第11話 異世界転生(お試し)
「やったぁ! ついに異世界転生だぁ!」
お試しだけどね。
「浮かれてるわね~、異世界だってつらいことはあるのよ?」
そうかもしれないけど、リアルよりはマシだろうから気にしない気にしない。
「じゃあちょっと見てくるといいわ」
扉の向こうに投げられる。
◆
「おお、勇者さまじゃ!」
「これで世界は救われる!」
どうやら俺は勇者みたいだ。悪くないね!
「勇者様、お願いがございます。
魔王を倒してきてください」
OK任せろ! 困ってる人は見過ごせないからな!
――勇者様! 村を襲うモンスターを退治してくだされ!
――おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。
――お疲れ。でもそいつ中ボスだから。ラスボスも頼むな?
……あれ? なんか思ってたのと違う。
グギャアァァァァッ!!(強そう)
え? あんなモンスター無理なんだけど?
「勇者様! 何をぼうっとしてるのです! 出番ですぞ!」
お前らも少しは働け!
ふぅ……なんとか倒せたわ。
――よし。ついに魔王のところまで来たぞ!
「今までつらかっただろ? ――わかってるから泣くな。世界の半分をやるから仲良くしないか?」
魔王からなぐさめられた。
嬉しくて不覚にも泣いてしまった。
『だから俺は、世界の半分をもらうことにした』
――視界が暗転する。
◆
あ、もうお試しは終わり?
「ちょっとちょっとちょっと!!」
ん?
「『ん?』じゃないわよ! 魔王側についちゃダメでしょ!」
「いや、別に異世界転生って正義じゃなくてもいいだろ」
「私は魔王を育ててきたつもりはないわよ!
異世界に迷惑はかけないこと! いい!?」
むぅ。別にいいじゃないか。
「じゃなきゃ、もう転生させてあげないからね!」
今はとりあえず従っておこう。




