第三十話 カリスマ的支配と友情
(・・・・)
目が覚めたら周りはサビ臭く、目の前は、そこに明かりがないからか、真っ暗な場所だった。
ただ、身体が全く動かなかった。そこからなんとなく察した。
ここは外ではない。おそらく、敵のアジト『貧民街』なのだと。
だから、目の前が暗いのは真っ暗だからではなく、目隠しでもされているからで、身体が動かないのは、拘束されているからだろうと現状を察した。
そんなことを考えていると、
「・・・お目覚めかな?」
そんな聞きなれない声が聞えた。
「・・・誰ですか、あなた」
「私に名前などないが、仲間からはロードと・・・そう呼ばれている」
「ロード? あなたがボスですか‼」
モンスターの名前で『ロードリーザ』というのがいたので、その『ロード』の意味を調べたことがあった私は、そのロードという言葉の意味が理解できた。
「まぁまぁ、そんなかっかするな。落ち着いて話そうぜ、お嬢ちゃん」
そう言って、ガチャリと目の前で音がなった。
「・・・なぁ、嬢ちゃん。なんで君たちは俺たちを倒そうとするんだい?」
「質問を質問でお返ししますが、なぜあなた達は私達のギルドを滅ぼそうとするんですか?」
「ふぅん、そうだね。僕たちの目的に邪魔な存在だからかな」
「それと同じですよ。私達だって」
「そうかい、なら別の質問をしよう。君は好きな人がいるかい? 大切な人でもいいが」
「い、いたらなんですか」
そういうと、鼻で笑ってなるほどねぇ、と言った。そして、
「そいつが、殺されたら。どう思う?」
「・・・私の仲間に何する気だ‼」
私はそう言って無理やり固定された体を動かした。すると、あぁ、怖い、と言って、
「何もしないさ。俺はな」
「『俺は』って、どういう・・・」
「まぁ、聞けよ。人の話は最後まで」
そう言って、ロードと名乗った男は話し始めた。
ただ、この男と話していると私の気持ちや感情が何かに吸い込まれていくようで妙に恐ろしかった。
◆
僕は必死に戦っていた。しかし、全く刃がたたなかった。
クラウンは攻撃を避け、素早くカウンターを送ってくる。たとえそれが死角からの攻撃でもだ。
(これじゃ、勝てない)
僕がそう思った時、ふとクラウンはちらっと横を見て、ニヤリと笑い、思いっきり下がった。そして、
「私はここまでだ。生憎、暇じゃないんでねぇ。んじゃぁね」
「お、おい、待て‼」
そう言って、追っかけようとした時だった。
逃げた方向に、なぜかいるはずもない奴がいた。そいつは、クラウンとすれ違っても、捕まえることはなく、ただただ、ぼーと立っていた。
(・・・なんで・・・)
僕はそう思い、
「なんで捕まえないんだ、カレン‼」
そう言って、そこで黙って立っていた、いるはずもない人物であるカレンに向かってそう言った。すると、カレンは首を傾げて、
「何言ってるの? エマ。というか、私達何をしていたのでしたっけ?」
「何って・・・・アウトロー組織の『INOW』を捕まえに来たんだろ‼」
そう言うと、さらに腕を組んで、
「アウトロー? それから、IKNOWってなんですか?」
「カレン・・・君は何を・・・」
そこまで言って思い出した。
シルフィンに行く前にギルドでフウさん達が話していた。『記憶を消すSC』。もしかしたら、カレンは捕まってそうなったのかもしれない。
そんな可能性を考えつつ、僕はカレンに叫ぶ。
「何って‼ この先にいる敵を倒しに来たんだろうが‼」
と。すると、クスクスと笑って、
「エマったらおかしなことを言いますね。ここには何もいませんでしたよ。あ、そうだ。思い出しました。ここには貧民街のパトロールに来たんでした。しかし、何も異常はありませんでしたよ」
そう言って僕を見たカレンに僕はもうダメだと思い、
「もうわかったよ。けど、僕もこの先に用事があるんだ。通してくれ」
そう言って、押しとおろうとしたその時、
シュッ‼
気が付けば僕の右の頬から血が出っていた。びっくりして前を見ると、口に手を当ててカレンが、
「あ‼ ごめんなさい、エマ。身体勝手に。ただ、なぜでしょう。あなたにはここを通って欲しくない。というか、通してはいけないと急に命令が下されたような気がして。おかしいですよね。ただなぜか。今はあなたを殺してでもここを通らせてはいけない気がする。だからどうしても通りたければ・・・」
カレンはそう言って、前を向き、両手にナイフを持って、
「・・・・私を倒してから言ってください」
と言い放った。その時のカレンの目は輝いておらず、ただ暗闇に覆われたような沈んだ目をしていた。




