第二十話 フウとラット
新章スタート‼
「あ、エマとカレンじゃん」
「あ、こんにちは‼ フウさん」
今日はチーム活動を一旦休みにし、僕はカレンと街で買い物をしていると、たまたま、フウさんにすれ違った。
「ん? 何? 君らデート?」
「そんなわけ・・・」
「そんな所です‼」
僕は否定しようとすると、カレンが勢いよく前に出て、そう言った。
「え? カレン。あの僕ら女の子同士だよ?」
「え? エマ。私に壊せない壁があると思う?」
「それってどういう・・・・」
「性別の壁なんて・・・・」
「カレン~‼ 戻ってこ~い‼」
ふっとか言って、鼻で笑ったカレンに僕は突っ込みを入れた。そんなやり取りを見て、フウさんはクスリと笑って、
「やっぱり仲がいいね、君ら」
と言った。
「へぇ、ラットってそんなヤンチャだったんだ‼」
「あぁ、あいつはよく路地裏行ったりしてさ。不良共とよく遊んでたよ」
僕とカレンとフウさんは一緒に歩いて行動をともにしていると、歩いていた通りの先に喫茶店『コフ』が見え、休憩することにした。
「そんで、私は家の手伝いをサボるあの野良を注意しに、路地裏に行ったんだよ。そしたら、なんか路地裏の奴らと仲良くなってて、束になって掛かって来たんだよ、『俺らの仲間に手を出すな』とか言って」
「え、それでどうしたんですか?」
「『知るか、黙れ』ってボコった」
そう言って笑うフウさんに僕とカレンは苦笑した。
「でも、まぁ、あいつには辛い思いさせてるんだよな。いろいろと」
「それってどういう・・・・」
そう聞いて、僕は、はっと思い出す。
「どうしたの? エマ」
「聞いたのか? あいつの口から」
フウさんの問いに僕はコクリと頷いた。
そうか、そうかと頷きつつ、首を傾げて話についていけないカレンに、
「いや、まぁ、なんだ。私らの両親もう死んでんだよ。父親は私が七歳の時、母さんが十二の時か。その後、母方の祖父母に引き取られたから生活は別に困んなかったのだけど、ラットは自分のSCを制御できなくてな。視野に入れたもの全てを凍りつかせてしまった。そのせいでよくいじめられてたんだ。んで、まぁマスターにラットは声かけられたとかで、ギルドに入って、その勢いで監視役として私も入ったんだけど。でも、もう自分のSCが嫌になってぐれたんだよ」
「でも、ラットはお母さんに『そんなお前でも笑っていける世界を作れるといいな』って言われて、そんな世界を作るために頑張ってるって」
「あぁ、あいつの夢はたしかにそれだ。けど、私がいくらぶん殴っても、あいつの野良行為がなおることはなかった」
「え? んじゃ、どうしてなおったんですか?」
「あぁ、それが私も不明でな。でも、お前らもよく知るであろう『タクト』ってやつと一緒に行動するようになってから、野良行為はしなくなったんだよな」
私はへぇと呟き、頷いた。
「まぁ、そんなこんなで今のラットが出来たんだ。まぁ、これからもあいつとは仲良くしてやってくれ」
「ラットさんのこと好きなんですね」
カレンがそう言うと、フウさんは頬を掻き、
「まぁ、姉弟だしな」
と顔を少し赤くしてそう言った。
「それで、話を変えるが、いいだろうか?」
「えっと、なに?」
「ギルドの仕事の話だ」
「はぁ」
急に真面目な顔になってそんなことを言うフウさんに僕とカレンはそう答えると、
「ギルドっていうのは、島の秩序を守るためにある。例えば、あの王国が攻めて来たら防衛したり、洞窟のモンスターを討伐したりっていうのが目的で作られている。だろ?」
「それは、そうですね」
「だが、それと相対するギルドがある。それがアンチギルド勢力『アウトロー』っていう集団だ」
「・・・アウトロー」
「アウトローは二つに分けられる。一つは八人グループの『IKNOW』。そして、もう一つは大規模アウトロー集団『ファーミ』。とても強い、無法者集団だ」
僕は、首を傾げて、
「それがどうしたんですか?」
と聞くと、フウさんは、
「近々このアウトローの一つ『IKNOW』との闘いが始まる。三つのギルドの約五、六人の代表者が協定を結んでな。そして、そのギルドに私達の山吹ミノタロスが選ばれた。マスターには私と、その他にあと四、五人選べと言われたわけだ」
そこまで言ってなんとなく僕は察したが、一応、
「それで?」
と聞くと、フウさんはニヤリと笑って、
「一緒に行ってくれるよね?」
と圧をかけて言ってきたため、断ることが出来ず、僕は頷いてしまった。




