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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第3クール】
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第249話 ファティリタス復興編 【第3クール】 狼男、鳥を育てる

――森林跡地・家――



「う~ん……」

「お目覚めか?」


 ベリアルがあくびをして起き上がったので、俺は『よっ!』と手を上げて挨拶する。目をパチクリさせて俺を見るベリアル。やがて――


「な、ななななな――!?」

「なかなか起きないもんだから心配したんだぞ? 飯ならあっちに――」

「なんでいるのさーーー!?」

「ばふっ!」


 顔を真っ赤にしたベリアルに枕をぶつけられた。顔面に直撃する。


「どうしました!?」


 物音を聞き付けてアンリさんが駆け寄ってくる。俺とベリアルを見回して一言。


「ユウスケさん。お話があります」


 アンリさんにお説教された……。



「あ~。今日も魔族を呼んでくるつもりだったのに~」

「疲れてるだろ。少しは休め」


 ふてくされるベリアルが俺をツンツンする。


「やめろよくすぐったい」

「起こしてよ~」


 ベリアルの頬がぷっくぷくだ。だいぶ普通の少女っぽくなってきたな。――いや、長命の魔族の幹部なんだけどな。


「ユウスケさん?」

「あ……はい!」


 アンリさんからまたこわいオーラが発散されたので、俺は慌てて姿勢をただす。――すっかり調教された獣の気分だ。


「狼男達の様子でも見に行こうぜ?」


 二人もうなずき、さっそく様子を見に行ってみた。


――コッコ鳥小屋前――



「あ、ユウスケ! あれ、何とかしてくれ!」


 俺を見つけるとケニーさんがとある方を指差す。見てみると――


「コ、ココ!?」


 鳥小屋の外から、物欲しそうにコッコ鳥を『じーっ』と見つめる狼男が二人。――スゴく食べたそうだ。コッコ鳥は身の危険を感じてか、こちらに逃げてきていた。


 俺達は狼男達の方へと向かった。



「うっす」


 気軽に挨拶してみる。向こうも反応してくれた。


「昨日はありがとう」

「うまかった、肉」


 夕飯のお礼だった。いい奴らじゃないか。


「いいよいいよ。見ての通り、コッコ鳥をたくさん飼育してるんだ」


 二人が目で追う先を俺も見つめる。よく太ったコッコ鳥がそこにいた。


「……今日も出る?」


 素直な問いだった。俺は思わず笑い――


「ああ。だが、人も増えたから、今のペースで食べ続けるとさすがにもたないな。今後は肉を食べる間隔を――」


「そんな!?」

「手伝う! だから、肉、食いたい!!」


 狼男二人の必死な説得だった。――そ、そうか。そんなに気に入ったのか。


「う~ん……じゃあ、新しく鳥小屋を建てて、そっちの世話を任せてみるか」


 狼男が鳥を飼育する姿はなんともシュールに思えるが、よく考えたら人間だって食べるために飼育してるんだ。見た目以外の違いはないだろう。


 さっそく俺とアンリさんは、鳥小屋を新しく作った。



「こんなもんかな」

「これを増やせばいいんだな?」


 新しく作った鳥小屋にコッコ鳥を数羽放つ。餌や水のみ場、寝床もバッチリだ。狼男二人はご機嫌だった。というか、そろそろ――


「そう言えば、名前聞いてなかったな。俺はユウスケ。こっちはアンリさん」

「ウルガ」

「ウルッゾ」


 狼――ウルフから来てるのだろうか。まあ、わかりやすいのはいいことだ。


「よろしくな、ウルガ、ウルッゾ。じゃあ、こいつらを増やしてくれ。わからないことは――ケニーさん、頼みます」

「ああ。何でも聞いてくれ。肉をさばくのとか、やったことあるか?」

「そのまま食ってた」

「それじゃ料理はできねぇ。今度教えてやるよ」


 ケニーさんもここに呼んでいた。二人を助けてもらいたかったのだ。


 二人とケニーさんの様子を見る限り、うまくやっていけそうだった。よかったよかった。


「じゃあ、お夕飯作ってきますね?」



 アンリさんが家に戻っていき、俺達はしばらく新しい鳥小屋でウルガとウルッゾの働きぶりを見ているのだった。



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