第二十一話 三ギルドと共同戦線
「それでは、エマさんとラットさん、カレンさん、タクトさん、そして、アカネさんのチーム『WISH and DREAM』の皆さんと七鬼フウさんの六人構成で申請しますがよろしいですね?」
昨日、フウさんに『一緒に行ってくれるよね?』という脅しめいた誘いを受けた僕とカレンは思わず頷いてしまい、それを翌日である今日ラットに言うと、はぁ、というため息ともに、
『まぁいいけど』
と呆れたような視線を向けて、そう言った。そして僕らとフウさんが揃ったことを確認したサキさんはそう言うと、
「んで、敵の情報を教えてくれないか? サキさん」
とラットが言った。それに、あ、そうですね、と言って一度ギルドの奥にある資料室へ行き、資料の入った大きなバインダーを持ってきて、ペラペラとページをめくり始めた。そして、
「今回のターゲット、『IKNOW』は八人グループです」
「八人か・・・それに対してなんで俺らは協定を組んで戦うんだ?」
「つまり、それだけの強さという事です」
そういうサキさんにラットは首を傾げると、
「・・・七鬼バスター」
そうフウさんが呟き、それにサキさんは頷いた。
「七鬼バスターってなんですか?」
僕はそう聞くと、
「『七鬼バスター』というのは、アウトロー『IKNOW』の別名です。一人一人が七鬼と同じ力か、それ以上の力を持っているんです」
そう言うと、フウさんも腕を組み、
「実際、私も依頼の時その一人と戦ったことがあるが、互角の強さで、その時受けた依頼はそいつの妨害により、失敗した」
「そして、何より強い理由は、未知の区域、『貧民街』を縄張りとしているからです」
「貧民街だと・・・」
貧民街は、島の南側の山の中にある僕らのギルドから見て、反対の方角にある街だ。そこは国に税を納めていない街。故に無法地帯。僕らは『未知の区域』と呼び、依頼で入った奴はいるが、帰って来たものは指で数えられる程度しかいない。
そして、その帰って来た奴らは記憶が抜かれていて、何のことだ? とか、そんなことあったか? と言って、首を傾げるのだった。
「なんで貧民街が縄張りだと分かったんだ?」
「島の軍が調査してわかったんです。その『IKNOW』のメンバーらしき人物が貧民街に入っていくのを」
「つまり、戦場は貧民街になるってことか」
「そういうことです」
サキさんは頷いて答えると、ラットは
「他に情報はないのか?」
とそう聞いた。すると、サキさんが答える前に、フウさんが、
「あるわけがないだろ。貧民街に入った奴らは帰ってこないか、記憶を消されているんだぞ」
ラットの横腹を手刀で突いてそう言った。それに苦笑して、サキさんは、
「そうですね、少なからず記憶をいじるSC所持者はいるでしょうね」
と言った。ラットは突かれた横腹を摩りながら、フウさんを見て、
「ちなみに姉貴の戦った奴はどんな奴だった?」
「お前みたいな奴」
そう言ってアカネを指した。アカネは人差し指で自分を指し、
「え? うち?」
「あぁ、身体を木だか、石だか変えたりしてたな」
「それって・・・」
「身代わりの術。うちの国のもんかもしれへん」
そうアカネはあごに指を当て、そう言った。僕は、
「そもそも、何が目的なんでしょうか」
とサキさんに聞くと、腕を組み、
「さぁ、私にも。ただ、噂では全ギルドを島から排除して、島を侵略しようと考えているとか」
と人差し指を立ててそう言った。それを聞いてタクトは、鼻で笑い、
「王国の問題とかはどうするんだよ、それ」
「さぁ、そこまでは」
そう言って、サキさんは首を傾げた。すると、フウさんは手を叩いて、
「まぁ、詳しいことはとりあえず、三ギルドの集合場所についてからに考える事にしよう」
と提案した。僕は、
「そういえば、集合場所ってどこですか?」
と聞くと、フウさんはあぁ、と言って、
「ギルド『追い風シルフィン』だ」
と答えた。
「来たか、山吹きミノタロス」
ギルド『追い風シルフィン』に到着した僕らに、ギルドの今回の作戦の参加者だと思われる男がそう言って出迎え、僕はその男を見た事があるなと思っていたら、真っ先にカレンが前に出て、
「なんで、お前がいるんだよ‼」
と男の襟を掴んでそう言った。




