第四十八話 逆境楽しむ少女と勇気の発明家
ケイとアルカルをおぶって、一度物陰に隠れた私達は、どうするか作戦を考えようとした時、
「行け、ミィ。ケイとアルカル、敵共は俺らに任せて、ミィ、お前は先に行け」
とコルアが私の顔を見てそう言った。私はその言葉に、
「行けるわけないだろ‼ あの影どうやって倒すんだ‼ あの自動射撃砲台を相手にしながら、あんな影の、得体の知れない敵と戦う気かよ‼ ふざけんな、皆死んじゃう・・・」
「・・・なら‼ あいつを誰が止めるんだ‼」
そう言って私の襟を掴んで、険しい表情でそう叫んだ。
「お前は今日遅刻してきたよな。だからわかんないんだろうが、みんなあいつの発明品とやらの兵器に瞬殺されたんだよ。マスターも心が読めないとかで瞬殺だった。けど、始めから本気ではなかったとはいえ、あんな長く戦っていられたのはお前だけなんだよ‼ 他でもねぇ、お前だけなんだよ‼ ふざけんなって? それはこっちのセリフだ‼」
そう言ってコルアは投げ捨てるように私の襟から手を離した。
「ミィ。確かに、あんたの言う通り、私らが皆死んじゃうかもしれない。それくらい奴の影は強い。けど、それでもあんたがここにいていいはずがない。あんたはあいつを止めるんだ。ここで全滅したら、誰が解放を止める・・・・」
とあくびをして眠そうにサムが言った。
「大丈夫だよ、ミィ。あの砲撃くらい任せておいて!」
「きっとケイもなにより元キャップもここにいたら同じことを言っていたはずだよ」
にこにこしながらそう言ったムーマイコンビがそう言った。
元キャップは、勘違いして欲しくないのだが、別に死んだわけじゃない。ただ、長期依頼により、一時チームを抜けているのだ。そして、私に今の地位をつまり、リーダーという役割を私に与えた。
「おい、サナ。あの影の動きを止められて何秒だ?」
「おおよそ、十秒。持つか持たないか」
「充分だ。ムーマイも準備は良いな?」
勝手に進んでいく話に私は、
「待って、まだ何も・・・・」
と静止を試みるが、ため息をしてコルアが、
「ミィ、大丈夫だって。なんとかなるって。いつも口癖ように言っていたのはお前だろ。なら、ここで俺らにも、あいつにも証明してやれ。安心しろ。影は行かせねぇよ」
そう言ってコルアは苦笑をしてそう言った。
「んじゃ、スリーカウントで行くぞ」
そう言って、コルアはカウントを始めた。
◇
俺はさっき使った切り札の技の反動により身体に負担がかかり、身体のいたる箇所に痛みがはしっていた。そして、そんな身体で残党や組織の傘下と戦っていると、それを察したマキさんは、
「ふん、辛いのか? さっき身体にかなり負担のある技を使っていたもんな?」
「・・・・見てたんですか。そうですね、結構きついです」
「なら、やめるか?」
その言葉に、首を傾げて、
「なぜだ? こんなところでやめて、逃げたら今頑張って戦ってる奴らに失礼だろ」
「・・・・少しは言うようになったようだが、敬語使え。アホが」
そう言って腰を蹴り飛ばされた。
残り幹部は、ボスも合わせれば俺の知っている限りだと、三人だ。カレンが一人倒したという連絡がチーム内連絡機から聞いた。
(頼むぞ、皆)
俺はそう心の中で祈った。
W
「へぇ、よく僕に追いつきましたね」
「全力で走って来たから」
そう言って私は目の前の男を睨みつけた。
「どうでもいいんだけど、君第一人称ころころ変わるんだね」
「二重人格じゃないんですが、通常と戦闘時は変えているんだ」
「それがあなたのSCを出す秘訣みたいなもの?」
「・・・・時間が無いんだ。質疑応答で僕を探るのはそこまでにして、さっさと・・・」
「・・・・あぁ、わかってる」
そう言って、男の腹に向かって思いっきり拳をぶつける。
「だから、私のSCの為と単なる時間稼ぎのために聞いたんだ‼」
私は笑ってそう答えた。すると、
「いいだろう。なら、俺の発明品の力を見せてやる」
そう言って、左手だけで倒立し、そのままバク転し、洞窟の壁をキックし、私の所まで向かってきた。私は拳を構えるが、
「・・・どこ見てんだ?」
そんな言葉に反応した頃には、男は懐に潜り込んでいて、私はアッパーをくらった。
「・・・・くっ!」
よろめきつつ、なんとか足元を安定させ、再度男を見る。
男は男性と表すには小柄で、しかし少年と表すにはあまりにも大人びたような雰囲気だった。
身長が百六十前後の私より五センチくらい高いくらいの男だった。
「俺、クエスタントが相手してやる」
ただ、あの時のような恐怖も何もない。私はただただこの状況を楽しむことだけ考えた。
そんな私にクエスタントと名乗った男は、
「いいな、その顔。心から楽しんでるようで。だが、同時に気に食わない気持ちもふつふつとわいてくる。さて、何の武器を使おうか・・・・これ使うか・・・」
そう言って、ポケットから取り出したのは変わった形の赤いガントレットで、よく見ると先端がとがっていた。それを右手につけているのを見て、
「何よ、それ」
「これか? これは、なぁ‼」
「‼」
急に右手を斜め横に払ったかと思うと、先端の部分が外れ、V時型のブーメランのように回ってこちらに向かって飛んで来た。それをなんとかかわすと、例え通り、ブーメランのように男のガントレットに戻った。地面は少ししか掠っていなかったはずだが、まるで深くあったったのではないかと疑うくらい地面がえぐれていた。
「これが俺の武器。ただ、教えはしないが欠点はある。お前にはわからんだろうがな」
「いいよ、私もちょうど・・・・面白くなってきたところ‼」
そう言って笑って、向かって行った。男との距離はおよそ五メートル。あの武器は飛んで六メートルの中距離戦武器。近距離に持ち込めば、
(勝ち筋は・・・ある‼)
そう思った私は、思いっきり跳び、かかと落としを男の脳天におみまいしようとしたその時、
「そう簡単にくらわんよ」
と後ろに下がり、回避して、左斜めに凶器ブーメランを放つ。
空中にいた私は、それをなんとか身体を回転させ避ける。そしてそのまま、後ろ回し蹴りを男の右頬に一発入れる。しかし、それを右手で受け止め、投げ飛ばした。
そして、また走って向かって来る私に対して、横にブーメランを放つ。スライディングでそれをかわした私は、後ろに回り込んで、
ジョギッ
「・・・っ⁉」
私の横腹に痛みがはしり、転びかけるも前転を二回行って、一度その場から離れた。
しかし、
(・・・・っ)
横腹から血がぽたりぽたりと流血しだした。
やばい。これはやばい。恐怖という気持ちがまた私に襲い掛かってくる。
「まさかと思うけど、これが回転して飛んでいられるのが、一回だけだと思ったか? ブーメランと一緒で一往復したら俺の右腕に自然に戻ると? だとしたら相当の馬鹿だ。俺がそんな欠陥兵器作らないし、使わねぇんだよ」
ダメだ。震えが。焦りが。恐怖が。
そんな恐怖に襲われ、焦燥に駆られていた時、
「・・・なんかピンチそうだね、ミィ」
そう言って後ろから現れた人物に私は思わず驚いて目を疑った。




