第四十五話 それぞれの推測と可能性
新年あけましておめでとうございます‼
「うあっ‼ はっ‼ えぁ‼」
ドン‼ バン‼ フブン‼
タクトはひたすら叫び、その衝撃が目の前の男に当たっているはずなのに、ぶっとんで壁に当たっては、すぐ立ち上がる。何もなかったかのように。
「何なんだ、お前はっ‼」
それでも何度も飛ばす衝撃に俺は、
「・・・うん、お前、いい加減気付け」
とケツを蹴る。
「いたっ‼ 何すんだよ、ラット」
「うるせぇ、効いてねぇの見ればわかるだろ。お前のSCには使用制限がある。考えて使え」
そう言って、冷ややかな目線を送って、再度相手の顔を見る。さっきの攻撃も、何もなかったかのようにすぐ立ち上がる。
「・・・あぁ、死ぬかと思った」
俺はその言葉が妙に気になって考えていた。すると、次は俺のケツをタクトが蹴った。俺はその蹴りが結構強かったのと、いきなりだったので驚いて、頭から倒れる。
「・・・・何すんだ・・・・」
ズドン‼
「・・・あれ? 当たると思ったのにな~、ミラー砲」
俺は後ろを見ると、ビルの窓がすべて割れていた。まるでさっきまでのタクトの攻撃がはね返ったかのように。
「お礼の言葉は?」
「後でな」
俺はそう言ってタクトを見る。だが、今回正直タクトが蹴っていなければ、間違えなく吹き飛ばされていただろう。
タクトは俺の言葉にため息をつき、
「まぁ、いいや。それよりお前、さっき何したんだ? ミラー砲とか言っていたが」
そう聞くと、少し首を傾げ、あぁと呟き、
「教えるわけないじゃん」
とにやりと不敵に笑って言った。
その言葉にタクトがキレかけていたその時。
「でもやっぱり、初見じゃ当たらないか・・・・」
という呟きが聞えた。なんだろう。なぜか引っ掛かる。
(・・・・『死ぬと思った』、『初見じゃ当たらない』、さっきからなんだ。なんだ、この違和感は)
とその時、
「クソ、さっきからなんで当たっている手応えはするのに当たっていないんだ⁉ 強運とでも言いたいのか? でも、始めの攻撃は確かにダメージを与えていたはずだし、俺が来た時に驚いていたはずなのに、驚いていなかった。来ることがまるでわかっていたかのように」
俺はタクトのその言葉に対して、ふと疑問に思って、タクトに聞いた。
「なぁ、さっきお前が行った、『来た時に驚いていなかった』って本当か?」
と聞くと、
「あ? あぁ、本当だ。あいつの様子は全然変わらなかった」
「・・・・そっか・・・」
俺はその時、なんとなく仕組みが理解できたような気がした。いや、理解ではない。これは『推測』だ。ただ、この推測がもし正しかったとすれば、チャンスは一度しかない。もしこれが失敗に終わったら、もうチャンスもない。そもそも、この推測が当たっている可能性だって低い。だが、
「おい、タクト。五分・・・・いや、三分でいい。時間稼げるか?」
そう言うと、何かを察したタクトは笑って言った。
「なめんな。三分だろうが、十分だろうが稼いでやるよ」
そう言って、背中に背負っていた最近新しく買ったと言って自慢していた鎖分銅を降ろして男の所へ向かって行った。
W
「やぁ、ごめんね。ほんと」
「・・・・まぁ、いつもの事だからいいけど」
「とりあえず、お前はそこで反省してろ」
私はそう言われ、ギルドの依頼が貼られているボードの前で正座させられていた。
理由は簡単だ。コルとかいう人からの連絡に僕は思わず手を上げて返事をしてしまったから。勿論、皆には相談なしに。
「・・・んで? 受けちまったもんは仕方ない。ケイ。お前の推理じゃ誰がいると思う」
「推理って・・・でもそうだね。これは推測だけど、まず三人はもう倒したらしいし、敵のボスは自陣、つまり貧民街にいる可能性が高いと思ってもいいだろう。あとは半数。ただ、貧民街の近く、東の洞窟はIKNOWの実力者がいると見てもいい。それも条件的に近くにいた奴。そう考えればうちに攻め込んできたやつがいるという可能性が高い。目的が元々四神解放なのだとしたら、貧民街にいちいち戻ったり、南北の洞窟にするのは効率が悪いだろうから。後はアルカルの嗅覚次第かな」
とケイがそう言うと、
「まぁ、南北とかは他の誰かがやるだろうから、なんとかなるだろ」
とアルカルはそう言った。サナはあくびをしながら寝てもいいなどっと言って、本当に皆を巻き込んでしまったことが申し訳なくて、
「ごめんね、ほんと・・・・無理しなくても僕だけで・・・」
行くからいいよ、と言いかけたその時、
「お前? まさか『自分だけが行く』と?」
そう言ってコルアが私を睨んだ。
「おい、ミィ。俺らのチームリーダーは一応お前なんだ。なら、言葉にくらい責任もて」
「でも、これは・・・」
「わかってるよ。ミィ」
そう言ってきたのはムーマイコンビのムーだった。そして、それに頷いてコルアが、
「どうせ、お前は悔しくてリベンジマッチでもしたかったんだろ?」
「・・・え?」
「まったく。誰がいるかもわかんないのに・・・まぁ、らしいっちゃ、らしいけど」
とあくびをしながらサナが言って、
「・・・それがミィの強さでしょ」
そう言ってケイは笑って言った。
「ほらリーダー。もう正座しなくてもいいから、俺等を導てくれ」
私は、そう言われ、目から出そうだったものを我慢して、
「ごめんね、皆。それじゃ、今回の無茶もよろしく」
その言葉にみんなは拳を上げて答えてくれた。いつもみたいに。




