第222話 ファティリタス復興編 【第3クール】 結婚式
――魔城・控え室――
「リンダ様、お綺麗です!」
「ありがとう、セーラ」
魔城の控え室。そこに、ウェディングドレスを着て侍女達にお化粧をしてもらったリンダがいた。
まわりの侍女から感嘆がもれる。それ程リンダの花嫁衣装は素晴らしかった。
純白のドレスに飾られたリンダは、まるで絵画から出てきた貴婦人のよう。程よく肉付き、肌も瑞々しい。まだ幼さを残しつつも凛とした佇まいは、先に広がる明るい未来を思わせた。
この場にアルトがいたら、いてもたってもいられずに抱きついたに違いない。
――だが、それを許されるのはアルトではなかった。
◆
仲の良かった侍女は、正式にリンダの側仕えとなった。名をセーラと言う。召し使いというよりも友達に近い関係だが、リンダにとって今や大事な存在だ。色々な相談にも乗ってくれる。
「では参りましょうか」
「ええ」
リンダはセーラや侍女を従えて控え室を出る。目指すは式場だ。赤いカーペットの上を静かに歩いて行く。
通路の両脇には正装をした魔族の侍女や執事が並び、頭を下げ礼を取っていた。皆の表情は明るい。
やがてリンダは大扉の前に着く。両脇に控えた門番がゆっくりと扉を開いた。
そこには――
◆
豪勢に飾られた室内。広々とした空間に、長椅子がいくつも並べられている。椅子には、正装した魔族達がまばらに座っていた。
いや、魔族以外にも――
「――あ、来たよ!」
「な、中々やるじゃない」
「悔しいですが、よく似合っていますね……」
ミユ、レイラ、ヒルダ達もいた。三人とも、綺麗なドレスで着飾っている。
三人はリンダを見つけると、ワイワイとかしましい。だが、いずれも顔はにこやかで、この“結婚式”を祝福してくれているのはリンダにもわかった。
そして――
正面には、純白のタキシードに身を包んだ青年がいた。とてもよく似合っている。青年はリンダを見て驚いた表情を浮かべていたが、すぐに笑顔になった。
自然とリンダの口元も緩む。
近くの魔族に促されるまま、リンダはカーペットの上を進む。“夫のもとに新婦として”。あたたかい拍手に囲まれながら、夫――バイラルのもとにたどり着いた。
バイラルの差し出す手を取る。
そして、婚姻の儀はつつがなく執り行われ――
リンダは正式にバイラルの妻となった。




