第十四話 山の狙撃手と人形使い
(・・・敵は直線一キロメートル先の東三十度方向の屋根に一人と十度ずれた路地裏に一人・・・・西の四十五度、五百メートル先の屋根の上、二十度づれて二百メートル先の岩陰に一人ずつ・・・)
きりがなかった。私はあらゆる銃弾を使って、敵を撃ったけど、どれも本物の人間じゃなかった。
パンッ‼ パンッ‼
とバウンドする銃弾『ゴム弾』を二発。
ドンッ‼ スゥインッ‼
と地面に落ちれば皮が固くなる硬化の実を利用して作られた『強化弾』と落ちると棘が出る針の実を利用して作られた『針弾』を一発ずつ、それぞれ撃つと、ぐわっ‼ とか、ギヤッ‼ とか、そんな悲鳴が聞こえた。しかし、どれも人に当たった時の振動とは違った。
(・・・・人形?)
たまに私は身体と感覚が鈍らないように、人形を撃って訓練をしている。その人形に当たった時の振動となんとなく似ていた。
「・・・あなた、耳がいいんだね」
(上、いや、下? いや、これは、右かな?)
声があらゆるところから聞こえて位置がわからなかった。
バンッ‼
と東三十度二百メートル先から銃声の振動、
バンッ‼
北西三十度六百メートルくらい先の位置からも銃声の振動、
バンッ‼
(・・・しまった)
東と北西からきた銃弾をかわすのに集中して、後から聞こえた銃声に反応できず、肩に当たる。
「・・・ッ‼」
私は目を瞑った。
(・・・集中・・・集中・・・しなきゃ・・・)
そう念じながら、私は肩を抑えながら、耳をすました。
「あれ? 抵抗しないの?」
バンッ‼
という音が北西側から聞こえて、数秒遅れでもう一発、西側の遠くからと南側。北東側からも一発。
(三十度と、五十度と、四十五度、二十度・・・・)
私は目を開け、北西の木に一発。北北西の虚空に一発。そして、自分の真下に一発。それぞれ撃った。そして、
ボンッ‼
まず真下に撃った銃弾『霧弾』が発動。梅雨明けのような霧がおこる。そして、木に撃ったゴム弾が四方の銃弾を全て弾く。
「・・・・なっ‼」
そんな声が西側から聞こえた。そして、北北西に撃った銃弾『光弾』が発動。これは、日光に当たると、とてつもない光が発生する『光の実』と呼ばれる実を利用して作られた弾で周りの敵の視界を奪う事が出来る銃弾である。
「目が、痛いぃ~‼」
「見っけ~」
私は気の上から跳びおり、そこにいた人の肩を叩く。すると、ビクッと反応。そして、私の手をはたいて、銃を向ける。
「君が本体でいいかな?」
「な、何なんだ、お前ぇ‼」
よく見ると、それは身長百五十五センチくらいの私の胸当たりの身長しかない、短い青髪の少女だった。
「あら、可愛い敵だこと」
私はくすくす笑いながら言うと、少女は頬を膨らませて、
「これでも、私は十七なんだけど‼」
「あぁ、ごめん、ごめん。飴食べる?」
「わぁい、食べる・・・・じゃないよ‼ ふざけないでよ‼」
パンッ‼
と私のいた地面に弾が当たる。周りを見ると、拳銃を持った小さな人形がぷかぷかと十体くらい浮かんでいた。
「私の能力は、感情系SC『人形操作』。昔から人形に話しかけたりして遊んでいたら、そんなのが強化されて、人形を操作することができたの。だから、人形を使ってあらゆるところから、話しかけていたのに、なんでわかったのよ‼」
青い眉毛をぎゅっと寄せ、悔しそうに頬を膨らませて話した少女に私は、
「どのSCにも弱点ってあるのよ。私も耳がいくら良くても、近接戦闘はさっぱりだし、音が判定できないほど大量に聞えたら、聞き漏らす場合だってあるし。それは君のSCも同じ。まず、近くにはいるんだろうなって思った。だって、よっぽどの実力者でもない限りあんな正確に私をスコープとかでとらえることはできないだろうし、移動もできないと思った。そして、もう一つ。君は焦ると、人形を使わず、自分自身で話すようになってしまう。私はそれを見極めて君を見つけたのよ」
そう説明すると、一瞬歯を食いしばるが、にやっと笑い、
「まぁいいや。私は近接遠距離関係なく戦える。それにこんなに人形がいたら、さすがに・・・」
私はため息をついて、
「もうおしまいだよ」
とニコッと笑って、振り返り、ギルドに戻って歩いて行った。
「は? 意味がわかんないし。いいや、構わない。行くぞぉ!」
パパパパパパパパパパパンッ‼
「・・・・え?」
振り返らずともわかった。少女は唖然として何が起きたのかわからないというような声を上げた。なぜなら、操っていた人形が一気に銃弾で撃たれ、地面に落ちたからだ。
『無音ゴム拡散弾』。地面に落ちた時、中に入っている種を一気に吐き出す『あせり』という木の実を利用して作られた『拡散弾』と弾む弾『ゴム弾』、そして、私のSCを利用してできた『無音弾』を組み合わせてギルドの鍛冶師に作ってもらった銃弾だ。
「自信持ってもいいよ。この銃弾使うってことはほぼないから」
事実、この銃弾は、ゴム弾の中に五発の銃弾が入っており、物体に当たると、その中に入っている五発の銃弾が一気に弾け飛ぶ。そして、その弾けた弾もゴム弾のため、結果、弾む効果が切れない限り、銃弾が自分の周りを弾み続ける。そんな危険な銃弾なため、滅多に使わない。
(まぁ、五秒くらい経てば自然と弾み終わるんだけどね)
そう思いながら、私はその場を後にしようとすると、
「余裕ぶってるんじゃないわよ‼ 乳牛‼」
私はその言葉にピクリと反応した。そして、もう一度振り返ると、少女は拳銃をこっちに向けて立っていた。
カキンッ‼
音を立てて、少女の持つ拳銃に私の『無音ゴム弾』が当たり、少女は思わず手を拳銃から離した。
私はにこりと笑いながら、
「少し言葉の使い方に気を付けようね。そうじゃないと・・・・」
表情を変えず、膝に手をついて、
「・・・・勢い余って殺してしまうから・・・」
と言った。少女はそんな私に怯えたのか、ばたりとお尻を地面につけて崩れ落ちた。私はまた振り返り、ギルドの方を向き、
「お姉さんとのお約束ね」
と言ってその場を去った。




