第1話 異世界転生塾
『異世界転生』
ふとしたきっかけで他界し、ファンタジー溢れる世界に転生し好き放題する。チートスキルを得て常識外の力を手にいれたり、何故か美少女だらけでモテモテだったり……一種の理想郷とも言えるだろう。
そんな異世界転生を望む一人の男がいた。男はブラック企業に勤め常に疲弊しており、毎日のように異世界転生を望んでいた。
「でも死ぬの怖いしなぁ」
「死=異世界転生」と考えてしまってる時点で病んでいる。何故こうも短絡的なのか。男はどうにか転生しようと色々なラノベを読みまくる。
「刺されて死んだり、車に轢かれたり、ろくなのがねぇ……」
痛いのは嫌なのだ。怖いのも嫌なのだ。でも楽になりたい。でもいい案が思い付かず、いつものようにネットサーフィンをする。
「なんだこれ?」
怪しいサイトを見つける。
『異世界転生塾』生徒募集中!体験入学(無料)受付中。年齢不問。
……YouT○ber塾と同じにおいがする。はやりに乗っかった商売ってやだね。サイトを閉じようとするが……綺麗なお姉さん講師の写真に動きを止める。た、ただで体験入学できるみたいだしな!ちょっとやってみようかな……
体験入学の申し込みボタンをポチる。利用規約の文書が出てきた。無料ってとこだけ確認して「同意」をおす。
「お申し込みを受け付けました」
いつどこに行けばいいんだ?それすらも調べてないことに気付き探そうとするが、
――急に視界が暗転した。
◆
どこだここ?
暗い部屋だった。周りを見ても誰もいない。
カッ!
突然スポットライトがついて、コスプレ女を映し出す。
閻魔大王っぽいコスプレだった。って言ってもわからんよね。なんか偉そうでエッチだった。あ!サイトで見た綺麗なお姉さんじゃん!
すぐさま美人局を警戒する。怖いお兄さんはいなさそうだが……
「ようこそ、異世界転生塾へ!」
うん、知ってる。黙ってうなずく。
「あなたはどんな異世界転生がお望みかしら?」
そうだな……
「イケメンで金持ちで強くて、可愛い女の子達をたくさん嫁にしたい」
「ずいぶんストレートね……いいわ、そんなあなたの望みを叶えましょう!」
大きな扉が現れた。ゆっくり開くと、中から光がもれてきてまぶしい。
「さあ! この扉をくぐればあなたの新しい世界よ!」
男はウキウキで扉に飛び込んだ。
◆
暗い。どこだここ?
あ、なんかいい匂いがするな。匂いの元へ向かう。あ、光がまぶしいぜ!
「きゃぁぁ~っ!?」
女性の悲鳴だった。
「どうした!?」
男の声もする。
「ご、ごき、ゴキブリがぁ……!」
「任せろ!」
ちょ! やめ! ……プシューってまさか! ……あ、もう無理……
再び視界が暗転した。
◆
コスプレ女のいる暗い部屋再び。
「ゴキブリじゃねーか!!」
男は全力でツッコむ。
「異世界に転生したいんだよ! 何でゴキブリなんだよ!」
コスプレ女は「はぁ~っ……」と大きなため息をつく。
「異世界にだって選ぶ権利くらいあるわよ。あんたは異世界に行く資格は無いの」
はあ!? 塾名詐欺じゃねぇか!
「別に必ず行かせるなんて書いてないわよ。それに、異世界に行けるように教育する塾だし」
「帰るわ」
「あ、無理よ? 利用規約に同意したでしょ? もう向こうにあんたの身体無いから」
……体験入学じゃねぇの?
「ゴキブリの生を体験させてあげたじゃない、無料で」
ひでぇ。
「もう諦めなさいな。あんたはここで、異世界に行けるよう頑張るしかないのよ」
世の中は相変わらず無慈悲だった。




