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WISH and DREAM  作者: 樋夜 柊
犬猿のギルド編
18/55

第十六話 悪魔の裏と怒りの拳

(・・・やばい)

 エマにはかっこつけて、『すぐ追いつくから』と言ってみたものの、前の男は相当強かった。

「どうした? 最初の勢いは~‼」

「・・・あぁ‼」

 私は両手にナイフを持って、男のもとに駆けて行った。

「・・・よいしょ‼」


 バンッ‼


 そんな銃声が急に聞こえたかと思ったら、銃弾が横腹に当たっていた。

「・・・くっ‼」

 私は横腹抑え、後ろに跳び、一度退いた。そして、男の手にはさっきまで筆が握られていたはずなのに、拳銃が握られていた。

「・・・あなた、SCはなんですか?」

「さぁ、俺、ライ・トールスのSCはなんでしょうか‼」

 そう言って、拳銃を放り投げると、後ろポケットから筆を出し、パレットに押し付けた。そして、空中に素早く何かを書いたかと思うと、

「・・・なっ‼」

投げナイフが私の所に急に飛んできたため、ナイフで叩き落とした。

「ほら、次々来るぞ‼」

 そう言って、銃弾や投げナイフがどんどん私の方へ向かって飛んできた。

「おら、そんなんじゃ守れねぇぞ。・・・・そうだな、次はあの俺らの方のギルドへ向かった女を倒しに行くか」

「・・・それだけは・・・させません‼」

 私は、ライ・トールスと名乗った男のもとへナイフを持って駆けて行った。

「そうそう、そうこなきゃ‼」

 そう言って、筆をパレットに押し付けたかと思うと、また空中に素早く書き出し、どこからともなくライフルを出し、連射して撃って来た。私はそれをナイフで防御したり、かわしたりして近づいて行った。

 そして、

「・・・・これで、どうだ‼」

「・・・っ‼」

 と懐に潜り込み、ナイフで胴体を切り裂いた。

「・・・やるじゃねぇか」

 そう言って、男はライフルを放り投げ、片手でバク転をして後ろに退き、ニヤリと笑った。そして、筆を出し、また空中に書き出した。そして、どこからともなく大鎌を出した。

(いったい、こいつのSCはなんなんだ? 絶対この一連の動作が関係しているはず)

 そう考えていると、

「どうした? 来ないなら、俺が行くぞ‼」

 そう言って、大鎌を持った男は私に向かって、水平切り。

「・・・・くっ‼」

 私は両手ナイフで受け止めるが、やはりその大鎌の攻撃に耐えきれず、吹き飛ばされ、家の壁に激突した。

(・・・もうこれしかない)

 そう思い立ち上って、目を瞑った。

「お? なんだ? 抵抗してこないのか?」

 そう言って、


 バンッ‼ シュッ‼ ソンッ‼ バンッ‼

 

 そんな音が鳴り響き、私の身体に当たる。きっと、銃弾やら、ナイフだろう。

(・・・まだ・・・)

 頬、(ひざ)、横腹に次々と当たっていき、かすり傷が出来ていき、やっと、


 シュ~


 私の感情系SC哀しみの力。『哀しみの霧』が発動した。

「なんだ? 何が起こった?」

 という声が聞えた。前に説明した通り、この霧の中、私だけははっきり見ることができる。だから、

「・・・これで、終わりだ‼」

 そう言って、男のいる方に駆けて行き、男を切り裂いた、はずだった。


 すっ


「・・・‼」

 男がそんな音を出して消えたのだった。

「何か、あるとは思ったが・・・」

 そう言って、背後を振りむくと、男が立っていた。

「・・・まさか、俺にこの技を使わせるとはなぁ」

 そう言って、拳を振り上げた。それに反応してガードをしようとしたが、間に合わずお腹に拳が当たった。


「・・・ここは・・・」

「来たな」

 そう声がして前を見ると、もう一人の私がそこにいた。

「そっか、私気絶して・・・」

「全く、無茶をして。俺に早く変わってくれたらいいのに」

「・・・言われたのよ」

「・・・?」

 私は私を見て、

「『そんなんじゃ守れねぇぞ』って。私悔しくて‼ 私負けたくなくて‼ エマを守りたくて‼」

 私は心の底から叫んだ。すると、

「・・・そっか」

 そう言ってもう一人の私はしゃがんで、頭に手を置き、そして、

「お疲れさん。頑張ったな」

「・・・私、もっと強くなりたい」

 そう言うと、もう一人の私は振り返って、

「あぁ、俺もだ」

 と言い残し、立ち上がって、歩いて行った。


「・・・・」

 俺は目を開けると、褐色肌の少女が膝枕をしていた。

(・・・確か・・・アカネとか言ったか?)

 そんなことを考えていると、俺が目覚めたことに気が付いたのか、

「もう、気が付いたの⁉」

 と驚かれた。

「悪いか、アカネ」

「アカネ?」

 俺は目を見開いてさらに驚いている少女に、

「あれ? アカネだよな?」

 と聞くと、

「アカネだけど・・・呼び捨てだったけ?」

(・・・あぁ、そっか、表の方の俺は『さん付け』で呼ぶんだっけ)

 と思いつつ、俺は起き上がった。

「あぁ、まだ起き上がっちゃだめや」

 と言われた。たしかに、身体が痛い。よく見れば、身体のいたるところから血が出ていた。

(・・・だけど)

 俺は立ち上がった。そして、

「あいつは?」

 と聞いた。すると。アカネは、

「アカンって‼ そんな身体で‼」

 と言って止めるが、俺は再び、

「・・・あいつはどこ行った?」

 と聞いた。そう聞くと、アカネも立ち上がり、

「・・・行くんやな。どうしても」

 と聞かれ、俺は頷いた。すると、アカネはため息をつき、

「うちらのギルドの方に行った。たぶん、うちら以外のギルメンの奴を倒しに行ったんやと思う」

「そうか、ありがと」

 そう言って、俺はギルドの方へ歩いて行った。


「・・・・まさか、もう起き上がるとはな」

 俺は、こいつのSCはわかった。俺は表の俺が活動している時も、少しだけ意識はあり、状況を確認することができる。表の俺がピンチの時、すぐ切り替わることができるように準備をするためである。

「お前のSCは、空中に絵を描き、具現化するSCだろ?」

 俺がそう聞くと、男は驚いた表情を浮かべ、

「・・・お前は誰だ?」

 と異変に気が付いたのかそう聞いてきた。俺は、その質問を無視し、

「どうなんだよ? ライ・トールス」

 と聞くと、ニヤリと笑って、

「そうだよ。その通りだよ。俺のSCは『絵心』っていう感情系SCだ。絵が下手だった俺が、うまくなりたいという気持ちからできたSCだ」

 そう言いつつ、鼻で笑って、

「だから、どうした? そんな事わかっても、今更意味が・・・‼」


 ズドン‼


 俺は思いっきり、男の腹に拳をぶち当てた。男は吹き飛ばされ、家の壁にぶち当たった。

「良かった、当たって。違ったら、また推測から始めないといけなくなるからな」

「・・・なんなんだよ、お前は‼」

 男は筆を通りだし、パレットに押し当てた。

「・・・書かせるわけないだろ?」

「・・・っ‼」

 と俺は顔を蹴り飛ばした。

「・・・この‼」

 そう言って、なんとかバランスを保ちながら、銃を撃ってくる。が、

「・・・・残像だ」

「な‼」

 そう言って、顔面をぶん殴った。

「お前は、俺を久しぶりに怒らせちまったもんな?」

 そう言って、また筆を持った男に、

「・・・書かせないって」

 と横腹を蹴り飛ばす。

「お前は泣かせちまった。あいつを泣かせちまった。その罪は重いぞ」

「あいつって誰だよ‼」

「うるせぇ、心に手でもそえて考えろ‼」

 そう言って、残像で取り囲み、

「くらえ‼ (じん)(ろう)突風拳(ガストクラク)‼」

 そう叫んで、たくさんの俺に戸惑う男の腹に手を押し当て、俺のSC『迅速ダッシュ』を使って、全力で走り、壁にぶち当てた。

 俺は拳を放すと、男は舌を出して気絶していた。


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