第四十一話 戦況と驚愕の情報
(えっと、みんな。話し合いというのは勿論、IKOWの目的についてなんだけど、司会は僕でいいかな?)
(誰でもいい。さっさと話し合いとやらを終わらせてくれ)
と僕にボコボコにされたシルフィンの男は不満な顔をしてそう返してきた。だから、
(わかった。んじゃ、話を進めるね)
と笑って返した。
(今回のアウトロー組織IKNOWは僕達ギルドの同盟に早く気付き、早急に潰した。負傷者もたくさん出て、作戦は不利な状況のまま進行中。それが僕らの状況。まぁ、そもそも、アウトロー組織は僕らのギルドや他のギルドを全滅しようとたくらんでいる。んじゃ、なぜか。それを考えて欲しい)
(ちょっといいか?)
そう手を上げ、僕の頭の中に語りかけて来たのは黒いキャップと赤いパーカーを着た男だった。
(何かな?)
(今の戦況を教えてくれるか?)
(そうだね。始めに言っておくと、奇襲は失敗に終わっちゃった感じかな。山吹きのカレンさんが敵に洗脳されたって連絡も来て、今はエマがなんとか解いたみたいだけどね)
(そこだけ聞くとかなり追い込まれてねぇか?)
(うん、そうだね。けど、さっき報告で七鬼のフウさんが『タイラント』って名乗る敵を倒したって。前進はしているかな)
(幹部を一人倒しただけだろ?)
(あと、今幹部と戦っているのは、ラット君とタクト君の二人組と、七鬼アメさん。今、助っ人のサキさんが戦っているのも幹部と考えていいだろうね。幹部ではない貧民街の残党と今ばったり出くわしたってお嬢・・・マキから連絡が来た。そして、敵の最深部に向かっているのはエマとフウさん。ただ、この二人も貧民街の残党と戦いながら進んでるって・・・)
(お~い、えっと、これって送られているのかな?)
そう僕が皆に戦況を話していると、アメさんが頭に急に語りかけて来た。これは僕のSCの嫌なところでもある。だけど、仕方ないと話をいったん中断させて、
(はいはい、送られてます。どうしました?)
(今、敵の幹部倒したんだけどさ~。この人達とんでもないこと考えていたよ~)
(・・・よく口を割りましたね)
(あぁ、なんか脅したら話してくれた)
脅したってそんなことができたのだな、と少し感心しつつ、
(えっと、それでわかった事を教えてもらえますか?)
と返すと、
(うん。それがね。あらゆることに興味がない僕でも正直これには驚いたよ~)
とあまり驚いた心境が伝わらない彼が言った内容にその場にいた人達はみな絶句した。
☆
「まさか、ここで同郷の人に会うとは思いもせんかった。なぁ、もと都で実力をつけていた武士や貴族の家臣になっては暗殺していた都の裏切りくのいち、おしい」
「今はヨコイ・シイですよ。嘘をついて国を追放された大阪のシノビ、あかねさん」
「なんや自分嫌な覚え方しとるな」
「事実ですので」
そう返す目の前の女にうちは頭を掻いてため息をついた。
ラットとタクトに幹部は任せて、うちとコールスは先に進んだが、分かれ道に辿り着き、別々に行動して、全滅を避けた方がいいと言うたコールスの指示に従って、うちとコールスは二手に分かれた。
そして、偶然出会ったんや。この女と。この女について、うちは噂でしか聞いたことないが、変な噂しか耳にした覚えがない。その噂は、都に住む有力者が次々暗殺され、目撃者もいたが、夜灰色のマフラーを付けた女がいきなり現れ、気付いた時にはもう殺されていたという変な噂やった。いつしか灰色のシノビと名付けられるようになり、お尋ね者として、指名手配もされるようになった。
しかし、フウからそんな話を聞いておったとはいえ、本当に同郷の奴がおるとは思わんかった。
「ところで自分ここで何しとるん?」
「暗殺がばれて、島流しの刑を受け、行きついた島がここだったとそれだけの事です」
「暗殺がばれてって・・・・へましたんか?」
「まぁ、そんな所です。それで、あなたの目的は何でしょう?」
「うちはその先に用事があるんや。どいてくれへんか?」
「どんな目的ですか? この先にはあなたが戦っても勝てないだろう私達のボスがいるんですよ。それに本来シノビは情報を盗むのが役目。戦闘は非効率的だと思うのですが」
「やかましい。こちとら仲間やられとんのや。理由はそれ以外にいらん。それにあんたら、うちらや他のギルドを潰そうとしとるんよな? なら、それ止めへんといけん」
「そうですか、ならどうぞ、ご勝手に」
「どうしてもというのなら、力づくに・・・・え?」
うちは思いもよらない言葉にそう返す。
「だから、勝手にどうぞと言ったんです。先に進みたければご自由に」
「・・・・そ、そか」
シイはそう言った後、はぁ、とため息をついた。
「・・・・私はあの方をいつか暗殺しようと思っていますから、早かろうが、遅かろうがそれは同じことですよ」
「・・・暗殺って」
「私を誰だと思ってるんですか?」
そう言ってあくびをした。緊張感のない女だ。
「まぁ、ええわ。んじゃ、うちは行くで」
そう言って、最深部へ向かうためにシイを通り過ぎた、その時、
キンッ‼
「まぁ、そうなるわな」
「どうやら、シノビの戦いを忘れていなかったようですね」
とうちの刀とシイの二本のクナイがぶつかり、無表情な顔でシイはそう言った。




