第三十二話 助っ人登場と風の武器
「その女の子から離れなさい。お姉さんが相手をしてあげる。・・・まぁ、近距離戦闘は苦手だけど」
「・・・あなたは誰ですか?」
マフラーを付けた女は私にそう言った。
「私? 私はただの通りすがりの狙撃手よ」
「・・・邪魔しないでもらえますか?」
「嫌よ。あなたは悪い人なんでしょ? そんなの、このお姉さんが許しません」
「・・・気色悪いです」
そう言って女はため息をつき、
「・・・・もういいです。必要な情報は手に入れましたし、私もやることがあるので・・・・では・・・」
「は? ちょっと、あんた・・・・・」
ボンッ‼
そう言って、私の静止も聞かず、煙球を床に叩きつけ姿を消した。
(たく、何だってのよ・・・)
(あの? 大丈夫ですか?)
(え? 大丈夫も何も私は戦って・・・・)
私は急にどこから質問されて、少し驚きつつ、周りを見渡した。
(誰よ、この声・・・)
(あぁ、すみません、いきなり。目の前にいる僕です)
そう言われ、顔を上げると、さっき女に刀を向けられていた黒髪のフードを被っていた女の子が自分を人差し指で指し示していた。
(これは僕のSCです。すみません、耳が聞こえないので)
(そか、なるほどね・・・)
そして、当たり前ながら、
(あの・・・あなたは誰ですか?)
と聞いてきた。だから、私は笑って、
(誰って、さっきも言ったけど、私は通りすがりの狙撃手よ。このギルドの助っ人を頼まれたね)
と答えた。
風
(・・・はぁ、はぁ、なんだ、こいつ・・・)
黒いマリンキャップを被った男と最初に戦った時は弱かったのに、戦っていくうちに男の攻撃や動きは徐々に徐々に速くなっていき、そして、威力も重くなっていた。
「おら、どうした? もっと来いよ‼ こんなもんじゃないんだろ⁉」
「・・・当たり前だ‼」
そう言って私は思いっきり息を吸い、そして、
「風神の竜巻‼」
と息を一気に吹き、竜巻を作った。
「・・・おいおい・・・」
そんな男の声が聞こえたかと思うと、私の後ろに急に現れて、
「こんなもんか? 七鬼さんよぉ!」
「・・・くっ‼」
私は右を向き、思いっきり息を吹いて、攻撃をかわした。
「『強欲』というから、どれだけ強い欲を持って戦っているかと思ったが、とんだ期待外れか」
「よく知ってるな、私の事。まさか、ストーカーか?」
「敵の情報は仕入れておくのが当然だろ」
「そうか・・・なら、勿論、この事も知ってるんだろ? 私の武器の事も・・・」
「武器? あぁ、さまざまな武術を使うっていうあれか?」
私は男の質問に対して何も答えず、ただポッケトに手を突っ込んだ。そして、
シュッ‼
「・・・っ‼」
男の横腹に傷をつけた。
「・・・な、いつ攻撃した・・・」
「さっき」
私はそう答えてニヤリと笑った。
傲
(・・・ふう)
私は奇襲を仕掛けるため、船で回り込んでいる途中、奇襲に気付かれたのか、攻撃され、船は大破。私は気が付けば海の上でぷかぷか浮いていた。
『あの七鬼の奴はどこだ‼』
『何、行方不明なのか⁉ 探せ‼』
なんて声が聞えたから、相手をするのも面倒だったため、水の中に潜ってやり過ごした。
そして、今なんとか泳いで、陸地についた。
(敵の口ぶりから、おそらくあいつらは捕まったな)
と考えつつ、周りを見渡すと、どうやらここは都市の工業地帯のようだ。見慣れた船がたくさんとまっていた。そして、皮肉なことにその都市の近くに貧民街は存在した。なぜなら、貧民街の奴らは、都市が出す廃棄物で生活しているからだ。気色悪い連中である。
私は都市を少し歩き、貧民街の入り口付近まで来て、足は止まった。なぜなら、山吹ミノタロスのギルドの二人が死闘を繰り広げていたからだった。




