第十七話 冷たい目と七鬼
「蹴り」
「はっ‼」
「ナイフ」
「くっ‼」
「回し蹴りと・・・」
「なっ‼」
僕はさっきから攻撃をことごとくかわされた。そして、回し蹴りした時の足を掴まれ、投げ飛ばされた。僕は壁に激突しながらも、
「・・・お前‼」
僕はナイフを構えて男を睨んだ。すると、
「これ以上はやめておけ。知ってるぞ、お前は無能力者だろ?」
「な、なんでそれを」
「あぁ、やっぱりそうなのか」
男はニヤリと笑った。まんまと男の罠にはまってしまった。
「クソッ‼」
僕は男にナイフを向けて、駆けて行った。そして、
「くらえ‼」
とフレイムダガーを投げつけた。しかし、
「・・・・くだらん」
そう言って、フレイムダガーを飛ばし、それをフェイクに使って男にパンチしようとした所まで予測していたのか、回し蹴りをした。僕はまた壁に激突した。
「おい、無能力者。いいこと教えてやるよ。身体強化系SC。その上位である五感系能力、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の強化だ。だが知ってるか? 人間には第六感ってのがある。俺はそれが強化された」
男は立ち上がった僕の所まで来て、
「だから、諦めろ」
そう言って、僕の首を掴んだ。
◇
「おらおら、どうした?」
「・・・くっ‼」
俺は睨みつけて足や手などの部位を凍らせるが、雷をぶつけ、その衝撃で破壊する。
「・・・勝てるわけがないだろう、俺に」
そう言って、男はポケットから二本の鎖を取り出して両手に持ち、ぶんぶん振り回した。
「だってお前はSC頼み。武器が無いんだからな」
そう言って、鎖を振り回した。俺はそれをなんとかかわし続けた。しかし、
「そうか、ならもう二本追加だ!」
そう言って、もう二本だした。俺は、
(このままだとダメだ)
と睨みつけて凍らせようとした。しかし、
「無駄だ」
と氷を鎖で壊した。そして、
バチッ‼
「・・・っ‼」
そんな音を立てて、俺の手に鎖が当たり、ものすごい痛みがはしった。
「おっと、気を付けとけ。この鎖には少しだけ電流がはしっているからな‼」
と言いつつ、計四本の鎖を振り回し続ける。ゴルドの後ろでは、たしかに雷を鎖に当てて電気を流していた。
(なぜ、あいつは無事なんだ・・・)
そう思ったが、『感情系SCは例えば私の「哀しみの霧」のように自分のSCによって悪影響を受けることはまずない』とカレンが言っていたことを思い出し、
「・・・クソ」
と俺はそう舌打ちをして、一か八か男の元に駆けて行った。そして、
「・・・ふっ‼」
と男の腹にパンチするが、
「・・・おっと」
とかわされ、また鎖のムチでうたれる。
「・・・くっ」
俺は仕方ないと、最後の手段を使おうとするが、
(・・・ダメだ。エマがいる)
俺はそう思い、その考えを捨てたその時、
「おいおい、かわしてばかりじゃ勝てないぞ‼」
そう言われ、足と手に当てられる。俺はあまりの痛さに一度転がり倒れるが、なんとか立ち直した。しかし、
「・・・っ‼」
俺はつい足を滑らせ、もう一度倒れた。そして、それをゴルドは見逃さなかった。
「アホかよ」
そう言って、バチバチと鎖のムチが当たる。
俺はふと、前を見た。すると、
「・・・エ・・・・マ・・・」
俺の目の前には、エマとその首を掴んでいたもう一人のギルドへ通信を送り、ケンカを売って来た男がいた。
それに気づいたのか、ゴルドは俺に鎖のムチをうつのをやめ、
「お前のペアももう終わりらしいぞ。残念だったな」
と言った。そして、エマは俺の方を見て、
「・・・ごめ・・・ん・・・な」
そう言って、申し訳ないといった表情を浮かべて、目を閉じた。
「エマ‼」
俺はすぐ駆け寄ろうとするが、
「・・・行かせるわけないだろ‼」
と言って、俺の足に二本の鎖を当てた。
「ぐっ‼」
俺はあまりの痛さに倒れる。一方エマは、男に首を放されてぐったりと倒れた。男は、
「あ、やべぇ。こいつ死んだかも」
と言うのに対して、
「おいおい、殺してんじゃねぇよ。後処理がたいへんだろ」
とゴルドは返した。そして、ぼりぼりと頭を掻き、
「・・・まぁ、いい。お前ももう眠れ」
そう言われ、俺の方に近寄って来た。しかし、俺の頭には、
(・・・・エマが・・・死んだ・・・?)
俺はその言葉で頭がぐちゃぐちゃになった。結局俺はなにも守れなかったのだ。エマも、姉貴も、おそらくギルドも。俺は、
「・・・・無力だ」
そう一言呟いた。その時だった。
「そんなことないと思うぞ、小僧」
そんな声が聞こえ、目の前を見ると、いつの日か見た女性が四重のにもまとめられた鎖を掴みとっていた。
「あ、あなたは・・・」
「久しいな、小僧」
デジャブ。
俺はこの間もこの女性、雪女にピンチの所を救われた。
(そう、前回もこんな感じの状況だった)
「なんだ、お前‼ どっから出てきた」
(言うな、ゴルド。俺はその言葉をあの時も聞いている)
「ここは俺に任せろ」
(俺は、またこの女性に守られるんだろうか?)
「右だ」
「・・・遅いわ」
「・・・なっ」
男が投げたナイフは壁に刺さった。
「・・・クソ‼」
男は焦ったのか、拳銃を出す。そして、
バン‼ バン‼
と何度も撃ち続ける。しかし、
「少しは、早くなったな。が、まだまだじゃ」
とかわされ続け、男の銃弾は一発も当たらなかった。その光景を俺とゴルドはただ唖然として見ていた。そして、男の拳銃の弾が切れた。
「クソが‼」
男はそう叫び、ナイフを持って雪女に駆けて行ったが、
「・・・・やっぱり、人は追い込まれると単純になるんじゃな」
そう呟いて、ギルドの中を一瞬で吹雪に変え、姿を消した。そして、
「終わりじゃ」
吹雪の中、戸惑う男の後ろに立ち、
「雪崩、雹落とし」
と手を上から下におろした。その途端、男の真上から雪の塊が大量に落ち、見る見るうちに男は埋まっていった。
「マグ‼」
そう叫ぶさけぶゴルドに対して雪女は、
「安心しろ、殺してはない。気絶させただけだ」
そう言って、手を叩くと吹雪は止み、男を埋めていた雪の塊も消えた。男はばたりと倒れ、ぶるぶると震えていた。
「さて、小僧。こいつも倒せばいいのか?」
雪女は首を傾げて、俺に聞いてきた。俺は、
「・・・やめろ、雪女」
と言った。そして、立ち上がり、
「同じ奴に、同じように助けられるなんて、そんなの。ただただ恥ずかしいだけだ」
と睨みつけて言った。すると、雪女はニヤリと笑って、
「いい眼光じゃ。いいだろう。奴を倒して見ろ。健闘を祈る」
そう言って、雪女は姿を消した。そして、
「おい、ゴルド」
俺はゴルドの方を向き、そう言った。
「なんだよ」
「お前は、俺がSCばかり頼って、武器を持ってないって言ったよな?」
「言ったが、それが・・・」
「たしかに武器はないぞ。だって、俺は・・・」
そうゴルドの言葉を遮り、少し歩いて、男が雪女に当てようとして失敗したナイフ。そして、机に刺さったナイフを抜き取った。そして、上に投げ、
カチンッ‼ カチンッ‼
と両方のナイフの金属部分だけを睨んで固め、ランスのようにし、リーチを長くした。そして、
「・・・その場で作れるんだからな」
と言ってニヤリと笑った。ゴルドはそれを鼻で笑い、
「それがどうしたよ。そんな武器で勝てるとでも‼」
と言った。そして、
「そうだ、思い出したぞ。お前はラット・カルム。七鬼フウ・カルムの弟だろ‼ お前の姉貴を倒した俺に、弟のお前が勝てるとでも・・・」
「・・・なら、今日俺は姉貴を超える」
そう言って俺は近くに転がっていたテーブルの天板を凍らせ逆さまにして、幕板の上に乗り、滑った。例えるなら、ボードだ。そして、天板を凍らせたことにより、摩擦ゼロになり、猛スピードでゴルドの所へ向かって行った。
「この‼」
ゴルドは四本の鎖を振り回す。しかし、俺は
「痛くねぇよ、そんなもん」
と笑って見せた。ゴルドは歯を食いしばりながら鎖をもう二本増やした。俺はため息をしながら思う。
(・・・いい加減、この勝負もうんざりだ)
と。戦い疲れたとか、面倒だとか、そんな気持ちを通り越してもう飽きたのだった。だからもう、
「終わらせる‼」
そう言って、俺はゴルドにランスを投げつけた。ゴルドは
「当たるか、こんなもん‼」
と雷で破壊した。だが、
「あぁ、知ってるよ‼」
「・・・‼」
さっき投げたのは一瞬だけでも目くらましなればいいと思ったからだった。これはまだ手順一。手順二は机を乗り捨て、ゴルドに当てること。
「・・・く‼」
男はそれを避けた。それさえなんとなくわかっていた。そして、手順三。それは、
「くらえ‼」
そう叫び、ゴルドがそれに反応するより早く、俺は後頭部へ全力でもう一方のランスをぶち当てることだった。というか、これが始めから狙いだった。
ゴルドは脳震盪を起こし、気絶したのだった。




