第274話 ファティリタス復興編 【第4クール】 字のお勉強
【それから数日後】
――森林跡地・家――
「いい感じじゃないか?」
みんなそれぞれにやることができ、特に問題なくまわっているように思える。
「集落から来た人達もここに住むことを決めてくれましたしね」
そうなのだ。あの後、上手くやっていけそうだと思ってもらえたのだろう。五人全員からここで暮らしていきたいとの申し出を受けた。嬉しいことだ。
「魔族の方も上手くやれてるみたいだし、ここまでは問題なさそうだね」
上手くいきすぎて怖いくらいだ。
「後やっておくべきことは……」
俺はこの先のことを考えるのだった。
◆
「では、字の読み書きのお勉強をします」
「「「え~……!?」」」
子供達を読んでそう告げたところ、露骨に嫌な顔をされた。勉強が嫌なのは異世界も共通なのか?
「なんであたし達まで……」
ちなみに、魔族の小さい子達も呼んである。
「人間の文字、必要ない」
「まぁ、そうだよな……」
「ユウスケさん。ぶれてますよ?」
アルルがボソッとこぼす不満に思わず賛同してしまったが――
「まぁ、変装して人間の町に行くこともあるかもだし。――なぁ、ベリアル?」
「え? そこ、僕? ――まぁ、確かに潜り込んで食糧とかを魔族に横流ししてたけど……」
「そんなことしないけど……」
そうだよな。普通はそんなことしないか……。俺も納得しかけてしまう。そんな時――
「絵本、好きな人~?」
アンリさんがどこからか絵本を取り出して、皆に見えるよう掲げて見せる。
「「「は~い!♪」」」
子供達や魔族の小さな子から手が上がった。
「字がわかると、この本が読めますよ」
場がざわついた。なるほど。その手があったか!
「お姉ちゃん」
「わかったわ……はぁ」
アルルも妹にせがまれて嫌とは言えなくなったようだ。しぶしぶながらも同意してくれた。
「まぁ、自分のペースでいいから少しずつでもやってみようか」
そうして、まずはやってみようと勉強会を始めるのだった。




