第四十六話 無傷な男と氷叫の策略
俺が思いついた、考えた策を実行するためにはまず一つの物と一つの条件が必要だった。
物はさっきそれが思いつき、タクトが男の方に向かった後、二分かけて作成した。
そして、もう一つ。俺が心配している所だ。チャンスは一回だといったが、その理由は今から行うことからだった。
俺は前で戦うタクトに叫んで、
「タクト‼ 準備が出来た‼ 五秒数えたら、下がれ‼」
と言った。タクトはそれに親指を上に向け、手でグッドサインを作り、上に掲げた。
俺は集中した。とにかく集中した。あの技を久しぶりに使うからだ。俺は深呼吸をした。そして、
「・・・・完全零度、限界突破・・・・極寒、豪雪嵐の視界‼」
そう言って、周りを凍らせた。そして、さすが数年コンビを組んでいたための阿吽の呼吸とでもいうべきか、タクトは理解したのか、全てが凍り付く前に俺の視界の届かない俺の後ろまで下がっていた。
俺は自分の出した寒さによる眠気で意識が朦朧とする中、ただ、男が氷漬けとなった姿で固まっているのがわかった。しかし、
ぴきっ‼ ぴきっ‼
と亀裂が出来て、その亀裂がどんどん広まっていき、今にも割れそうだった。ただ、それは想定内だった。俺は、凍える声で言った。精一杯の声で、
「・・・・タクト・・・‼」
その言葉にタクトは、
「あぁ、よくやった‼ 俺の声には最適な場所だぁぁぁ‼」
と俺より少し前に出て叫ぶ。そして、ものすごい衝撃が、凍り付いた男に直撃した。そして、貧民街の建物の壁にぶつかり、倒れる。
俺は、周りの氷を解除した。俺は、膝をつき倒れる。そんな俺のもとへタクトが近寄ってくる。
「よくやったな、ラット‼」
そう褒めて向かって来るタクトに俺は精一杯の声で、
「・・・こっち、くんじゃねぇ‼ 下がってろ‼」
と叫んだ。その時、
ズドン‼
さっきと同じくらいの衝撃が俺に直撃した。
「ラット‼」
そういうタクトの声が聞えた。きっと、俺の前では男が立ちあがってんだろ? わかってる。想定済みだ。
(・・・・だから・・・‼)
俺は立ち上がり、
「チェックメイトだ。 IKNOW幹部」
と俺は貧民街の木製のドアを凍らせて作り上げた盾持ってそう言った。
「・・・・っ‼」
俺の前には苦渋の表情を浮かべた男がいた。焦っている様子だった。そして、横には何が何だかよくわからないといった表情を浮かべたタクトがいた。
「こいつのSCは、おそらく『自分の想像を外すSC』、『的外れ強化』といったところか。こいつはいつも最低最悪の状況を想像していた。その上で、お前の攻撃も、俺の攻撃も、コールスの攻撃も対応できる兵器や装備をしていたんだろ? だが、それは俺の凍結でエラーを起こした。当然エラーも起こすよなぁ。機械の弱点でもあるし、あんな凍ったら衝撃吸収機能のある装備も機能しないよな。まさか、俺があんな極寒を作れるとは思わなかっただろうし」
「でもラット。最後の攻撃は?」
「あれは、一回くらいは使う事が出来たんだろうな。耐寒性があったのかもしれない。だが、俺の極寒に最後まで耐えることができたものは未だかつてないぞ」
そう言ってニヤリと笑って立ち上がろうとした。最後の力を振り絞って。俺の技による影響で震える足を抑えながら。
「ぼ、僕はIKNOW幹部、アンオラクルだ‼ 絶対予想は外れる‼」
「あぁ、外れたぜ。俺が勝つっていう、予想にはなぁ」
そう。これは正直誰も予想していなかった。俺でもだ。俺が勝つのではなく、タクトが勝つと言いたかった。しかし、まさか、
「・・・・はい、そこ失礼」
ドシン‼
とそんな衝撃と共にハンマーをもった巨体の男が空から降って来るなんて。
その後の結末なんて、言うまでもないだろう。




