第二十六話 作戦と決戦
(・・・・ん?)
目が覚めたら、見慣れない木の天井だった。
起き上がると、青いカーテンが閉まっていて、僕の膝ではカレンが寝ていた。
(そうか、僕はあの女に・・・・)
体を見ると、傷が治っていた。おそらく、カレンが治してくらたのだろう。
(という事は・・・このカレンは・・・)
そう思い、もう一度カレンの方を見ると、
「エマ‼」
そう言って抱き着いてきた。その瞬間僕はいつものカレン、つまり表のカレンになったという事がわかった。
「エマ‼ 心配したよ‼」
そう言って、僕はカレンのフカフカした柔らかい、肉まんみたいなぶつに顔が当たった。
「・・・・苦しいよ、カレン」
そう言って、窒息しそうになっている僕を見たカレンは、あ、ごめんと僕を放した。僕は自分の胸を触って、ため息をついた。
「もう、ビックリしたよ。目を覚ましたら皆、倒れているんだもの」
「あぁ、僕もビックリしたよ。主にカレンの成長速度に・・・」
そう言う僕に、え? とカレンは首を傾げた。僕は、まぁいいや、と呟き、
「それで、今どんな状況?」
と聞くと、カレンは複雑な表情を浮かべて、
「さっきも言ったけど、皆気絶していて、中にはもう戦えないくらいの傷を負った人がいるんです」
「ラット達は?」
「あぁ、私達のグループは私が治せるほどの傷だったんですが、他のギルドの皆さん、黄金の大蛇と追い風シルフィンの方々は二、三人ダウンして、リタイアしました」
「もう戦えないってこと?」
「はい。そう言うことです」
「・・・そっか」
僕はそう言って、ベットから降りた。
「ところで、ここは?」
僕は、ベットの横にあった棚の上に置いてあった自分のナイフを持ち、ポケットに入れて、カレンにそう聞いた。
「ここは、シルフィンの医務室です。治療は回復系のSCを持った人たちが対応しました」
「そか」
僕はそう軽く返事を返し、壁に掛けてあったジャンバーを羽織る。そして、医務室を出ようとした僕に、
「ねぇ、エマ」
とカレンが話しかけて来た。僕はカレンを見ると、
「ん?」
「私達、勝てるかな?」
とカレンが心配そうな目で僕を見て、そう聞いてきた。心配する気持ちはわかる。たかだか一人に代表者全員が倒されたのだ。そんな絶望的状況で不安にならない奴はラットみたいな冷静な奴くらいだろう。でも、
「なんとかなるでしょ」
僕はそう笑って答えるしかなかった。
僕はこのチームのリーダーだ。そして、カレンの友人だ。だから、友人として、同じチームメイトとして、不安にさせたらダメだとそう思ったのだった。すると、カレンは、
「そう言うと思った」
クスリと笑ってそう返すのだった。
「やぁ、小娘。調子はどうだ?」
「え、えと・・・・」
「おいおい、私の名前をもう忘れたのか?」
そう話しかけてきたのは、黄金の大蛇の七鬼『傲慢な女神』のマキさんだった。
「いや、ちょっと反応に困って」
「反応? この私に話しかけられたからか?」
そう言って豊満な胸を張り、腰に両手をあて威張るマキさんに僕は頬を掻いて苦笑すると、
「おい、マキ。作戦会議の途中だぞ」
と後ろから、フウさんが現れて、蹴り飛ばした。マキさんは突然蹴られたことにより、前から倒れて顔をぶつけた。
「痛いではないか‼ 顔を怪我したらどうする⁉」
「うるさい。集中していなかったお前が悪いだろ。というか、そんなお粗末な顔が怪我したところで・・・」
「なんだと?」
「ん?」
そう言っていがみ合う二人を見て、まぁまぁと間に入ろうとした時、
(・・・仲いいよね、この二人)
「いや、どこが・・・」
僕は突然声をかけられ、驚き、周囲を確認すると、横でフードを被ったコルが手を振ってこっちを見ていた。
(えっと・・・)
僕が戸惑っていると、クスクス笑って、
(ためでいいよ、エマちゃん)
と言ってきた。だから僕もわかったと頷いた。
(無事気が付いたみたいだね)
そう声をかけて来たコルに僕は、
(まぁね。そっちは二、三人やられたんだって?)
(うん。運動神経が元々良くて、それが強化されて、身体が温まれば温まるほど加速するっていうSCを持ったミリアムって女の子と、赤い眼鏡のイヨイって女の子と、暑苦しい熱血馬鹿がダウンした)
(そっか。それで今何にしてるの?)
(作戦会議)
そう言ってテーブルの上に島の地図が置かれていた。僕がテーブルまで近づいていくと、
「お、エマちん。目が覚めたんやな」
そう言って、右手を上げて声をかけて来たのはアカネ達だった。
「今な、作戦聞いとったとこなんやよ」
「へぇ、どんな作戦なんだ?」
「あぁ、それは俺が話すよ~」
そう言って出てきたのは、シルフィンの七鬼、アメさんだった。
「は~い、そこで仲良くケンカしている二人もこっち来て~」
「「誰が仲良しだ‼」」
「え? 何だよ~、面倒だな~」
とやる気をなさそうに、だるそうにアメさんが答えた。
「アメさん。説明は俺がやりましょうか?」
そう言って現れたのは、コールスだった。カレンの肩がピクリと動く。手を見ると、思いっきり拳を握っていた。我慢してるなと思いながら、とりあえず見て見ぬふりをした。
一方アメさんはというと、
「あ~、んじゃ、お願い~」
そう言って、七鬼のプライドはないのかというぐらい、あくびをして奥の部屋へ消えて行った。
「さて、んじゃ、作戦を説明する。まず、戦場はここ、貧民街だ。ここがアジトだと思われるからな」
「私はずっと気になっていたのだが、なぜそう思う?」
マキさんがそう聞くと、
「ここにいるとも思われる理由は二つ。一つは軍によってそれらしき人物が目撃されたこと。もう一つは落とし物があった」
そう言って一つの資料を指し示した。その資料に写っていたのは財布だった。
「始めは小さな子が拾ってギルドに提出したのですが、誰も取りに来ないし、気になってそういうのが専門のSCを持った軍の奴が調べたら、持ち主がまさかのIKNOWの奴だったってわけです。そして、落ちていた近くには貧民街がありました。つまり、ここだという事になったんです」
「そうか、わかった。説明御苦労」
「ありがたき幸せ」
そう棒読み気味にコールスは言ったあと、咳払いをし、
「さて、話に戻るが、戦場はここになる。ただ、皆が一斉に攻めても勝ち目がないだろう」
「いや、勝て・・・」
「さっきの状況でまだそれを言えるか?」
アカネの言葉を遮ってコールスはそう言った。
「だから、二手に分かれる。いや、後衛も含めれば三手か」
「ん? というと?」
「まず、正面からの突破を試みる人達。これを、七鬼の皆さんと他五名」
「正面からの突破って・・・」
「話は最後まで聞け、カレン・デュアル」
「・・・・は、はい」
そう言って、コールスは地図上の海を指した。
「ここから、奇襲を試みる奴。四名。あとは後衛だ」
「・・・奇襲・・・か・・・」
(僕は後衛かな)
そう言ったのはコルだった。
(聞いてたのか?)
僕がそう聞くと、
(うん、マキが教えてくれたんだ)
と言った。僕は頷いて、
「えっと、コルは・・・・」
と言いかけると、
「後衛だろ、わかってる」
とコールスに返された。そして、
「五分で決めてくれ。そんで決まったら、教えてくれ。それが決まり次第、決戦開始だ」
以上と言って、コールスは奥の部屋へと歩いて行った。




