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異世界転生したくてもさせてもらえない件  作者: 転生希望のブラック会社員
ショートコメディ編
19/321

第19話 奴隷売買

「じゃあ、休憩もしたことだし、再開するわよ!」

 コスプレ女あらため、ユイが言う。


「次は?」

 優しい世界がいいな。


「今回は、異世界見学に行ってみようか」

 お、なにそれ楽しそう。


「他の転生者が何してるのかを端から覗いてくるだけだけどね。あまり干渉しちゃダメよ?」

 へぇ、面白そうだな。確かに、あんま他人の転生人生を直接見るなんて無いからな。


「じゃ、行ってらっしゃい」


 扉の向こうに背中を押された。

 ……あっ! 扱いがよくなってる!



 ここはファンタジーの世界だな。

 どこかの広場みたいだが……

 

 広場には、みすぼらしい衣服に身を包んだ母子がいる。

 杭に鎖で繋がれてるようだ。

 

「さあさあ、見てらっしゃい寄ってらっしゃい! 今日、売りに出す奴隷はご覧の通り、親子でございます。母も娘も色白で健康、まるで透き通る雪のよう! 容姿もよく、大変お買い得となっております」


 母子の近くにいる奴隷商らしき男が声を張り上げる。

 通行人も興味深そうに集まっていく。


 異世界恒例の奴隷売買だ。実際に見ると胸糞悪すぎて怒りがこみ上げてくるな。

 今回、俺は傍観者だから手出しできないし、当事者だったとしても、奴隷制度の廃止は非常に難しい問題なんだけど……


「その奴隷、買った!」

 人垣から、一人の男が前に出た。周りと装いが違う。あれが転生者かな?


「おお! これはこれは国王様。お気に召されましたか?」

 国王かよ、すげぇな。うらやましいぜ。


「いくらだ?」


「母子合わせて金貨6枚でございます」

 男は金貨を取り出し、奴隷商に手渡した。


「またどうぞご贔屓に!」

 奴隷の母子を連れる男を、奴隷商は笑顔で見送る。


 ……え? それだけ?


「ただの上客じゃねぇか……」


 国王だったら、奴隷制度の廃止とか、もっとやりようはあるんじゃないのか? こんなことを考えるのは、俺の経験が足りないからなんだろうか?


――視界が暗転する。



「……」

 俺は珍しく黙りこむ。どうすればよかったのかと。


「難しい問題よね。差別の撤廃と代わりになる労働力の確保。現実社会でだって、形は違えど、不遇な環境で働いてる人はいくらでもいるし」

 俺みたいなブラック会社員とかな。いや、俺のはただ、努力が足りなくてそこしか入れなかっただけとも言えるが。

 でもあの母子は努力がどうとかの次元でもなく、奴隷として、商品として扱われていた。あの母子に俺は何をしてあげられただろうか……


「あの転生者がただの上客だったとしても、少なくともあの母子は救われたかもしれない。だけどやっぱり俺は、制度自体の廃止に向けて何かできないかを考えていきたい」

 俺なんかが、何をどうすることもできないかもしれないけど……そう考えちゃいけないなんてこともないはずだ。


「今すぐに答えを出せなくても、そう考えて、少しでも改善に取り組むのが大事だと思うわ」

 そう俺に言うユイは、どことなく嬉しそうだった。

 

 ステータスカードに反応がある。

 優しさを1上げてくれていた。

 今回は考えさせられたな……


【現在のステータス】

 優しさ 7、勇気 7、面白さ or いいこと 4


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