第201話 ファティリタス復興編 【第3クール】 廃城
――東の廃城――
東エリアにあるユウスケ達のいる集落のさらに東。ここには、過去に人間に攻め込まれボロボロにされた魔族の廃城があった。
リンダを両脇から支えて飛んできた魔族二人はそのまま廃城に降り立つと、リンダを連れて奥へと進む。リンダは廃城の薄気味悪さにビクビクしながらも、逆らわず従った。
どれくらい歩いただろうか。さほどの距離ではなかったはずだ。ただ、無言で歩く魔族の後を黙って付いていくのはストレスで、リンダからしたら長い時を過ごした様に感じる。
やがて魔族はとある魔法陣の前で足を止めた。
◆
その魔法陣は床に描かれており、一種の模様にも見えた。魔法は多少使えるが、リンダは特に魔術に精通している訳ではない。パッと見ただけでは、その魔法陣がどの様な魔術的作用を秘めているのかわからなかった。
だが、その答えがすぐに魔族から示された。
「これからバイラル様のもとに向かいます。くれぐれも粗相のないように」
二人の魔族は再びリンダを両脇から抱え、逃げられない様にしっかりとホールドする。もとよりリンダに抵抗の意思は無かったが、これから何が起こるかを想像すると不安が募る。
集落では「自分が人質になる」と申し出たものの、自分だって嫌だ。死にたくない。これ以上言い争う両親や集落の人々を見ていたくない、アルトのあんな荒んだところを見たくない。そんな現実逃避の気持ちもあわさり衝動的に申し出てしまったのは確かにある。
だけど――
これでよかったのだ。自分の犠牲で助かる人はいるのだから。――時が経てば、アルトもきっと前の明るくて優しいアルトに戻ってくれるだろう。
そんなことを考えると若干だが気持ちは軽くなる。少しだけ微笑むリンダを見て、二人の魔族が怪訝そうに眉をひそめた。
「では行くぞ」
リンダを連れた魔族は魔法陣の上に乗った。すると、魔法陣はたちまちに輝きを放ち、三人を飲み込んだ。
廃城の中、三人の姿がこつぜんと消え失せ、瓦礫と化した城材がわびしさを物語っていた。




