興編 【第4クール】 勉強会

――森林跡地・家――


 お勉強会を始めたものの、やはり文字の習熟速度には個人差があった。


「できた!♪」

「おお、もうか。どれどれ? ――うん、全部OKだ!」


 フランが頭一つ抜けていた。いつもしっかりしているし、頭がいいのだろう。


 続いて他の人間の子供達。個人差はあれど、まぁ、それ程大差はない。ここまでは上手くいっていたが――



「お姉ちゃん……」

「仕方無いでしょ? わたし達は魔族なんだから」


 そう。魔族の子達に遅れが出ていた。アルルの妹達が泣きそうになり、アルルが焦っている。


「――ああ、もう」


 苛立っているアルルの方に歩みよっていく。


「気にするな。これはもともと人間が作った文字なんだ。人間が覚えやすいように作られてるだけだ」

「そうですよ。――そうだ。魔族の間では文字とかなかったんですか?」


 アンリさんもフォローに来てくれた。


「無い。話すだけで十分だから」


 アルルがムスッとしながらそう答える。――まぁ、俺の元いた世界でも、年配の方でそういう人だっていたし、何もおかしくはない。


――でもそうだな。やっぱ、可能性を拡げることは楽しいことだと思うんだ。


 だから――



「絵本読みながらやろう? ――アンリさん」

「はい。――あ、ちょっと待ってくださいね」


 人間の子供達はとりあえずベリアルに託し、俺とアンリさんはアルル達に付き添う。――普通、逆な気はするが気にしない。


 アンリさんがアルルとその妹達の間に座り絵本を開くと、皆がのぞきこんできた。やはり、絵本には興味があるみたいだ。


「まずは、お勉強とか気にしないで絵本を読みますね?」


 そうしてアンリさんは、絵本の朗読をしながらページをめくっていった。



「――あ、ズルい!」

「はいはい。君はこっちね~。後で読んであげるから」


 人間の子達が気付いてこちらを指さすが、ベリアルがうまくいなして勉強を続けさせる。なんか、お母さんに向いてるのかもしれん。――本人に言ったら顔を真っ赤にしそうだけど。


――で、こっちのもう一人のお母さん。


「『そうして、お姫様は王子様とむすばれるのでした。――おしまい』」


 終わると、アルルや妹達から拍手が起きた。先程までの泣きそうな顔と違い、皆、笑顔だ。


「ねぇ、他のも読んで?」

「え? ――どうしましょう、ユウスケさん?」

「いいんじゃないか? 俺が読もうか?」

「お姉ちゃんがいい」


――つらたん。気を使ったらこれだよ。俺がイジケてる間にもアンリさんはアルル妹達のリクエストを受けて違う本を読み始めていた。


 そうして、勉強会というよりは絵本の朗読会になったが、魔族の子達が皆笑顔で過ごすことができた。


「絵本、貸してもらえる?」

「もちろんいいですよ?」


 アルルがアンリさんから先程の絵本を借りて、絵本に書かれている文字と、勉強用に配っていた文字の一覧表を見比べている。妹達に読んであげたいのだろう。


「まずは絵本に書いてあるのと同じ単語から覚えましょう。一つずつでいいんです。このお姫様がこれで――」


 アンリさんが、わかりやすいところからアルル達に教えていく。やはり、キレイな絵があった方が頭に入るのだろう。最初の勉強の時とはうってかわってのめり込んでいた。


(上出来じゃないか?)



 アンリさんに任せっきりの俺が言うのもなんだが、この勉強会を開いてよかったなと皆を見ながら思うのだった。



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