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WISH and DREAM  作者: 樋夜 柊
チーム結成編
6/55

第四話 東洋少女とそのSC

俺はエマの能力について考えていた。

(まさか、彼女の能力は・・・・)

 と。ただそう仮説をたてる度に否定を繰り返す。そんなわけがない、と。

「ラット?」

 そんな時、エマが声をかけてきた。

「ん? あ、どうした?」

 そう返した俺にエマはきょとんとして、

「『どうした?』じゃないよ。話ちゃんと聞いてた?」

 その言葉でやっと我に返った俺は、皆で集まって飯を食いながら話し合っていたことを思い出す。しかし、さっきまで別の事を考えていた俺は話を当然聞いているはずがなく、

「いや、すまん。聞いてなかった」

 と謝った。すると、

「・・・まったく・・・」

 エマはため息をつき、

「この後行くクエストをどうするかって話だよ。ラットは何がいい?」

 そう言ってエマはカウンターの椅子に座りながら依頼の掲示板を指さした。

「俺か? そうだな・・・・」

 と俺が依頼の掲示板を見た時だった。

「・・・あれ? 自分ら、『WISH and DREAM』かいな?」

 と茶髪の少女に話しかけられた。俺は、

「ん、そうだが?」

 そう答えると、

「これは、これは。うち、アカネ・クロハっていうねん。突然で悪いんやけど、このチームに入れてくれへん?」

「・・・・」 

 俺はそう言う褐色肌でポニーテールの彼女を見た後、エマと顔を見合わせて驚いた。


「いいか、これはお前の実力をはかるためのテストだ。まぁ、負けたから、不合格ってわけじゃないから、気にするなよ」

「うん。わかった」

 俺らのチームに入りたいと言って現れた彼女に、まずお前の力量をはかると言って、ギルドの外に出て勝負をすることにした。審判はエマだ。

「それでは、ラットとアカネさんの勝負を開始するぞ。勝敗は僕が判断するけど、両者、それでいいかい?」

「無論」

「いいよ」

「それじゃ、始め!」

 俺は先手必勝と、彼女を睨みつけた。

 勿論、凍る・・・・はずだった。

 凍っていなかったのだ。そして、彼女は俺の所まで、駆け寄ってきて、帯刀していた太刀で居合切り。

 俺は後ろに下がり回避し、再び睨む。今度は確かに凍り付いていた。頭から、見る見るうちに・・・

「・・・・どこみとん? うちこっちやで?」

「なっ‼」

 と俺は振り向いたが、その頃にはもう剣の刃先が俺の首筋あたりで止められていた。

「降参かい?」

 そう言って満足げに笑う彼女に俺は、参った、参ったと両手を上げて、降参した。

 すると、審判のエマがダッシュで駆け寄って来て、

「ねぇ、どういうこと? なんで凍ってないんだ?」

 と彼女に聞いた。すると、彼女は頬を掻きながら。

「うちのSC(スキルチャージ)は相手に自分の幻覚を見せることができるんよ」

「え? んじゃ、身体強化系SCなのか?」

「いや、違うよ。まぁ、なんか足の速さで自分の残像を作り出すとかいうSCは聞いたことあるけど、うちのは残像じゃなく、幻なんだよ」

「えっと・・・・どういうこと?」

 エマは首を傾げた。クロバはそれに苦笑して、

「最初にうちがいた所見てみ」

 と最初にいた場所を指した。すると、そこには凍った石ころが一個落ちていた。

「あれが、最初うちだってみんな勘違いしたんよ。まぁ、騙されたって言った方が早いか」

「・・・なるほど」

 つまり、俺が睨んだのは、石ころってことか。

「つまり、お前は『嘘つき』ってことか?」

「いやいや、あんさん。そこは『道化師』って言ってくださいな」

 と彼女は笑って俺を見たのだった。


                    ◆

                  

「えっと、ということで、自己紹介いいか?」

「あぁ、うん。そうやな。えっと、うちの名前はアカネ・クロハや、よろしゅう。SCは『見せかけ(フェイク)』いう名前の感情系SCで、相手を騙そうとする感情から成立するSCや。対象の物をうちに変えて、相手に勘違いさせることができる。例えばさっき見せた通り、単なる石ころをうちだと思わせるみたいな感じや」

「お前以外の幻を作る事はできないのか?」

「今のところは出来へんな。もっと実力磨けばできかもしれへんけど」

 と笑ってそう言った。そして、立ち上がって、

「という事で、これからよろしゅうな。気軽にアカネって呼んでくれてかまへん」

 僕は彼女の自己紹介を聞いて思った。

「独特な話し方だな」

 僕がそう言うと、あぁ、とこっちを見て、

「そうやね。この話し方は、うちんとこでは日常的に使われてたんやけど、ここでは標準語みたいやな」

 僕は昔読んだ本でアカネさんの使う言葉を見かけたことがあるが、思い出せなかったため、

「出身はどこ?」

 と聞いた。すると、アカネさんはこっちを向いて、 

「うちか? ここよりずっと向こうにある東洋の国や」

「へぇー‼ すごいね‼」 

 僕は興味をもったが、ラットがそんな僕に、

「・・・・あまり、彼女を信じるな」

 とコソリと耳打ちをした。僕はなんで、と小さな声で聞き返したが、ラットは答えることはなかった。


「ちょっと、ラット。どういうことだよ‼ あまり、話を信じるなって‼」

「ラット、それはひどいと思うよ。僕も」

 一通り、皆で自己紹介をした後、とりあえず今日は解散と言って、みんなと別れた後、僕と肩に乗っていたため耳打ちした声が聞えたグミはラットに聞いた。すると、ラットは持ち前の冷たい目を向けて言った。

「お前らは人を信じすぎなんだ。ましてや、今回のSCは危ないだろ。人を騙すSCだぞ。俺は信じられんな」

「ラット、それ君が言うの?」

「どういうことだ?」

「君もそのSCで嫌な思いしたんじゃないの?」

「・・・・まぁな」

 僕はため息をつき、

「僕はそんなSCで判断するような真似はしたくないね」

「そうか、それならそれでいい。俺は警戒しとく」

 そう言って、僕はラットとは反対方向に歩いて行った。


「あ、エマ‼」

「ん? あ、アカネさん」

「『さん』はいらんよ。アカネで結構」

「そうか、わかった」

 僕はそう言って、頷いた。

 アカネは、動きやすそうな服装で赤のジャージと青の膝くらいまで丈のある短パンをはいていた。髪は茶髪のポニーテールで、目は細目だった。そして、程よく痩せていて、ウエストが引き締まり、肌は健康的に焼けた褐色肌だった。

(胸は・・・・同じくらいかな・・・)

 と僕は自分の胸を見て、再度アカネの胸を見た。そして、安堵(あんど)の息を漏らすと、

「なんか、失礼なこと考えてへん?」

 そう言って、じっと見られたが、いや別に、と笑って首を横に振った。

「それより、何してるの? こんな所で」

「ん? うちか? 気晴らしに散歩しとったんよ」

「へぇ、そうなんだ」

 と僕は頷いて、そういえばと手を叩き、

「アカネはここより東の国から来たんだよね?」

「そうやけど?」

 と首を傾けて言う彼女に、

「んじゃ、あっちの国での事について教えてよ」

 と提案した。すると、

「えっと・・・・」

 と頬を掻き、手を合わせて、

「すまん、かんにんしてな。うち、少ししかおらへんかったのや。母国には。ちょっとした事情で物心ついてからはすぐにこっちに来たんよ」

「事情?」

「それはちょっと家庭の複雑な事情ってやつやから教えられへんのやけど・・・」

「・・・あ、ごめん。そういうこと・・・」

 僕は察して、(うつむ)いた。

「ほんと、ごめんな。かんにんしてくれ」

「あぁ、いいよ。仕方ないよ。こっちこそ、ごめんね。嫌な事思い出したかな?」

「いやいや、別にたいしたことあらへん。自分、本当に優男(・・)やな」

「え?」

「ん? せやから、『優男』って・・・」

「僕は女だ」

「・・・・」

 アカネは口をポカーンと開けて、

「何その面白い冗談‼ 今年最高の笑いだ‼」 

 と手を叩いて笑っていたため、僕は微笑んで、

「冗談じゃないよ」

 と言った。すると、またポカーンと口を開けて、二人に少しの沈黙が訪れた。


「まさかエマは女の子だったんか。たしかに名前から考えればそうやな」

 と近くの喫茶店『もこもこカップ』で、アカネが腹を抱えて笑いながらそう言った。

「なんだよ、そんなに笑う事か?」

「いや、なんやろ。このチーム、初めて見た時、女の子が一人だったから、かわいそうやおもて、チームにはいろうって思たんよ。でも、それ聞いて少し安心したわ」

「そうだったんだ」

 とアカネは紅茶を一口飲み、

「いや、しかし、どう見ても男にしか見えへんな、お前はん」

「よく言われるよ。というか、初見で女の子でしょって言ったのは今のところ一人もいないし」

 事実、あのカレンでさえ、僕の名前を聞く前は男だと思っていたらしい。

「だって、髪とか、服装とか、口調も男のそれやしな」

「それは、この子にもよく言われるよ」

 そう言って、肩にいるグミを見せる。グミは彼女を見て、

「どうも」

 と挨拶する。すると、またポカーンと口を開け、

「リスがしゃべっとる」

 と驚いていた。だから、僕は、

「あぁ、そうだよ。グミのSC能力さ。『好奇心強化』。なんか人間の言語に好奇心を抱いて学んで覚えたんだって。それでSCの分析も知っていれば推測できるんだ」

「え、すごいやん。てか、好奇心で声を出せるようになるんか? リスって声帯そんな発達しとったっけ?」

「まぁ、確かにここのリスは『リス語』って言って独自に話すことはできるんだけど、人間の言葉を話せるのは僕くらいだよ。だから、僕もなんで話せるようになったのかはわからないんだよね。これは推測だけど、もしかしたら、身体強化系のSCがなんらかの奇跡で付与して、声帯強化されたのか、もしくは『好奇心強化』によって、声が出せるようになったって可能性もある。まぁ、飽くまで推測だけどね」

「・・・よく話すな、このリス」

「うん、グミは一度話すと止まらなくなるんだ。だから、滅多に話すことはないんだよね」

「そうなんや」

 そう言ってアカネは苦笑した。

「そういえば、チームの人のこと、まだよく知らへんから、どんな人達なのか知りたいんやけど、教えてくれへん。特徴とか、性格とかさ」

「あぁ、そうだね。まぁ、僕から聞くより、本人たちから聞いた方がいいと思うんだけど」

「いや、ええよ。エマ目線から見たみんなで。なんかうち、あまり信用されてへんみたいやし」

「あぁ、ごめんな。ちょっとSCがSCだからって、みんな警戒してて」

「その割に、エマとグミは普通だね」

「うん。だって、疑ったところで別に意味無いし。何より僕は人を疑うのはあまり好かなくて」

 と頬を掻いて言った。すると、アカネは頬杖をつき、

「やっぱり優しいんやな、エマは」

 と言って、ニヤリと笑った。僕は首に手を振れ、

「えっと、そうそう、チームのメンバーの紹介だったな」

 僕はそう言って、みんなの紹介を始めた。


「まぁ、こんな感じかな。最後に僕。エマ・ドリームだ。本を読むのも、書くのも好きだよ。まぁ、無能力者なんだけど・・・」

「・・・・え?」

 アカネは首を傾げた。

「えっと、僕、目立った特徴がないせいか、SCがないんだよね」

「・・・・へぇ、それは珍しい話やな」

 と頬杖をつき、僕を見た。

「まぁ、いずれわかるやろ、きっと」

「そうだな。そうだといいんだけどな」

 そう言ってホットレモンティーを飲んだ。時間が経ち、少し冷めていたためか、口の中に(かす)かな甘さが広がった。


 僕たちは、喫茶店を出て、再び街を散歩した。街は夕方で、うす暗くなっていた。

「今日はこの辺で解散かな」

「せやな。まぁ、なんや。明日から、よろしゅう頼むで」

「こちらこそ」

 そう言って、僕とアカネは握手をした。


                    ◇


「なぁ、マスター。SCの能力の三つの系統を全て所持しているって奴がいると思うか?」

「・・・・というと、身体強化系、感情系、知識系の三つを所持ってことか?」

「あぁ、そうだ」

 エマとわかれた後、ギルドのバーへ行った俺は、偶然席に座っていたマスターの隣に座って、そんな質問をした。

 すると、マスターは葉巻を口に加えて、火をつけた。そして、

「まぁ、可能ではあるじゃろうな。というか、現段階で身体強化系、もしくは感情系SC所持者の中で、いろいろな知識を身に付け、すごい努力をして、知識系SCを所持した者はいるんだ。三つ所持している者はいても不思議ではない」

「そうか」

「・・・・じゃが・・・・」

 葉巻を口から離して、息を吐くと、

「不可能じゃろうな、それは」

「なんで?」

 そう聞いた俺にマスターは二本の指を俺の目の前に出した。

「理由は二つ。一つは、基本SC能力は一人一つなんじゃよ。人には数多の性格、特徴がある。SCっていうのは、その中で一番飛び抜けたもののみ強化される。すごく足が速い奴や、お前さんの様に目つきの悪い奴、絶対音感持ってるやつとかは、間違いなく身体強化系じゃし、他の者よりもすごく強い感情を抱く者は感情系じゃし、知識が誰よりも多い場合は知識系にそれぞれ強化される。もし仮に、その他の系統を付ける場合はそれ相応の努力が必要だ。それも半端な努力じゃなく、死ぬくらいのな。しかも、それによって、別のSCが優先されて、元々持っていたSCが消える場合もある。だから、それなりのバランスも才能もなくてはならないのじゃよ」

「・・・・もう一つはなんだ?」

「もう一つは、単純に身が持たん。一度にそんなにSCを使用するってことは、それなり代償が身体を襲う。なんらかの影響が身体の中で起きる。まぁ、感覚とか、意識とか、そういうのが麻痺でもしてたら話は別かもしれんがな」

 たしかにそうだ。SCっていうのは必ず代償がある。俺は対象を凍らせれば凍らせるほど、周囲の体感温度下がり、俺さえ耐えられないくらいの寒さになることもある。タクトは叫べなくなれば使えない。カレンは体力をたくさん使うし、グミは好奇心の強化で軍隊の陣形、攻め方とかの知識はあっても、実際の戦闘はできない。

 SCっていうのはそんな感じで代償を伴う。だけど、エマのSCはそんなものが見当たらない。

(いったい、何のSCなんだ?)

 そう俺は考えていると、

「それで、その質問の意図はなんだ?」

 とマスターは聞いてきた。俺は、

「聞かんでも、あんたはわかるんだろ?」

 というと、頭をわしゃわしゃと撫でられ、笑いながら、

「まぁ、大方はわしの能力で理解できてるぞ。まぁ、大いに悩むがいいじゃないか」

 と言って、バーを出て行った。

 ちなみにマスターの能力は『読心』で、相手の考えていることがわかる。ギルドでは少ない感情系のSC所持者だ。他人の事を理解したいという強い感情が強化された能力らしい。


                    ◆


「・・・おはよう、エマ」

「おう、おはよう」

 翌朝、僕は家を出て、ギルドに向かっている途中、いつもの場所でグミに会い、グミがいつも通り肩に乗って、一緒にギルドに向かった。本当にいつもの日常、と思っていたら、

「おや、エマちんやなやいか。おはよっ」

「ん? あ、アカネか。てか、『ちん』って?」

 肩をポンッと叩いてそう挨拶してきたアカネの呼び方に、僕は首を傾げると、

「あぁ、単なる愛称やから、気にせんといて。その方が可愛いやろ?」

「可愛いって・・・」

 僕は頬を掻いた。

「ギルドに向かってるんかい?」

「うん。そういえば、今日がチームとやる初依頼だな」

「おんおん、そうなんやよ。楽しみと緊張する気持ちが混ざって吐きそうや」

 たははと笑いながらアカネはそう言った。

 そんないつもと違う人と会話し、今日は何か変わったことが起こりそうだなって僕がそう思った時だった。


ブオーン‼ ブオーン‼

 

 とそんな警報が鳴ったのは・・・


                    ◇

 

(おいおい、またかよ)

 俺は警報を聞いて舌うちをしつつそう思った。

 あの神聖剣野郎がこの島に襲撃したのはつい最近だ。しばらく王国が手を出してくることはないと予想していたが、

(まぁ、王国が攻めてきたと決まったわけじゃないがな・・・)

 それでも警報が鳴るほどなのだから、それと同等か、それ以上の危ない状況なのは変わりないのだがな。


「王国軍が攻めてきました」

(うん、やっぱりか・・・)

 俺はそう思い、頷いた。

「島の軍は対策をたてなかったのかよ」

そうギルドの誰かが聞くと、

「たてている途中で来ました。まさかこんなにも早く準備を整えて攻めて来るとは誰も予想していなかったので。もちろん、島の迎撃隊も出撃しましたが、結果は惨敗でした」

とサキさんは首を横に振って答えた。

「・・・敵の兵の戦力は?」

 マスターがサキさんにそう聞くと、複雑な顔をして、

「前回の襲撃よりも高い戦力です」

「どういう事っすか?」

 とギルドの誰かが聞くと、

「前回、近くの街を襲撃した敵、神聖剣を持った男の時、脅威はその男だけだったかもしれません。しかし、今回はそうじゃないってことです。なぜなら今回の約四万人の兵を相手にしなければなりません」

「・・・・四万だと」

 ギルド内の空気が一気に凍り付いた。なぜなら、神聖剣の男が攻めてきた時、兵数は千人くらいだった。だが、今回の兵数は倍以上。みんな頭が真っ白になっているのだろう。

「そして、その中で神聖剣を持ったあの男と同じ戦力だと思われるのは十人だと、ギルド総本部から報告されました」

「マジかよ」

 サキさんは頷き、

「対して、こちらの兵力はわずか約五千人です」

「そんな、馬鹿な・・・・」

 そう誰かが言った通り、そんな馬鹿な話があるはずがない。数多あるギルドの戦力。四万はいなくとも、その半分くらいは、と俺はそう思ったが、

「・・・・依頼ですよ」

 とサキさんがそう答え、みんなは納得した。

 最近、依頼が集中していたのだ。

 というのも、作物の収穫時期が迫ってきたため、『洞窟からモンスター達が村や街に食べ物を求めて出てきて、暴れまわっているからどうにかしてくれ』という依頼や、『店の商品を食い荒らされて困っています。どうにかしてください』という酒場のオーナーから依頼等、そんな依頼が多発しているのだった。

 そして、そのモンスターは俺達がこの前戦ったリーザのような下級クラスの者でも倒せるものもいれば、ドラゴンといった伝説級の奴もいる。

 だから、その地域の依頼を各ギルドの人達が受注し、手の空いている島のギルド人達はサキさんが言った人数しかいないのだった。

(・・・・タイミングが悪いな・・・)

 俺は唇を噛み、拳を思いっきり握ると、

「私達が近くのギルドと共闘して倒すよう指令された者は五人。一人は物体や物質を操る力を持つ操縦兵のリーダー、カダンという男です。水を自由に操ることができます」

「なんだ、水だけか。大した事・・・」

「それはつまり、水が含まれているなら何でも操れるということです。たとえ混合物でも・・・・」

 そうサキさんが言った途端、みんな静まり返った。

「・・そして、二人目が目でも追えないスピードで人を惨殺していく。疾風の殺人鬼、ジン。三人目が先頭で魔剣の大剣を振り回し、自身の攻撃力を強化する魔法を持つ、戦闘狂魔導傭兵(ようへい)ザクロ。四人目が後衛の兵の隊長であり、狙った獲物は外さない。拡散型魔弾ミサイルの使い手である、ミサイルハンターラキ」

「なんだよ、そいつら・・・・どう相手しろと・・・・」

「そして、もう一人・・・」

「まだいるのかよ・・・」

 ギルドの奴らは耳を抑えたり、膝をつき倒れたり、絶望のあまり気絶している奴さえもいた。

 しかし、サキさんはそんな皆を見ても言うのをやめることはなかった。なぜなら、さっきまで言った四人よりも重要な相手だったからである。それは、

「五人目は、司令官のミキ。彼の力は警戒心強化の戦力検査をすることができるSCでさえわからない。とてつもない戦力です」

 戦力検査を使える奴でも相手の力がわからない。そんなこと未だかつてなかった。

(・・・これが王国の力)

 俺は正直、勝利への可能性が見えなかった。すると、サキさんはこの島の地図を机の上にのせて作戦を立て始めた。

「まず、討つべき相手は疾風と司令官、あと、ミサイルハンターです。疾風は情報では一秒に一人殺すことができるらしいです。なので、足の早い者が早急に始末しないと私達は殺される一方でしょう。ただ、倒すことが出来れば、かなり優位に立つ。そして、司令官のミキ。彼を倒せば、早期解決できる。情報では敵のリーダー格だろうと推測されていますから。そして、ミサイルハンターは単純に後衛として厄介なので早く倒しもらいたいのです」

「けどよ、サキさん。討つって言ってもどう討つ? 数で押せば勝てるような相手なのか?」

 俺は壁に寄りかかり、サキさんにそう聞く。すると、

「いいえ、正面から真っ向勝負したところで勝てるような、そんな簡単な相手じゃありません」

 そう言って、一度大きく息を吐いて、

「まず、後衛陣はラット。君に任せていいかな?」

「サキさん、俺にはチームが・・・・」

 と言いかけ、俺はエマを見る。エマは、頷いて行ってきなと呟く。だから、ため息をつき、

「・・・・わかりました。引き受けます」

「『WISH and DREAM』の皆さんは大丈夫?」

「まぁ、ラットが必要なら仕方ないからな」

 とエマは返した。サキさんは、

「わかりました。でもエマさん達は・・・」

「わかってる。前線に出りゃいいんだろ? いいよ」

 と頷いた。するとサキさんは、

「お願いします。私達も全力でサポートさせていただきます」

 と言って、お辞儀した。そして、

「皆さん。この戦いは港が近い私達の街が戦場となるでしょう。このピンチを、そして、この町の人達のためにも、どうかご協力お願いします‼」

 そう言って頭を下げた。

 その瞬間、今まで静まりかえっていたギルド内の士気が一気に上がり、

「やってやるか‼」

「王国の奴らに目にもの見せてやろうぜ‼」

 さすが、サキさん。ギルドでたくさんの信頼を得ているだけはあった。

 しかし、この時はまだ、今後訪れる絶望に俺らは全く気付いていなかった。


                    ◆


「大丈夫かいな? エマ」

「ん? 何が?」

 王国と戦うための準備を行っていると、アカネがそう聞いてきた。

「いや、ラットのことや。あいつ意外と強いんやろ? うち、なんか勝ったけど・・・・」

「いやいや、『意外と』じゃないよ。このチームの中では一番強いよ。アカネに負けたのはアカネの能力の方が一枚上手だっただけだよ」

「そこまで言うんやったら・・・」

「でもさ、アカネ。僕らは、一緒のチームである前に、一緒のギルドなんだよ。だから、どちらを優先すべきかって考えたら・・・・やっぱり、ギルドでしょ」

 そう言って頬を掻くと、アカネはため息をつき、

「まぁエマちんが、それでええなら、ええんやけど」

 と苦笑した。


「・・・・何これ・・・」

 ギルドは山の上の方にあるため、ギルドから出ると近くの街の景色を見ることができるのだが、その街は約四万と聞いていたが、絶対それ以上はいるだろう王国兵たちに攻撃され、建物が壊され、まるで無法地帯のような光景と化していた。近くの港ではその王国兵が船を止め、島にどんどん侵入してきていた。

 幸い、島で警報がなったのはこれで二度目だったため、住民は神聖剣の男が攻めてきた時のように見物する人はいなかった。

「・・・・行こ、エマ」

 カレンが僕の肩に手を置き、後ろから声をかけてきた。振り向くと、そこにはカレンとアカネが僕を見つめていた。僕は頷いて、

「行こう。あの兵を倒そう」

 と拳を前に出した。それにみんな拳を合わせ、その上にグミが乗った。

「がんばろ」

「うん」

「まぁ、なんとかなるやろ」

 そう言って、僕らは拳をぶつけて、微笑み合った。


 みんなはあらゆるSCを使って、奮闘していた。

 跳躍力強化のSCの奴は高く跳び、銃を相手の兵士たちに向かって撃ったり、腕力を強化した奴は、敵を投げ飛ばしたり、大剣を振り回したり等、各々が所有するSCを有効活用して、戦っていた。

 一方、僕らの活躍はというと、カレンは銃の弾をナイフで弾きながら敵を斬り、アカネはアカネで、ラットを倒したあのSCで敵を欺き、自分の武器で敵を斬っていった。そんな二人がものすごい速さで前に進んでいくのに対して、僕は自分の身を守りながら、敵を倒し、進んでいくのがやっとだったため二人との距離が徐々に離れていった。

 ただ、敵の兵士の一人一人はあまり強くはなかった。

(・・・・よし、これならいけるかも)

 そんな希望を持った瞬間だった。

「・・・・がっ!」

「・・・・あぐっ」

「・・・っ⁉」

 とどんどん仲間が倒れていった。

(・・・・一体何が起きているんだ?)

 僕は目の前ですごいスピードで倒れていく皆に動揺して、身動きがとれなくなった。

 そして、


 キィィィン‼


 目の前でそんな鋭い刃物同士がぶつかる音が響いた。

「・・・ほぉ、俺の風を止めるか・・・」

「私の友達に何をしようとしたのかな?」

 そう言って、両手にナイフを持ったカレンが、すこしボロボロの白い鉢巻(はちま)きを巻いて、鋭い刃のついた、クローと呼ばれるグローブを両手に履いた男と向き合っていた。

「お前は俺のスピードを超えられるのか?」

「よくわかんないけど、私の仲間に手を出すなら、容赦はしない」

 そう言って、僕を見て、

「エマ。先に進んで。ここは私がなんとかするから」

 と言った。その目は真剣だった。僕は頷いて、

「わかった。きっと、そいつ敵の幹部だから気を付けて」

 と返した。すると、前を向いて、

「大丈夫。任せて」

「信じてる」

 そう言って、僕は先に進んだ。


                    ◇


「・・・劣勢って程、劣勢ではないようだな」

「油断大敵だろ」

 後衛の陣を任された俺は無法地帯と化した街を見て、腕を組むマスターにそう言った。

「敵の幹部はまだ力を出してないんだ。劣勢じゃないのは当たり前だ」

「うむ。まぁ、そうじゃが・・・・なんとかなるかもしれんな・・・」

「甘いな・・・・奴らがそんなんで・・・」


 ボン‼ ドン‼ ボガーン‼


 大きな爆発音が街から聞こえた。

「・・・・」

「・・・・」

 俺とマスターは二人してただ茫然とそれを見ていた。

 ミサイルが必ず人に当たっていたのだ。しかも、逃げても追跡して当たっていた。

「おいおい、まさか・・・」

「はい、あれがミサイルハンターの異名を持つラキの力でしょうね」

 サキさんがそう言ってギルドから出てきた。そして、

「では、後衛の皆さん、お願いします」

 と指示。するとみんな、

「おう‼」

と返事をして、各持ち場へと移動した。

「ラット。君はラキのいる位置を推測して、倒しに行ってください」

「あぁ、そのために俺を残したんだろ?」

 俺は睨んだものを凍らせることができる。それは人だろうが、敵兵の武器だろうが、凍らせることができる。無論、代償は気温が二度くらい下がることだが、ミサイルの機能さえ停止させればいいだけなので、凍らせて解除しての繰り返しでも問題は無い。

「ラキの位置はだいたい見当はついている」

「本当ですか?」

「あぁ、たぶん向かいの山のどこかだろう」

「なぜそう思うのですか? 確かあそこにもギルドがあったはずでは・・・」

「もう討伐されたんだろうな。その証拠にこの戦場に奴らの姿が見えない」

 島ギルド『エルフの森』。それは俺らのギルド『山吹ミノタウロス』の向かいの山にあるギルドであった。

 この山に劣らず街がよく見え、狙撃するのにうってつけだろう。そのためにギルドを一つ潰すくらい容易に奴らはやってのけるだろう。

「それに俺らのギルドが襲撃されなかったのが何よりもの証拠だな」

 俺たちのギルドがある山と『エルフの森』のある山の間には今回の戦場である街があり、その近くに港がある。

 後衛を置くなら山の上のような高い所に置くだろうし、そう考えると二つの山のどちらかという事になる。そして、俺らのギルドが攻め込まれていないということはおそらく向かいの山にいるのだと俺は予想した。

 俺はそれを簡単にサキさんに伝えると、

「・・・・そうですね。そう考えるしかないでしょう」

「決まりだな」

「えぇ、ではよろしくお願いします」

「あぁ、行ってくる」

 そう言って、タクトに視線を送るとそれに反応してタクトも頷き、

「よし、行こう」

 と二人で向かいの山に向かおうとした時、

「ラット、そう言えばあの少女は誰だ?」

 そう言ってマスターが指さした人に俺は驚いた。


                 ◆


「エマちん、大丈夫かい?」

「あぁ、なんとかね」

 敵兵が落ち着いてきたためか、僕より先を走るアカネが心配して駆け寄って来た。

「べつ、うちに合わせんでも自分のペースでええんやで」

「いや、大丈夫。結局、目的地は同じだろうから」

 別に僕達だけが目指しているわけではない。各ギルド全員がこの戦いを終わらせるために向かっている場所は共通で敵の陣地。そして、狙っているのはそこにいると推測されている司令官ミキである。

「そやけど、無理してうちにあわせても疲れるだけやし」

「いや・・・・どんなスピードで向かっても向かってる場所は、同じだし、それなら・・・早く着いた方がいいしな」

「いや、そんな過呼吸気味に言われても説得力がないよ」

 アカネがそう言ってため息をついた。

「なんで、そんなに頑張るの?」

「リーダーだからさ」

 僕は息を整えながらそう言った。

「僕、無能力者だからさ。他の人より弱いのは当たり前なんだよ。でもそれを理由にみんなの足手まといになるのだけは嫌だ」

「そんな・・・足手まといになんて・・・」

「それに、ラットと約束したんだ、誓ったんだ」

 僕は大きく息をはいて言った。

「僕は僕や他の人達の夢を形にするために、願いを叶えるために命を懸けるって・・・」

 そう言って、僕はアカネの肩に手を置いた。

「だから、チームリーダーとしてメンバーであるカレンやアカネに負けていられないのさ」

 そう言って前に進もうとすると、

「その意気込み、素晴らしいです。称賛します」

 そう言って拍手した男が建物の裏から現れた。

「誰や、あんた?」

「ん? 我? 我の名はミキ。ミキ・アドバント」

「・・・⁉」

 まさかの全員が倒そうとしていた敵が現れるとは思わなかった。

「司令官様がここで何してるのかな?」

「司令官? 我はそんな大層な役割じゃないがそうだね。まぁでも、作戦立てたりしてるのは我だし、間違ってはないか・・・」

 そんなことを言ってる合間にアカネが太刀の柄を掴んで、居合切りをする。しかし、

「危ないな、君」

「・・・がっ⁉」

 そう言って、アカネが腹を殴られた。

「大丈夫⁉ アカネ‼」

「・・・アカネ?」

 ミキがアカネの名前に反応する。

「お前? 東洋で追放された、アカネ・クロハか?」

「・・・・⁉」

 アカネがその言葉に一瞬びくりと反応する。僕はきっと人違いだと思って、

「・・・誰だよ、それ。何適当なこと言ってんだよ⁉」

 しかし、ミキは鼻で笑って、

「いや、間違ってないな。その褐色の肌といい、その細い目といい、当てはまる箇所が多いからな」

「そんなの偶然だろ、でしょ、アカネ⁉」

「・・・」

 僕はそう言うが、アカネは目を逸らし否定しなかった。

「・・・アカネ?」

「無駄だ。そいつは答えんよ。だろ? 東洋の元スパイ、アカネ・クロハ?」

「お前、少し黙れよ」

「怖い少年だな」

「僕は女だ‼」

 そう言って蹴り飛ばす。しかし、

「・・・甘い」

 と足を掴まれ、投げ飛ばされる。

「・・・・くっ‼」

 地面に激突した。頭を打たないように受け身はとったが、少し足を痛める。

「お前は一体何なんだ‼」

「ガブリエルの知らせ。神聖剣は知っているだろ? それが神の力なら、これは天使の力。天使ミカエルが神の言葉で教えてくれるのさ」

「神とか、天使とか、僕は信じない‼」

 僕はナイフを抜く。

「そんなものいないほうがいいんだ。世の中を平和にできないのなら、神も仏も天使もいたって意味がないからな」

「・・・・罰当たりな奴だ」

 僕はその言葉を無視して、ミキに向かって行った。


                    ◇


「あの少女は誰だ?」

 ミサイルハンターの推測地に移動しようとしていた俺にマスターはそう聞いてきた。

「誰って、マスター。あんたが知らないのか?」

「知らんな。というか、あやつ東洋人じゃな? そんな印象の濃い奴と話したなら忘れるわけがなかろう」

 なぜ東洋人とわかったのかは聞かなくてもわかった。きっと読心で心の中を見たのだろう。

「いや、でも・・・・んじゃ、なんで今まで気づかなかったんだ?」

「いや、わしも忘れているだけなのかと最初は思ったが、ギルドのメンバー表を見てもいないんじゃよ。おかしいなと思って、明日声をかけようと思ったら、警報が鳴るし・・・」

 俺はアカネを見る。

「んじゃ、彼女は何者なんだ?」

「さぁな。だが少なからず、このギルドとは無関係の奴だ」

「・・・・だが」

「理屈並べてもわからんものはわからんよ。本人に聞いてみないとな」

「・・・・」

 マスターは振り返って、ギルドに向かって歩いて行った。

「まぁ、この戦争が終わったら、聞いてみるんじゃな。無事に終わればじゃが・・・」

 そう言い残して、ギルドの中に入っていった。


                   △


 私のナイフと男のクローが音を響かせながらぶつかり合っていた。

「まさか、ここまで対等に戦えるとはな・・・」

「・・・くっ」

 正直、対等ではなかった。私の体力の限界が近いからだ。速すぎるのだった。防戦一方だ。

「・・・・これは・・・少し本気を出そう・・・」

 そう言って、男が三歩くらい後ろにさがる。そして、

「・・・・・‼」

 見えない。さっきまでの速さは嘘のようだった。

「・・・これが疾風。ハヤブサの(かぎ)(づめ)

 時間差で、横腹が切られていた事に気付く。血を吐く。私は膝をつき、その場に倒れた。


(・・・・ここ・・・は・・・?)

 目を覚ますが、周囲は目を瞑っている時と全く変動無く、暗かった。

「私、死んだのかな?」

「いや? 生きてるよ」

「・・・・・‼」

 突然の声に驚き、振り向くとそこにはもう一人の私がいた。それを見て私はすぐ理解し、

「あぁ、裏の私か」

 と言った。たまに私が寝ていると夢に現れ話す。だから、すぐ理解できた。

「どうやら、君がピンチのようだから、そろそろ俺の出番だと思ってね。意識をこっちに移動させたのさ」

「・・・・」

 たしかに、あの疾風と私の裏は相性がいい。変われば勝てるかもしれない。

 横腹が痛い。あの二丁拳銃の時に出来た傷が少し傷むし、体力も尽きそう。限界も近い。血も吐いた。私との相性が悪い。勝てる可能性だって、裏よりも低い。

 裏と変わった方が賢明だ。その方がいい。そうするべき・・・・なんだけど。なんだろうけど・・・・

「ごめん、もう少し待って」

 私の言葉に裏は驚いていた。

「なんでだい? あれくらいのスピードなら俺は追い越せる」

「だからだよ」

 私は立ち上がる。

「だから、あなたとは変われない。頼りっぱなしは嫌なんだ。あれは私が、私自身が倒して、越えなければいけない敵なんだ。誰の邪魔もさせない」

「・・・・」

 裏の私はため息をつく。

「なんでだ。なぜ、そこまでして戦い続ける」

「エマの夢を叶えるための、守るための力が欲しい」

 私は大きく息を吐く。

「エマさ。王国と島の人達がまた一緒に暮らす、そんな夢みたいなことを言うんだ」

「俺も聞いてたけど、さすがに無理だろ」

 裏の私はそう言って鼻で笑った。それを聞いて、

「だよね。私もそう思う」

 と笑う。そして、

「でも、エマがやるって決めたんだ。なら私はそんなエマを支える力が欲しい」

 そう言って、裏の私を見た。

「それでも、あの海賊船の二丁拳銃の男みたいにどうしても無理だと感じたら、その時はお願いするからさ」

「・・・・あいつはあの時の男より数倍強いぞ」

「それでもやらなきゃ」

 私はそう言うと、裏の私は後頭部を掻き、

「まったく・・・・仕方のないお嬢さんだな」

 そう言って笑った。

「でも、いいか? もし本当にダメだと感じたらちゃんと変われよ。あの海賊船の時とは違って、準備はできてるんだからな」

「うん、わかった」

 そう言って、また倒れた。


「・・・・ありがとう・・・・」

 そう呟いて、私は目を覚ます。

 疾風の男は、私を倒したと思ったのか、その場を立ち去ろうとしていたが、

「生きてたか・・・しぶとい奴だ」

 と起き上がった事に気付いたのか、私の方を見る。

「・・・・一つ聞いてもいいか?」

「・・・なんだ?」

「なぜそこまでして戦うの?」

 男は鼻で笑って答える。

「理由などない。国のためだ」

「人が死んでいるのに?」

「国のために死ねるんだ。その死んだ奴も本望だろう」

 私は大きく深呼吸をした。そして、

「・・・・国のために死んで本望? ふざけるな‼」

 と叫んだ。

「戦争って、単なるケンカに私達は付き合わされてるんだぞ‼ 言ってしまえば人同士のケンカに味方つけて、そいつらを板挟みにして戦わせて、当の本人は見物してるのと同じ状況なんだぞ‼ そいつは人が死んでも気にしない‼ そんな奴のために死んで本望? ふざけんな‼」

「・・・・その理論だと・・・お前らのとこも見物しているようだが?」

「違う。僕らはみんな戦ってる。人が死なないように守ってるんだ。命を何とも思わない君らと一緒にするな‼」

「別に、そう思ってはいないが・・・」

「いいや、思ってるね。思ってなければ、さっきみたいなセリフが出てくるはずがない」

「・・・・」

 男はため息をついた。

「お前が言っているのは単なる理想論だ」

「それでも、こんな意味もないことを無くすために戦ってるんだ」

「・・・・理解不能だ」

「・・・・そうか、なら・・・」

 私は指をさして言った。

「・・・オマエヲ、タオスマデダ・・・」

 私はナイフを構えた。

「俺を倒すだと・・・・ふん、のろまがなにいってるんだか・・・・」

 男は気付けば私の後ろにいた。

「・・・・ふん、雑魚が・・・」

 と言ったと同時に男は倒れた。

「どういうことだっ‼」 

 男は痛みのあまり叫ぶ。その右膝と横腹には私のナイフが刺さっていた。

「・・・・悪魔達の幸運(デビルズ・ラック)

 私は振り向いて、笑顔でそう呟く。

 私のSCは『喜怒哀楽』の感情系SCで、対象を回復させる『癒しの喜び』、攻撃力を上げる『悪魔の怒り』、涙を蒸発させ霧を作る『哀しみの霧』、そして、運を向上させる『奇跡の楽しさ』がある。

 今回使ったのは『悪魔の怒り』と『奇跡の楽しさ』だ。

 これにより、勘で投げた二つのナイフが右膝と横腹に直撃したのだった。

「・・・まさに奇跡」

 そう言って、男の右膝と横腹かナイフを抜き取る。

「・・・・この悪魔がっ・・・・・⁉」

 男はそう言って気絶したのだった。 

 そして、微かに『お見事』という称賛する声が聞えた。


                  ◇


『あの少女は誰だ?』

 俺はさっきのマスターの言葉が今も頭の中を駆け巡っていた。

(いったい、彼女は何者なんだ?)

 そう考えながら、ミサイルハンターの異名を持つ女ラキの狙撃推測地である向かいの山に移動していた俺をタクトが蹴り飛ばした。

「痛っ! 何すんだよ」

「ラット。マスターの言葉が気になるのはわかるが、今は敵に集中しろ」

 俺は舌打ちをしつつ、

「わかってるよ」

 と蹴り返した。蹴られた箇所を擦りながら、タクトは咳払いをし、

「とりあえず、さっき定時連絡が来た。カレンが疾風のジンを倒したらしい」

「・・・やるな、あの子」

 俺は素直にそう思った。

「だが、その他の幹部はまだ倒されていない」

「だめじゃん」

 俺は素直にそう思った。

 

そんな会話をしている間に推測地である山の(ふもと)についた。

「んで、ここからどうする?」

「ギルド『エルフの森』を目指そう。もし仮に奴らが攻め込んだとするなら、そこを陣取るはずだ」

「・・・・うん、たしかに。んじゃ、行くか」

 そう言って俺らはギルド『エルフの森』に向かうのだった。


「・・・・いないな」

「・・・あぁ」

 予想を外したのか、そこにラキの姿はなく、ただ、破壊された建物の残骸(ざんがい)があるのみだった。

「どこだ?」

「敵意察知系のSCをもった奴連れてくればよかったな」

「・・・・まぁ、そんなことしなくても」

 と俺はミサイルを凍らせた。

「・・・・よく、わかったね~」

「敵の後ろを狙うのは狙撃者しては基本だからな」

「へぇ、なるほどね~」

「それに、あそこの建物。ギルド『エルフの森』だろ? だいたいの予想はつく」 

「ほうほう、やるね~」

 そう言って、ランチャーの銃口をこっちに向ける。

「おい、相棒」

「どうした?」

「ここは俺に任せてくれないか?」

「・・・どうした急に」

 俺はタクトにそう聞くと、タクトはこっちを向いて言った。

「たしかに、遠距離型の俺とお前のSCならこいつを倒すことはできるかもしれない。だが、こいつだけに集中すると他の幹部に俺ら以外の奴らが殺されていく一方だ。エマも今やばいかもしれない。だから、ラット、お前は他の幹部の所へ行け」

 タクトはそう言って、前へ出た。

「君が相手なのかな~?」

「まぁ、そんなところだ。安心しろ、早く済む」

「へ~、それは私が勝ってということかな~」

「冗談はやめとけ。勝つのは俺だぁぁぁぁ‼」

 そう叫んでタクトは強声で攻撃した。

「危ないよ~‼」

 そう言ってラキはミサイルを放つ。二人の攻撃がぶつかり合い、大きな音が鳴り響いた。

「早く行け! ラット」

 俺はそんなタクトにため息をつき、

「負けんなよ」

「当然だ‼」

 そう言って親指を俺の方に向けて立てた。


                    ◆


(・・・・強すぎる)

 司令官ミキはとてつもなく強すぎた。

「どうした? 攻撃が掠りもしないじゃないか? というかもう諦めたらどうだ?」

「うるさい‼」

 僕は立ち上がり、ミキのもとに駆けて行く。そして、ナイフを一振り、

「当たらんよ」

 僕の腹に拳が直撃した。僕はその激痛に耐え、回し蹴りをした。しかし、

「・・・・だから当たらないって」

 とミキはしゃがんでその攻撃をかわし、その体勢のまま軸足目掛けて回し蹴りをする。

 バランスを崩した僕は仰向けのまま倒れる直前で、足で受け止められ、まるでボールの様に蹴り飛ばされる。

「・・・・んがっ⁉」

 僕は壁に激突した。

「話にならないな。だろ? アカネ・クロハ」

 そう言って、ただ茫然とそれを眺めていたアカネは、

「うちの仲間に何してんねん‼」

 どうやら我に返ったようで、ミキを睨みつける。しかし、ミキは鼻で笑い、

「仲間? 何を言ってるんだ? 東洋の元スパイ」

「そんなん、今は違う・・・」

「そうだな。その通り、『今は』な。けど、元々お前はここを乗っ取るために来たんだろ? スパイってことは」

「・・・っ‼」

 アカネは再び黙る。

「それに、お前らの力の・・・なんだっけ? SCとか言ったか? その力をその仲間とかいう者達に見せてないだろ?」

 僕はミキのその発言の意味が分からなかった。

「・・・・うちは」

「まさかさっきまで俺らの軍を倒してた技の事じゃないだろうな? 『身代わりの術』・・・東洋の技だよな?」

「・・・なっ」

 ミキはニヤリと笑った。

「なぜそれを知っている、って顔だな。言ったろ? 俺の力『ガブリエルの知らせ』だよ。俺はこの世で起きた出来事をほとんど知ることができるぞ? そうだな、例えば・・・・」

「もういい‼ 黙れ‼」

 そう言って一閃。しかし、その攻撃をミキは簡単に避け、そのまま背中を踏みつける。

「お前、ラットとかいう奴にも自分の力を使わず勝ったのかよ。相手はちゃんと力使って戦っていたのに、失礼な奴だな、お前は」

「・・・」

 アカネは俯いていた。その顔を僕はよく目を凝らしてみると唇を噛みしめて、悔しがっているようだった。

「追放されたことを秘密にして、SCも隠して・・・・まぁ、言えるわけないか。だって、本当に仲間だと思ってないのだろ?」

「ちが・・・・」

「だったら、なぜそれを隠す? 秘密にする必要がある? 拒絶されると思ったんじゃないか? 不安だったんだろ? 当たり前だ。どうせ、信用できなかったのだろ?」

「・・・」

 アカネの唇を強く噛んだためか、赤い血がポトリと落ちる。

 ミキは、背中を踏んでいた足でアカネを蹴り飛ばして、笑いながら言った。

「我らと手を組まないか? 我らはそんなお前も拒絶せず受け入れよう。追放もしない。信用だってしなくてもいい。ただ、我の言う事を黙って聞き、戦ってくれればいいんだよ。仲間だなんて思わなくてもいい。どうせ、我らも王国のために戦う兵。ただの駒にすぎ・・・」

「・・・・何、言ってるんだ?」

 僕は立ち上がった。壁に直撃した背中がまだ痛い。蹴り飛ばされた腰も、腹も痛い。足だって震える。あの強大な力を持った男とまた戦う覚悟が、勇気がもう枯渇しているのがわかった。

(・・・それでも)

 僕は見たんだ。悔しくて、悔しくて。唇を血が出るくらい噛みしめるアカネの姿を。目から涙も流れていた。

それを見て僕は、勇気が湧いてきた。覚悟を決めることができた。

「・・・・すごいな。アカネは」

「なんだよ。今更、信用を得ようとお世辞か?」

「んなわけないだろ」

 僕はミキを睨む。

「ふざけんな。僕は嘘が嫌いだ。つくのも、つかれるのもな‼」

 そう言った瞬間、アカネの顔が下がる。そんなアカネとミキのいる方に僕はナイフの刃先を目の前に向けた。

「けど、アカネは嘘なんかついてはいないさ。だろ?」

「・・・⁉」

 そう言った瞬間、アカネは顔を上げ驚いていた。僕は微笑んで、

「何を驚いているんだ? 君は別に嘘をついたわけじゃない。言わなかっただけだろ? 秘密にしてただけだろ? それに、僕がアカネと同じ立場だったら、普通に同じことしてた。東洋の元スパイなんて言えるわけないもんな。わかるよ。けど、もう少し僕らを信じてくれないかな? だって、僕ら・・・・」

 僕はアカネの目を真っすぐ見て言った。

「仲間だろ?」

 と。そう言った瞬間、アカネの目か涙が溢れだした。

「アホなんか、自分。そんな臭い言葉言うて、恥ずかしくないんか?」

「別に? 僕は本音を言っただけだよ?」

「うちはSCも使わず、ラットを倒してしまった。ラットは本気で戦ってくれたのに・・・」

「何、馬鹿なこと言ってんだ?」

 その声に反応し、その場の全員がその声がした方向を見る。そこにはラットがいた。ラットは鼻で笑い、

「本気? 笑わせるな。出すわけがないだろ、そんなの。面倒くさい」

「空気壊すなよ」

「・・・・」

 僕がそう言うと、ラットは僕から目を逸らした。

「それに、それって逆にすごいじゃないか。SCを使わずにだよ? 僕は瞬殺されるだろうし」 

 頭を掻きながらそう言う僕をラットが鼻で笑った件は見逃しておこう。

「・・・・なぁ、アカネ。僕に力を貸してくれないかな? 僕知っての通り、無能力者だから、協力してくれたらありがたいなって」

 僕がそう言って、手を伸ばした。アカネはくすりと笑って、

「・・・人がよすぎるよ、エマちん」

 と呟いた。そして、涙を拭って、

「うちこそ、よろしくな。エマちん」

 と立ち上がって、僕の手を握った。

 そして、思いっきり腕を上げて身体を伸ばすと、

「さて、ここにいる邪魔な奴を倒すとするかね」

 そう言って、近くにいるはずのミキを見たつもりだったが、

「おぉ、やっと茶番が終わったか・・・」

 そう言うミキはラットの首を掴んでいた。通りでアカネに近づく僕が無事なわけだ。

「先に楽しませてもらったよ」

「すまん、隙を突かれた」

 ラットはそう言った後、投げ飛ばされ、家の壁に当たった。

「・・・ラット‼」

 僕は駆け寄ると、ラットは笑って、

「大丈夫だ。ちょっと首と背中が痛むくらいだ。勝てるかと思って、後ろからSCを使ったら、それをかわされて、首を掴まれた」

 ラットのSCは基本見えない。なぜなら、『視線』というのは見るものではなく、感じるものだからである。

(・・・勝てないのか? 僕らじゃ・・・)

 そう思い、僕はミキを見る。すると、

「見せたる・・・うちのSC」

 そう言ってアカネが立ち上がった。

「待って、アカネ! あいつ、攻撃をかわすよ。見えようが、見えまいが」

「みたいやな」

 アカネは僕の顔を見てそう言った。

「どうするの?」

「こうするんや‼」

 そう言って、ミキのもとに駆けだし、一閃。居合切りをするが、かわされ拳が腹をとらえる。しかし、

「残念やったな」

「・・・⁉」

 それは、ラットに使ったSCもとい、東洋の技『身代わりの術』だった。そして、相手の意表を突き、

「これがうちのSCや‼」

 そう言ってミキの頭に触れた。そして、僕の所まで戻る。

「何をしたんだ?」

 僕がアカネにそう聞くと、アカネは頬を掻きながら、

「うちのSCの力や。『最悪な思い(トラウマ)』言うて、対象者の頭に触ると昔の嫌な思い出を思い出させて、精神的ショックを対象者に与えるんや。つまり・・・」

 とアカネは振り返る。しかし、

「・・・?」

 ミキに異常は見られなかった。そして、効果がわかったのか、

「悪いな、アカネ・クロハ。我にそんな思い出はない。お前と違ってな」

 そう言って笑う。

「そんな・・・・」

「お前のそのSCはどうやら、妬みとか恨みとかがもとになって出来たらしいな。全「・・・相手に同じ思いをさせようとしたのか? ほんと哀れだな」

 そう言って、銃を出す。

「・・・・もう、くたばれよ。東洋人が・・・・」

 そう言ってミキは引き金を引いた。

「・・・‼」

 アカネは驚いていた。僕ですら驚きだ。気づいたら、前に出ていて、アカネの盾になっていた。

「・・・なんで・・・」

「なる・・・ほど・・・これが火事場の力か・・・」

 そう言って僕は気絶したのだった。


                    ◇


「・・・・ちくしょ・・・またかよ」

 あの時とデジャブだった。

 また俺は彼女を守ることができなかった。

「エマちん‼ 起きてよ‼ 目を開けてよ‼」

「エマ‼ 冗談はよせって‼」

 いや、前よりもっとひどいかもしれない。近くで悲しんでる奴がいる。

「・・・・よくも・・・・」

 そう言ってアカネが立ち上がった。

 俺も立ち上がろうとする。しかし、立ち上がることができなかった。

 それは別に手の骨が折れていたわけでも、足の骨が折れていたわけでもない。

 ただ、目の前の男に恐怖し、腰が抜けて立ち上がれないだけだった。いつも冷静な俺が、久しぶりに感じた焦りだった。

(・・・まずい)

 俺は足を何度も叩いた。動け、動けと。しかし、動かない。

(このままじゃ・・・また、人を失ってしまう)

 そんな俺に目もくれず、アカネは走り出した。男は腰に刺していた拳銃でアカネを撃つ。

 アカネは俺を破った技、『身代わりの術』でかわし、太刀を抜刀した。そして、一振り。しかし、かわされ、腰あたりに回し蹴りをされる。

 アカネは地面にばたりと倒れる。

「・・・・まったく・・・仕方ない。もう終わらせよう」

 そう言って、懐から銃を出し、アカネに向ける。そして、

「・・・・死ね」


 ビャンッ‼


 そんな音が急になり、黒い弾丸が男の頬をかすめる。

「・・・・⁉」

 撃たれた男が一番驚いていた。そして、その場にいた全員後ろを振りむく。すると、そこには髪は黒く、やや薄黒い顔で、黒の服と黒のオーラをまとった少女がそこにいた。

 言うまででもないが、気絶していたエマの姿はそこにはなかった。

「・・・・誰だ、お前?」

「・・・『メア』っていうの。よろしくね?」

 そう言って、首を傾げ微笑んでいたが、明らかに目は笑っていなかった。

 俺はこの光景を見てエマのSCが『まさか』と思っていたその『まさか』にあてはまってしまう事に気付く。その方が、いろいろ辻褄(つじつま)が合うからである。

 その『まさか』は全部の系統にあてはまるということだ。

 俺は『普通』は一人につきSCは一つということを思い込み過ぎていたのかもしれない。というか、そんなの誰が決めたのだろうか。

 マスターの言う通り、他の系統のSCを習得するには多大な努力が必要なのかもしれない。

 しかし、それは飽くまでSCが一つ備わっていた場合である。その場合、バランスを考え調整する必要があるのかもしれない。

 ただ、もしかしたらその例外もあるのかもしれない。

 例えば、無意識のうちにそのSCを取得するための条件をクリアしていたなら。

 たしか、エマは前に『図書館に通っている』と言った。それはSCの知識系だ。

『小説を書くのも好き』とも言った。それは『想像力強化』で、脳が強化される身体系SCだ。

そして、仲間を思う気持ち。大切にする気持ち。これはもう感情系のSC意外の何ものでもない。

 そして、元々身体は気絶して意識がない状態なのだから別に身体への負担は問題ない。つまり、エマは三つの系統のSCを取得していても、別に不思議ではないのだった。

メアと名乗る少女はニヤリと笑う。

「あなたを私の夢へ招待しましょう」

 そう言って男の上空に黒い球が現れる。

「ふん、そんな攻撃かわして・・・」

 そう言いかけた途端、男は球に吸い込まれた。

「今からあなたには精神的ショックを受けてもらいます」

「なんだ? あいつみたいなトラウマの呼び起こしか?」

 そう男が黒い球の中で言うと、メアは首を振って、

「いいえ、言ったでしょ? 今から見せるのは悪夢。私が作り出した夢。ナイトメアですよ」

 すると、少女は自分の目の前に手を出し、指をパチンと鳴らし、

「黒の夢」

 そう言った瞬間、目の前にあった黒い球は男と一緒に消えた。

「・・・あの男はどこに?」

 俺はそう聞くと、少女は笑って、

「さぁ、どこでしょ?」

 とまたも目が笑っていない笑顔を俺に向けたのだった。


         ☆

 

うちの父ちゃんは物心つく前に、戦いで死んだ。母ちゃんもそれを追うように数年後、病死したんや。

 うちはそれから親戚の人に引き取られたんやけど、その家は有名な武家の家でな。うちはそこでよく男扱いされてたんよ。髪はバサッと切られたな。それこそ、今のエマちんみたく。

 そんで、うちは『忍』いう仕事についたんよ。まぁ、わかりやすく言うたらスパイやな。そん時、生き抜くための戦い方、技をいろいろ教えてもらったんよ。『身代わりの術』もそのうちの一つや。

 いろんな任務も行った。やれ、あそこの屋敷に潜入しろ、情報収集しろ、みたいな依頼ばかりだった。そんな、数々の依頼をこなしていったある日だったんよ。この島の依頼が来たのは。

 将軍様、直々に『この島の力について学んで来い』っていう依頼が来たんよ。

 そんで、うちは数年かかっていろんな島にも寄りながら、ようやっと着いたんよ。そして、上陸後、すぐ気づいたんや、身体の変化に。あきらかにいつもより身体が軽くなっていることに。

 実際、そこら辺を走って見たらものすっごい速く走れて、『これがこの島の力か』っておもたんや。

 うちはそれを将軍様に報告しに行ったんよ。けど、帰国した途端・・・いや、島から出た途端、普通のいつもの調子に戻って、その力を将軍様に見せることはできなかったんや。

 それで、うちは嘘つき扱いされ、国から追放された。

 行くとこも、帰るとこも無くなったうちは途方に暮れて、船を漕いでこの島にまた来た。

 けど、今度はうちの身体は軽くなることはなかった。それに気づかなかった、というよりは自国への恨み、妬み、悔しさとかが頭を巡って、思考が麻痺して、それに気づかんかった。

んで、うちは、そこら通った野良犬の頭を撫でたんよ。なんとなく。そしたら、犬が痙攣して、そのまま泡吹いて気絶したんよ。

うちはそんなうちが怖くなって、でもお金稼がんとアカンし、だから情報収集ついでにバイトしたんや。

そんなある日、島から少し離れた所で漁のバイトしてたんよ。そしたらエマちんたちを見かけた。

海賊達に対して勇敢に戦うな。うちは、そんな皆に見惚れてしまった。そんで、皆の事を追ってこのギルドに来た。


                   ◆


「・・・・まぁ、そんな感じだよ」

 あの騒動から十日以上が経ち、アカネはギルドの試験に受かって俺らのチームに入った。

 ちなみに、あの戦いは司令官であるミキとの連絡が取れなくなったのに気付いたのか、王国軍は敗走という形で幕を閉じた。例のごとく、僕は気絶していたため気が付いたら終わっていた。

 ラットから話を聞くと、ラットとアカネが力を合わせて倒したらしい。よくわからんが、絆が深まったって思っていいんだよね。 

そして、アカネの歓迎会が始まった直後、聞いてほしいことがあるって言ってアカネがこのギルドに来るまでの話を僕らにした。

ラットは微妙な顔をして聞いていたが、やがて、そうか、そうかと頷いて、

「まぁ、なんだ。難儀したんだな。お前なりに」

 と言った。でも僕としてはアカネの過去なんかどうでも良かった。そんな過去よりも、

「僕はさ、アカネ。そんな過去よりも、これからのアカネが知りたいな」

 と笑って言った。すると、アカネは

「・・・・な、なんであんたはそんな言葉ほいほいと言えるんよ」

 と言って頬を掻いていた。照れているのだろう。

 カレンは、照れるなよ、と(ひじ)でアカネの身体を押した。アカネは照れてへんって否定し、笑った。

 そして、アカネからは東洋の話とかいろんな話を聞いた。僕らもこの島の事とかいろんな話をした。

 その日は皆で存分に笑い合い、話し合い、楽しみ合った。

この先、僕らはいろんな出来事、いろんな人に出会っていくだろう。その中で笑い合い、泣き合い、ケンカだってするだろう。けど、その度に仲直りし、絆は深まっていくはずだ。

 そんな日々を送りながら、皆の夢や願いが叶うよう頑張る。きっと、みんなと一緒ならそんな夢や願いも叶えられると僕は思った。


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