第三十七話 狙撃の戦いともう一人の助っ人
バンッ‼
そんな一発の銃音がわずかに私の頬を掠め、後ろにあったギルド、『追い風シルフィン』の外壁に当たった。
「敵か⁉」
「よっしゃ‼ 来い‼」
そう言って、銃音に反応したギルドの人達がみんな外に出てようとしていたので、私は慌てて、
「外に出ちゃダメ‼ 皆中に入ってて‼」
と静止させた。反論しようとした人もいたが、
バン‼ バン‼
そんな二発の銃弾がギルドのドア、反論を言おうとしていた男の右耳に当たる。
(・・・警告‼)
狙撃手同士での戦いでは近距離、中距離戦の人達がたくさんいてもあまり意味をなさない。特に今のような正確な場所の特定が出来ていない状況の場合、それは怪我人、最悪死人が出る可能性だってある。
右耳を撃たれ、痛みに喚いている男を見ず、スコープで前を確認しながら、
「さっきの攻撃に反応できなかったのがいい証拠よ。お願いだから中に入って‼」
しかし、まだ反論しようとした人もいて、私は怒り叫びそうになると、
(皆、中に入ろ。ちょうど、僕も皆に話したいことがあるから)
とさっきまで放心状態でぼーとしていたコルが皆に指示。そして、私の方を見て、
(適材適所ってやつでしょ? お姉さん)
と語りかけて来たが、私は返事を返さず、ただただ小さく頷いた。
◆
「さっきはありがとうございました」
「ふん、借りを返しただけよ」
貧民街の最深部を目指して走りながら、そう僕と会話しているのは、黄金の大蛇『傲慢な女神』ことマキ・シールロさんだった。
マキさんは、馬乗りとなってナイフを僕に向けていたカレンのSCを弱体化させたのだ。そして、それと同時に洗脳も解除したのだった。
勿論、カレンは僕を刺さないとなんとなく思っていたのはたしかだが、目の端にマキさんが見えたため、なんとなく安心することができた。
「借りは早めに返す派でな、私は」
「借りですか?」
「コルの事だ。あの時私はひと暴れシルフィンを破壊しかけたが、小娘、お前のおかげで冷静になれた。改めて礼を言う」
傲慢な女神からのお礼。それが、なんか面白くて少し笑ってしまう。
「なんだ? なぜ笑う」
「いや、意外とマキさん面白い人なんだなって思って」
「なっ‼」
ちょっと顔を赤くして、何か言おうとしてが、鼻で笑って、
「そ、それよりお前の友達は大丈夫なのか?」
「あぁ、カレンですか。まぁ、今ちょっとベンチに座って休んでいますけど、きっと大丈夫ですよ」
「・・・そうか」
僕とカレンはあの後、さっきも言った通り、洗脳が解けたことで、今までの事を思い出したカレンは、僕の顔を見て何度も謝って来たが、僕はいいよ、いいよと言ってとりあえずベンチに座らせ、落ち着いたら貧民街に来て、と言い残し、僕は貧民街に向かった。
「そう言えば、お前。SCがないのだよな? 本当か?」
「はい、本当ですよ。僕これといった特徴も、特技も、性格もないんで」
「だが、皆を守りたいってそんな意志は強いと私には見えるが。それが力になるんじゃないか?」
「なりませんよ。だって僕は当たり前のことを当たり前のように言っているだけですから」
そう言って、笑う。すると、マキさんは
「そっか。まぁ、いつか見つかると良いな」
と言ってきたため、僕は、
「あの、本当にマキさんですよね?」
と聞くと、僕の方を見て、
「・・・何言ってるんだ、お前は」
と呆れた目で見て来た。僕は、
「だって、傲慢じゃないから」
「あれは、戦闘の時だけだ」
「フウさんの時は・・・・」
「あいつは、単にむかつくからな。あと、お前の事を気に入ったと言っただろ。だから・・・」
とマキさんは何かを言いかけ足を止める。僕は、
「どうしました?」
と聞くと、口に人差し指をあて、そこに落ちていた石ころを放り投げた。すると、
ズドン‼
岩が目の前に落ちた。
「良く気付きましたね」
という僕を見て、まぁなと呟いた後、
「・・・・囲まれたようだ」
「え?」
と僕が返したその時、
「よぉ、よく気が付いたな」
「・・・けけけ、これは傑作」
「はん‼ 一瞬で終わらせてやらぁ‼」
とそれぞれ、大剣、ナイフ、拳銃を持った男がマキさんの方に三人。
「さっさと終わらせて帰ろうぜ」
「こっち来ないで、あなた達臭い」
「暴れてぇ、暴れてぇ」
とそれぞれガントレット、双剣を持った男二人と小さな盾に中距離向けの銃を持った女が僕の方に三人現れた。
そして、そんな敵を見て僕に言った。
「小娘。貴様の実力を信じ、ここは私に任せてボスを倒してこい」
「え? でも・・・」
「大丈夫だ。お前は私を認めさせた女だ、胸を張れ。そして、何より・・・」
と言った後、マキさんは、
「遅いぞ‼ 何分遅刻している‼」
と叫ぶ。すると、
「あぁ、すみやせん‼ 姉御‼」
と急にハンマを持った大男が上から落ちてくる。
「どちら様ですか・・・」
僕はそう聞くと、マキさんは
「私のサイドキック。私の言ったもう一人の助っ人で私の相棒」
そう言って、僕の方を見た。




