第229話 ファティリタス復興編 【第3クール】 共闘
――南西の集落――
「バイラル様。何故かギャラリーが集まってきてます」
「あまり見ない顔ね~。このアンデッド達と似てるし、異世界人かしらね?」
ヒルダとレイラの言う通りだった。何故か異世界人らしき者達が見学に大勢集まってきている。こちらを遠巻きに見ているだけで、手伝ってくれる気配は無い。
「あれは異世界人様です! 今戦っているこのアンデッド達とは別グループの。前にこの集落にお見えになったので」
バイラルの後ろに隠れるリンダが、そうだと教えてくれる。――なるほど。異世界人だけど、このアンデッド達とは別の集団だったか。ならば――
バイラルは集団に向けて声を張り上げた。
◆
「お~い! 見てないで手伝ってくれ!!」
「な、なんだあの魔族!? こっちに手を振ってるぞ!?」
「え、えぇ。見た目からして、おばあ様から聞いていた吸血鬼。それも魔族の幹部であるバイラルって奴かもしれないけど……」
「ユウスケ、どうするんだよ?」
皆が俺を見る。――いつの間に俺が代表になったの!?
そうも言ってられないので、とりあえずは――
「一緒に戦おう。アンデッドをまずなんとかしないと」
「はい!」
アンリさんを始め、うなずく皆を連れて、俺は戦いの起きてる現場へと向かった。
◆
「――うおぉぉぉ……!? 強ぇ!?」
「4校は戦ってばかりだったみたいだからね! 強いわけさ!!」
大柄のアンデッドとつばぜり合いになる俺は、アンデッドのあまりの力強さにグイグイ押される。ジョセフが助けに入ってくれてなんとかはね除けられた。
「――なかなかやるわねっ!! だけど、まだまだぁ!!」
向こうでは魔術師の女アンデッドとジェシカがやりあっている。派手な魔法戦だ。勇者パーティの子孫で、実際に優れた魔術師のジェシカと対等とは、相手もやりおる。
「こっちは任せて!!」
盗賊風のすばしっこいアンデッドには、エマ、アリア、ヘンリーがあたっていた。何とか押さえ込めそうだ。
「――くっ! ジェシカ! 僕を盾に使ってくれ!!」
いてもたってもいられずランディがジェシカのもとに駆けつける。――自ら盾志望とは、やっぱり変わった奴だ。
そして、さっきまで戦っていた魔族達はというと――
「――――――」
魔族の男が何か呪文を詠唱していた。集中しているのか、目を閉じている。男の下の地面には、何か魔法陣らしき紋様が描かれている。――何かスゴそうだ。
詠唱が終わったのか、魔族の男がアンデッド達の方に右手をつき出した。そして――
◆
「<リインカーネーション>ッ!!」
アンデッド達三人をすっぽりと包む程の大きな魔法陣が地面に描かれた。そして、白い光が立ち上る。
アンデッド達は苦しそうに呻くと、そのまま倒れ伏した。
「流石はバイラル様です」
「お見事でした」
「やっぱりバイラル様、すご~い!」
安堵の吐息を漏らす魔族に、キレイな女性達が群がる。金髪シニョンのスレンダーな美女と、茶髪ゆるふわロングの艶やかな婦人、そして赤みがかった茶髪をショートボブにした美少女だった。
「バイラル。ありがとう」
そして、バイラルの後ろに隠れていたリンダまでも……。リンダはいつの間にか、すっかり垢抜けていた。
もとより器量よしではあったが、化粧や髪の手入れが洗練されたからか、――はたまた恋の力か、更にキレイになっていた。
明るい茶髪のセミロングで、服も前より大胆だ。着痩せするタイプだったようで、今やスタイルの良さを惜しみ隠さず披露していた。
ここにアルトがいたら目の色を変えて襲いかかっているに違いない。それ程、今のリンダは魅力的だった。
戦闘が急に終わり、目の前でイチャコラしたピンク色空間が展開され、戸惑う俺達。
そんな中、人目も気にせず魔族の男バイラルは、自分を取り囲む女性達を愛で続けるのだった。




