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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第3クール】
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第221話 ファティリタス復興編 【第3クール】 呆然

――南西の集落外・東――



 リンダは魔族の幹部バイラルに連れられ、共に去っていった。どうやってか、周りの者も含め、姿がかききえた。転移の魔法だろうか。


 その様子を呆然と眺めている男が一人。アルトだった。いや、正確にはアルトだけでなく、少し離れたところに四人の男女がいた。



(どうするのよジョセフ!? めちゃくちゃ気まずいわよ!?)

(だよねぇ……)

(お、追いますか? 行き先は東の廃城でしょうし)

(でも、あんなにいい雰囲気だったら、邪魔ものは俺達だぞ!?)


 エマ、ジョセフ、アリア、ヘンリー。3校の生徒である。リンダが集落に帰ってきた時、リンダのご両親を探しに行き、急ぎ連れてきたが間に合わなかった。


 集落の東の入り口に着いた頃には、リンダは豆粒のように遠く小さくなっていた。そんな時、アルトに声をかけられたのだ。


「リ、リンダを追いたいんだ。付いてきてくれ!」

「――は?」


 ジョセフが素でそうこぼすのを、3校生徒は初めて見た。何ですぐに追いかけてないのかわからず、理解できないものを見る顔だ。


「モ、モンスターが出たら危ないじゃないか!?」

「そりゃそうだ」

「ヘンリー。ほっときましょう。――ジョセフ、“追うわよ”!」

「わかった。すぐに追いかけよう!」


 4人はすぐさまリンダを追った。そして、アルトは便乗して付いてきたのだった。


 そして――



 彼らはリンダとバイラルのやり取りを、遠くから終始眺めていた。


 リンダがモンスターに襲われかけたところを見て、「間に合わない!!」と肝を冷やしたが、突如現れた魔族がリンダを救った。そして、あの甘いやり取りである。


 アルトなどは、石像と化していた。いや、そう見える程、呆然とまばたき一つしていなかった。


 リンダと魔族が抱き合っている。そして、周りが騒がしくも祝福していた。で、皆で仲良く姿を消した。


 人間と魔族が仲睦まじいことすら信じられないのに、よりによって、自分の身近なリンダが! というところだろうか? アルトを見ていると、なんだか憐れみを感じてしまう。色んな意味で。


(帰ろうか……)

(そうね。ご両親にもお伝えしないと)


 ジョセフ達は静かにその場を後にした。エマが悩ましげに額を手で押さえている。他の皆も同感だった。



 荒野で一人、ポツンと取り残されたアルトがブツブツとこぼす。


「なんだって魔族となんか。俺よりもそいつがいいってのか? やっぱり“洗脳”されてるじゃないか。リンダを救えるのは俺だけだ。俺がなんとかしないと――」



 現実逃避気味に呪詛のごとくつぶやき終えると、よどんだ目で集落へと戻って行った。



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