第二十三話 ギルドの代表メンバーとその自己紹介
「・・・おい、いつまでそうやって俺にケンカ腰で接してくるつもりなんだ? 俺もいい加減イライラしてきたのだが?」
「は? なにその被害妄想。誰がお前なんか見るかよ。海賊は帰ってどうぞ」
「・・・ほぉ」
「なんだよ」
僕は、話しかけてきた女の子の所へ向かおうとすると、またカレンと銃の男のにらみ合いが始まり、やがて、ナイフと銃を構えだした。
「やんのか?」
「お前がやると言うならな。つまり、売られたケンカは買うってことだっ‼」
と銃を発砲。それにカレンもナイフでガードし、斬りかかる。
僕は慌てて、止めようとすると、
「そこどけ、エマ‼」
とフウさんが突風を起こす。そして、
「小娘、邪魔だ」
と突風を七鬼『傲慢な女神』マキ・シールロが消した。
「この・・・!」
「はんっ‼」
フウさんは走って、拳を振り上げ、それをマキさんも鼻で笑って迎え撃とうと、駆けだしたその時、
「そこまで‼」
ドシンッ‼
そう言ってムキムキの男が現れた。
「マスター、オクサム・オバム・・・」
フウさんはそう言って、マキさんの元へ向かっていた足を止めた。それに、鼻で笑って、
「マスターだろうが、なんだろうが、SCを弱めれば‼」
そう言って、マキさんはSC『自尊心強化』を使った。しかし、
「・・・?」
何も起こらなかった。マキさんはそれに、
「どういうことだ・・・?」
と焦っていると、
「あぁ、簡単な話だ。我がSCはたしかに『筋力強化』であらゆる身体の筋肉を強化する能力だが、この肉体自体は日々鍛錬を積んで得た肉体なんだ。だから、弱体しても見た目が変わることはないんだよ。パンチや蹴りの威力はすこし落ちるけどね」
そう言って、にっと笑った。
「・・・という事で、自己紹介を始めようか」
互いのギルドが睨み合い、カレンやフウさんがケンカを始め、それを見かねたシルフィンのギルドマスター『オクサム・オバム』が身体強化系SC『筋力強化』でケンカをなんとか終わらせて、そう言った。
「まずは我がギルドから紹介しよう。まぁ、そこで横になって寝ているのが、我がギルドの代表、怠惰な蛇神、アメ・シグマ。SCは身体強化系『柔軟強化』だ」
「よろしく~」
「そして、最近は言った期待の新人、知識系SC『操風』コールス・ウェイク」
「よろしく頼む」
それを聞いたカレンは鼻で笑って、期待の新人と呟いた。
「そして、感情系SC『守護心』アルミルド・アルケイ。彼も期待の新人だ」
「よろしくお願いします」
そう言って、大きな盾を持って現れた眼鏡をかけた男をみて、僕は、
「まさか、君もいるとはな」
と言った。なぜなら、その男は初依頼の時にいた、大盾を持った男だったからだった。
「そして、感情系SC『喜怒哀楽』の楽が特化された幸運少女、サナ・スーロ」
「こんにちは~」
と手を振ってそう言った青い帽子をかぶった金髪の女の子に、アカネは首を傾げて、
「強いんか? それ?」
「まぁ、行動を共にすればわかるよ。彼女の強さは」
とアカネに、サナはそう答えた。
「そして、最後に身体強化系SC『胸筋強化』ソライ・ナイム。彼女は空を飛ぶことができる」
「こんにち~わわ‼ よろしく‼」
わはは、と笑ってそう言ったのは、小柄で赤いキャップを浅く被った茶髪の女の子だった。
「以上五名が代表メンバーだ」
「んじゃ、次は私がするとしよう」
そう言って、黄金の大蛇、七鬼『傲慢な女神』こと、マキ・シールロが前に出て紹介を始めた。
「まず、私。ギルド『黄金の大蛇』代表七鬼『傲慢な女神』マキ・シールロ。SCは感情系SC『自尊心強化』で、相手のSCの力を弱体させる。そして・・・・おい、お前達、私に自己紹介させるつもりか?」
そう言うと、マキさんの後ろから五人、姿を現した。
「まず、俺から‼ ボウ・オメイヤー‼ 感情系SC『熱血』‼ 俺の炎は全てを燃やす‼」
そう言って、赤い髪のボウと名乗った男はメラメラと燃えながら自己紹介した。そのせいかギルドの中が妙に暑かった。
そんなボウさんの頭に暑苦しいと身長の高い黒髪の女の人が手刀を叩きつけて、
「私はミリアム・メリアム。SCは身体強化系SC『加速』っていうSCで、身体が温まれば、温まるほど、スピードが加速するSCさ。まぁ、今回だけかもだけどよろしく」
と言うと、
「もぅ、そういうのは良くないよ‼ きっと今後もお世話になるかもしれないんだからね‼」
と人差し指を立て、ショートパンツをはいた黒髪の女の子がミリアムさんに注意すると、ぺこりとお辞儀して、
「僕の名前はアイソルト・メリアム。さっきのミリアム・メリアムの弟です。SCは身体強化系SC『自己治癒強化』です。よろしく‼」
と自己紹介を・・・
(え! 弟‼)
僕は思わず、叫び出しそうになるが、今後僕が自己紹介した時に同じことを言われるかもしれないので、なんとか抑えるが、
「え、男なのかよ」
とタクトが呟いたため、俺が手刀で横腹をついた。
そして、その横にいた赤い眼鏡をかけた女の子が本を読みながら、
「・・・イヨイ・サナ。身体強化系SC『発想』。主にギルドに残って、作戦をたてたい。よって、参謀を志望する。以上」
と自己紹介した。すると、
「おっと、お前はこいつらの自己紹介が終わった事を、教えないといけなかったな」
とマキさんが、さっき僕に話しかけて来たフードを被った少女を見ると、少女はコクリと頷き、
(コル・ソニアだよ)
と口は開いていないのに声が聞こえ、みんな口々に『誰だ?』とか、『どこにいる?』と慌てていた。すると、
(ごめんね。先に謝っておくけど、僕生まれつき耳が聞こえないんだ。だから、感情系SC『友好』って能力で、皆の頭の中に話しかけている。大体二十人くらいはこうやって話すことができるかな。ちなみに僕もギルドに残って、イヨナの指示をこうやってみんなに流したいって思っているかな)
そう自己紹介が終わると、
「はぁ? なんだそれ。耳聞えないとか戦力外じゃねぇか」
「ギルドに残って指示とかいらねぇから」
などとシルフィンの奴らが、ブーイングしていた。そして、そう言われるが、何を言われているのかわからず、周囲の表情でしか判断できないコルさんは苦笑いし、頬を掻いた。そんなコルを見て、
ドンッ‼
僕は壁を思いっきり拳で叩いた。そして、
「山吹きミノタロス所属。僕の名前はエマ・ドリーム。女。SCはない」
シーンと静まり返る中、僕はそう言って、自己紹介をした。すると、
「SCはない?」
ぶははは、とみんな一斉に笑った。
「なんだよ、どっちのギルドからも戦力外しかいないのかよ‼」
「まじか、大丈夫か?」
などと罵倒された。そんなシルフィンの奴らに僕は鼻で笑って、
「でも、選ばれなかったってことは、君らは、それ以下ってことだぞ」
と言った。すると、またシーンと静まり返った。いや、約一名、ぷっと吹いて、ゲラゲラ笑っている人がいた。それは、
「おい、小娘。気に入ったぞ。『傲慢』の称号を継承してやってもいいくらいに」
と笑い過ぎて流れた涙をマキさんは指で拭って、そう言った。僕は、
「それは光栄ですが、称号はいりません」
とそう言うと、そうか、それは残念とため息をついた。そして、
「さてさて、このまま罵倒が続くようだったら、代表とか辞退して戻ろうと考えたが、気が変わった。そうだな、お前でいい。散々馬鹿にしていたよな」
そう言って、さっきまで罵倒していた奴の一人を指さしてそう言った。
「お前が、このコルを倒せたのなら、コルの代わりにチームに入れてやってもいいぞ」
とニヤリと笑ってそう言った。すると、まじかと笑って、前に出た。
「仕方ない、せめてものハンデだ。SCは使わないでやるよ」
と言って、ナイフを抜いた。
ちなみに、これは飽くまで確率だが、『ナイフ』を使う奴のSCは大抵、身体強化系のスピード系のSCが多い。例を出すなら、カレンがそうだ。だから、おそらくこの男も身体強化系のスピード系のSCだろうと僕は推測した。
「いいのか? 負けるぞ」
「あぁ、いいさ。女だしな」
とニヤリと笑ってそう言った。すると、そうか、そうかと言って、マキさんはコルさんを見ると、コルさんは頷いて、前に出た。
僕は心配になり、
「大丈夫かな?」
と近くにいたラットに話しかけると、ラットは、
「あぁ、お前知らないんだっけ」
とラットは僕の方を見てそう言った。僕はえ? 首を傾げると、
「まぁ、見てればわかる」
と言って、また前を見た。
結果は、コルさんの圧勝だった。
コルさんは、男の攻撃に対し、先を読んでいるかのようにかわし、そして、腹や脛、胸に攻撃をし、男を吹き飛ばした。しかも、一番すごいのは眼を瞑ってそれをやっていた事だ。すると、そんな勝負を見て、マキさんは鼻で笑い、
「腕立て伏せ二百回、上体起こし三百回、一周一キロくらいの私達のギルドを毎日五十周」
と言った。戦った男がは? と首を傾げると、
「日々の日課だよ。こいつの」
とコルさんを指さして、そう言った。
「ただでさえ、耳が聞こえないってハンデがあるんだ。そうやって死ぬ気で努力して、こいつは依頼も受け、あらゆる対人戦で経験を積み、『暗視ボクシング』っていう目を瞑って、感覚だけで人を倒す技を身に付けた。こいつは努力家なんだよ。いつも見下している私も見下せないくらいのな」
そう言って、倒れている男の元に近寄り、
「そんな奴を笑うくらいだ。お前もかなり努力してきた、そうだよな?」
と言うと、男は怯えて、首を横に振った。すると、
「なんだ、口だけか。なら、二度と口を開くな」
と言った。すると、ゆっくり男は頷いた。
そんなやり取りが行われた中、突然、
「にゃははは、面白い勝負だったよ、君達‼」
という笑い声が僕の後ろから聞こえ、振り返ると、そこには謎の女の人が、壁に寄りかかって、こっちを見ていたのだった。




