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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
<ファティリタス復興>編 【第3クール】
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第203話 ファティリタス復興編 【第3クール】 バイラル

――魔城・謁見の間――



「はじめまして、お嬢さん。私はバイラル。この城の主だよ」

「は、はじめまして。リンダと言います」


 向こうから名乗られ、魔族から事前に何度も忠告されていたよう、粗相のない様にリンダも名乗り返した。そんなリンダの様子にバイラルが上機嫌にうなずいた。


「うん。誰か一人寄越すよう言ったけど、まさか君の様な素敵なお嬢さんが来てくれるとは思わなかったよ。――ああ、やっぱり気になる?」


 リンダの視線の後を追ってバイラルが自分の周囲を見渡す。そこには――



「バイラル様。この様な小娘のどこがよいのですか?」

「バイラル様。いつも、“君が一番だ”と言ってくれるではありませんか。それなのに――」

「この人、新しいお仲間!?」


 バイラルのそばには三人の女性がはべっていた。――それも人間の女性が。


 リンダが見たところ、女性は30代、20代、10代の女性が一人ずつ。バイラルは青白い顔をしているが、造形は人間のそれだ。本当に魔族なのだろうか?


「彼女らは私の“妻”だよ。意外だったかな? まぁ、そうだよねぇ」


 バイラルは頬をかく。とても人間臭い仕草だった。


 まさか、自分もこの輪に加えられるのか。――いや、さっきバイラルは「誰か一人寄越すよう言ったけど」と言っていた。なら、男が来る可能性もあったのではないだろうか。――まさか、両方いける口!?


 リンダは一人勝手な妄想で頭を混乱させていた。それを見ているバイラル以外の魔族や人間達から、しら~っとした視線を向けられていることにも気づかずに。


 バイラルはニコニコしながら、リンダに事情の説明を始めた。



「つまりだ。君には、他の人間達に私が無害だと触れ回ってもらいたいんだよ」

「はぁ。触れ回る、ですか?」

「そうだとも。私はもう、人間と争うつもりはないよ。魔王様が倒されてしまい、私一人でどうこうできるものでもないし。――それに、今はこうして人間の妻も(めと)っているしね。人間達を進んで滅ぼそうとは思わないさ」

「あら。わたくし達はかまいませんわよ? 別に他が滅んでも」

「レイラの言う通りです。バイラル様がいて下されば他の人間がどうなろうと構いません」

「ミユもミユも!!」


 リンダは困惑した。自分が無害だと思わせるために、今こうして人間の女達をはべらせているのだろうか。だとしたら、魔術で操っていたりはしないか? 予想だにしていなかった事態に色々と想像してしまう。


 バイラルはそんなリンダの心を見透かしてか、こう申し出た。


「なら、しばらくここに一緒に住んでもらおうかな。それで、納得して協力してくれると言うなら君を集落に返してあげよう」

「納得できないと言ったら?」

「失礼ですよ! バイラル様に対して!!」


 リンダが気丈にもバイラルに問い返すと、レイラと呼ばれていた女性から叱責がとんだ。思わず身体をビクッとさせてしまう。バイラルが間に入ってレイラをいさめた。


「まぁまぁ。怖がらせちゃ本末転倒だよ。無害さを知ってもらうんだからさ。――そうだなぁ。その時はその時になってから考えるよ。ただ、君に危害を加えるつもりは無いよ。ここでの記憶を消して返すくらいかな?」


 バイラルは少し考え込みながらそう答える。リンダとしては記憶をいじられるというのは怖いが、危害を加えるつもりはないというバイラルの言葉を信じるよりなかった。もともと自分は“人質”――されるがままの存在として連れてこられたのだから。


 その人質というのも、この感じだとどこまで本当かわからなかった。バイラルが言うには“協力者”だし。集落の人の曲解が伝わった結果なのかもしれないなとリンダはため息をついた。


「わかりました。しばらくお世話になります」

「そうか! なら早速、一緒に食事でもしよう!」



 バイラルがパンと手を叩くと、どこからか侍女が出て来て礼を取り出て行った。メイド服を着ている女性で、人間も魔族もいた。リンダは呆気に取られるのだった。



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