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WISH and DREAM  作者: 樋夜 柊
IKNOW編
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第四十九話 リベリオンと決着

「・・・なんかピンチそうだね、ミィ」

 急に後ろからそんな声が聞こえて、振り返ると

「な、なんで、ここに?」

 私は驚きのあまり目を疑った。目を擦ったがどうやら幻覚ではないみたいだった。

「あぁ、あいつらの事なら安心してもいいよ。ほぼ皆気絶して、コルンとムーちゃんしか立っていなかったから。だから、どれだけ強いのかな? と思ったらなんか手応えなくてつまんなかったよ。それで、ミィ。手を貸そうか?」

 動揺している私を気にせずに淡々とそんなことを話すのは黒髪でいかにも大人びた雰囲気の女性、リベリオン元キャップ、もしくは私の元師匠、シイラ・カイラムだった。

 私は一瞬停止した頭をぶんぶん振って我に返り、

「・・・師匠、どうしてここに?」

 そう聞くと、

「ん? あぁ、長期依頼が終わって、ギルドにもどったら机も椅子も、台もボロボロ。みんなも怪我してるし、現状と皆の事を聞くと、西の洞窟に敵を倒しに行ったって聞いて駆け付けたら、まぁ、さっき言った通りみんな苦戦してるから、焦ったよ。それで、こっちの質問にもいい加減答えてよ。ミィはどうして欲しいの?」

「・・・・どうしてって」

 私は流血する横腹を抑えながら、考えた。

「見た所、ミィ。君も苦戦してるみたいだし、横腹が怪我してるみたいだし、私的には早く帰って治すのを推奨するけど・・・・どうする?」

「・・・・」

 そうだ。すごく痛い。こんな痛みを背負って、状況を楽しめたら、そんなの単なる異常者だ。師匠に任せれば、おそらくすぐ勝負がつくだろう。

 ただ、ここで逃げてしまったら。

「逃げたらかっこ悪いって? 私はそうは思わないけどな。言ったでしょ、前にも強いやつが持つ三つの力。見た所、その三つの内一つをこいつは持っているらしいし」

 そうだ、その三つ。覚悟と勇気、そして楽しむ力。だが、

「・・・・やめてくださいよ。そんな変な冗談を言うのは・・・」

 そう言って立ち上がる。

「こいつのSCは『勇気強化』っていうよくわかんないSCです。たしかに強い。横腹だって正直痛い。血も止まんないし。けど、これはちょうどいいハンデだ」

 そう言って、深呼吸して言った。

「お前もなに余裕ぶっこいて、手止めてんだ。構えとけ、その自慢の武器を。今から打破してやる。お前も、この逆境も」

 そう言って目を(つぶ)った。そしてまたさっきよりも深く深呼吸した、地面を蹴って駆け抜けた。

「駆けてばかり、突撃ばかり、特攻ばかりで、何のひねりもないんだよ‼」

 そう言って、右斜め手を払った。ブーメランのように飛んでくる。私はそれを右の洞窟の壁を蹴ってかわした。そして、反対の壁を思いっきり蹴って、一気に前に進んで、その勢いで顔をパンチしようとするが、凶器ブーメランが男の元に戻って来た事に気が付き、勢いを殺して横にずれ、壁を思いっきり叩き、男の後ろに回り込んだ。

(・・・・ダメだ。消せない。恐怖が)

 その恐怖が邪魔をして、刃物に集中してしまって、かわすことばかり頭にあって、攻撃することができない。

 私はふと師匠をみると、師匠はあくびをしていた。そして、私をじっと真剣に見た。

 緊張と恐怖が増幅していく。

 そんな時、こんな時。他の奴らなら、師匠なら、エマなら。どうするだろうか。

(・・・そうだ、エマ)

 無能力者のあの子は今もきっと戦っている。前に話をした時、自分より強い奴と戦って怖くないのかと聞いたら、

『え? 怖いに決まってんじゃん』

 と答えた。そして、

『怖いけど。自分は無能力者だから。趣味とかはあるけど、特徴も、好きなことも何もないから。だから、誰よりも弱いのは当たり前で、当然なんだ。だけど、というかだからこそ出来る事を全力でやっていくしかないんだよ。いくら怖くても、無能力者でもそれがなんだって言えるようにね。出来ない理由をそんなのにしたくないんだよ。気持ちでは負けたくないんだ。なんてね。恥ずかしいこと言わせんなよな』

 と笑って言っていたが、たぶん本気で言っているのだろう。

 それに比べて私は、

「・・・アホみたいだな」

 考えるだけ馬鹿らしくなってきた。緊張? 恐怖? 何いっちょ前にそんなこと感じてるんだ。前に強敵を倒しただけで。いや、あれは強くなかったんだ。私が単に弱かっただけなんだ。

(そんなの・・・全力で戦ってから感じろ‼)

「はははっはははっははは‼」

 私は笑って、無我夢中で走った。

「何笑ってんだ⁉ 真剣にたたか・・・・」

 と言って、横に払った瞬間を狙って私は思いい切り地面をけり、そして・・・・


 ズドン‼


「・・・・うぐっ‼」

 全体重を乗せた頭突きを腹にぶち込んだのだった。飛びこんだのだ。男の腹に向かって気を付けの体勢で。そして、かつあの凶器ブーメランをかわすため、身体を下に傾け、当たらない向きに、ミサイルのように飛びこんだのだった。

 男はよろめきつつ、踏ん張って、

「クソが‼」

 と最初に聞いた声色からは想像もできないくらいのドスの効いた声をして私を睨むが、

「遅い‼」

 よろめいているわずかな瞬間で、壁を右と左を交互に蹴って移動した私は、

「これで終わりだ‼ 逆境打破‼」

 と右手で顔面をパンチした。しかし、

「おあぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 と右手で受け止めていた。しかし、私は笑って言った、

「いいの? そっちの手で受け止めて?」

「あ?」

 

 グシャ‼


 そんな音が聞こえ男の横腹を凶器ブーメランが切り裂いた。

「・・・・そんな、まさか、お前‼」

「良かった、私より馬鹿で」

「・・・くっそぉぉお‼」

 私は地面に着地した。そして、

「乱舞・逆境崩壊‼」

 と拳や蹴りをたくさん身体に叩きつけたのだった。


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