第17話 流行りの過ぎたリズムネタ芸人
【現在のステータス】
優しさ5、勇気6、面白さ3
「それにしても、なかなか面白さが上がらないわね」
おやつのカステラを食べながらコスプレ女が言う。
俺にもくれよ。
「行った世界がボケばっかで、俺、ツッコんでばっかだからな。なかなかキツいわ」
「じゃあ、いいツッコミしたらポイントあげようか?」
「いや、ツッコミたくてツッコんでる訳じゃないからな」
あまりに世界がヒドくてツッコまざるを得ないんだよ。
「うーん、じゃあ、世の中のためになるようなことをしてもポイントが上がるようにしてあげるわ」
「いいのか? 助かるけど」
「もともと結構テキト……もとい、勢いで決めたステータスだし、かまわないわよ?」
おい、フォローできてるようでできてないぞ!
やっぱ適当だったのか!
「要らないなら前のままでもいいけど」
あかん、少し機嫌損ねそう。
「ごめんなさい。欲しいです」
ステータスカードが更新される。
『優しさ、勇気、面白さ or いいこと』
相変わらず雑いな。「or いいこと」って……
絶対血液型Oだろ。
「……次の世界はきつくしようかしら?」
ごめんなさい。なんでもないです。
「ところで、いいことの判断基準は?」
「私の独断にさせてもらうわ。あ、前みたいに魔王と結託とかはダメだからね?」
わかったよ。まだ根にもってるのかよ。
「……ほんとにきつくするわよ? じゃ、行ってらっしゃいな」
扉の向こうに投げこまれる。
◆
ん? なんだ、リアルか……
ここはどこだ?
どこかの会場みたいだ。
前のステージでは芸人らしきペアが漫才をしている。
ああ、お笑いのライブか!
俺のいる観客席からも、どっと笑いが起きている。
今の漫才が終了し、次の芸人が入ってくる。
最近めっきりテレビで見なくなった一発屋タイプだ。
特徴的な歌と体操で人気出てたんだよな。
まだ残ってたのか(失礼)。
体操が始まる。凄くリズミカルだ。
ららら○い♪みたいな。
リズムネタってやつだな。
体操の間に漫才を混ぜてくる。
……やべぇ、観客席がめちゃくちゃしらけてる。
さっきまでの笑いが嘘のようだ。
誰も笑ってねぇ……
これ、この芸人のトラウマになるぞ?
なんだよこれ! どうすりゃいいんだよ!
せめて俺だけでも応援するしか……
俺は――
「あ、あはははは!」
震える手で歌と体操のリズムに合わせ、拍手をした。
周りの観客がドン引きして俺から距離を取る。
なんだよ! ここお笑い会場だろ!?
俺は拍手をして笑い続けた。
目を開けるのが怖かったから閉じていた。
一秒でも早く芸が終わって欲しかった。
まぎれもなく、俺のトラウマになった。
――視界が暗転する。
◆
「ひっく……ぐすっ……」
俺は泣いていた。
「お、俺が……悪いわけじゃ……ないのに……ひっく」
「あ、ああ~、あるよね~……流行りの過ぎた一発屋芸人が、嘘のように笑ってもらえないこと……」
それでもステージに上がるメンタルがスゴいよな……
「今回は頑張ったわね! 特別に大ボーナスよ!!」
優しさが1、勇気が1、いいことが1上がった。
ありがとう……ありがとう……ひっく。
【現在のステータス】
優しさ 6、勇気 7、面白さ or いいこと 4




