第三十九話 やる気と破壊
「オラァ‼ ウラァ‼ グアラァ‼」
ドンッ‼ ボンッ‼ ズドンッ‼
男は拳に付けた武器で建物の破壊を繰り返した。その武器はどうやら何かにぶつかれば爆発する武器のようだったが、僕は自分のSC『柔軟強化』でかわしているため、建物が破壊されるのだった。
「おい‼ かわしているだけじゃ、勝てねぇぞ‼」
そう言って、出血し、流血している拳でまた殴る。僕はかわすと、後ろにあった建物が壊れた。
(・・・・めんど・・・・)
そもそも僕は戦いというものが苦手だ。というか嫌いだ。
んじゃ、なんでギルドに入ったのと聞かれたら、半ば強引に入れさせられた。
そもそも僕は、普通に何もせず、ボーとして人生すごしたかった。面倒くさいし、だるいし、面倒くさい。あれ、今面倒くさいって二回・・・まぁいいや。
本当に嫌だったが、ある日、このSCと体格がもったいないと言われ、無理やり入れさせられた。断ったのに、必死に拒否したのに、無理やり。
ちなみに身長は一メートル八十五センチくらいだっけ。覚えてないが、それくらいだ。
(・・・・あ~、わかった)
僕は一度男から離れる。そして、
「君、その武器は自分にもダメージが言っているでしょ。『自爆技』って感じかな」
「はん、今更気付くか」
「あぁ、それをどうせ脳筋的気合の強化とかでカバーしているんだろぉ?」
僕がそう言うと、男は少し驚いて言う。
「お前名前は?」
僕はため息をつき、
(僕こういう、なんだろう。認め合い? みたいなのあんまり好きじゃないんだよね・・・)
なんて思いつつ、
「・・・アメ・シグマ。君は?」
「名前か・・・組織ではコラップサーと呼ばれている」
「そっか~」
僕は興味なさそうにそう言った。すると、男は、はぁ、とため息をつき、
「俺、お前とは気が合わなそうだ」
僕はその言葉に頭をかいて、
「奇遇だね。僕もそう思うよ」
と言った。コラップサーは、あくびをして、
「もういい。この一撃で終わらせてやる」
「そういうの、大抵終わらないんだよ」
「うるせぇ‼」
そう言って腰からヒョウタンを二個出す。そして、
「この中には一方には酒、もう一方にはガソリンが入っている。知ってるか? 酒は引火するとよく燃え、ガソリンは引火すると爆発すんだぜ」
そう言って、僕の方に投げ、ポケットから紙とライターを出し、紙に火をつけて投げる。
(・・・これは・・・まずいな・・・)
面倒だと言ってはいるが、別に死にたいわけじゃない。残りの余生をただただ寝て過ごしたいと思っているだけだ。死ぬのと寝るのでは全く違う。どこがどう違うかは説明がめんどいから省くが、このままではガソリンに引火して死ぬ。そして、酒でも引火後、大炎上して、もう一方のヒョウタンに燃え移り、どの道爆発をする。コラップサーは気合いで何とかするだろうが、僕はよけようもない。つまり、
(・・・全部、取る‼)
と僕が二つのヒョウタンをキャッチした。しかし、
(・・・軽い?)
ヒョウタンは軽かった。まるで中身が入っていないかのように・・・・
「・・・まさか‼」
「遅い‼」
ズドンッ‼
あぁ、ほんと脳筋は嫌いだ。だがもっと嫌いなのはこういう姑息な手段を使ってくる。そんな奴だ。
僕は貧民街の出入り口まで吹っ飛ばされた。
「はあっ‼ どうだ、爆破拳の衝撃は‼」
大声で言う男に僕は立ちあがる。男は驚いていた。
(・・・・あ~、身体が痛い)
これ普通の奴がくらったら死んでる。良くても全身骨折はするだろう。だが、
「ごめんね~、一応謝る。僕、打撃系の攻撃が効かない」
このSC骨まで柔らかくなる。よって、打撃によって死なないし、骨折もしない。ただ、さっきの爆破による火でやけどを負ったけどね。
「ありえねぇ、立てるはずがねぇ」
「ごめんね~、僕規格外すぎて~」
そう言って、一歩、また一歩と近づいて行った。
「来るな、来るな‼」
「いや、めんどいから。もう、終わらせよ」
「クソッ‼」
そう言って、壁を殴るが、破壊できなかった。何度も殴るが爆破し、壊れることはなかった。
「クソッ、なんでだ‼」
「え? 故障でしょ」
そりゃそうだ。あれだけ使っていたら武器の方にもダメージが来るに決まってる。
「ま、待て‼ 俺等の目的を言うから」
「へ~。でもそれって・・・君を倒してからでも問題無いよね!」
そう言って、男の方に跳んで、さっきの仕返しとばかりに、顔面にフックをおみまいする。
これは、僕のSCの欠点である筋肉までもが柔らかくなって、パンチや蹴りといった攻撃の威力が半減してしまう僕が使う数少ない打撃技だ。腕をムチのようにしならせて強力な一撃をおみまいする。それが僕のフックだ。
武器も壊れ、戦意も喪失し、追い打ちをかけるようなさっきの一撃で壁に激突し、ぶるぶる震えるコラップサーに僕は、
「さぁ、んじゃ、教えてよ。興味ないけど」
と男の所に行き、目線を合わせて、にやっと笑った。




