第十二話 仇と強敵
「着いたな」
「あぁ」
体力を温存するために僕とラットとタクトはなるべく敵に出会わないように遠回りをして荒波のギルドにたどり着いた。
「んじゃ、行こうか」
「ちょっと、待てよ」
「・・・‼」
と急に突風が起き、僕達は吹き飛ばれた。僕は急な突風で思わず、目を瞑り、尻もちをついた。
そして、目を開けると、僕らがさっきまでいた荒波のギルドの前の地面が削れていた。あのまま前に進んでいたらただではすまなかっただろう。
「この能力って・・・」
「あぁ、俺の能力に似ている」
そう言ってタクトは右を向いた。すると、そこにはティッシュを持った男が立っていた。
「あぁ、風邪かな~」
と言って、ぶ~、と鼻をかんだ。
「んで、誰が相手だ? なんなら、全員相手でも構わないぞ」
そう鼻声気味で言った時、タクトが、
「ここは俺にませろ」
と立ち上がって僕らに言った。それに僕とラットは頷いて、立ち上がり、
「任せた」
とギルドへ走って行くと、
「聞いといてなんだけど、黙って通すわけないぃぃぃ・・・」
ハクションッ‼
とまたとてつもない突風が吹いた時、
「横にずれろ‼」
と言うタクトの大声が聞こえ、指示通り横にかわすと、
ドーンッ‼
という衝撃が起き、そのぶつかった時の衝撃に巻き込まれ、また尻もちをついた。
おそらく、タクトのSC『強声』と相手のSCがぶつかり合い起きた衝撃だろう。前を向くと、ぶつかり合った痕跡として大きな穴があいていた。
しかし、ラットはすぐ立ち上がり、
「行くぞ、エマ」
と手を差し伸べてそう言った。僕は、
「うん‼」
と手を握って立ち上がり、ギルドの中に入っていった。
◇
「来たか? 牛野郎ども」
そう言って腕を組み言ったのは、俺らのギルドに通信を送って話していたあの男だった。そして、その横にいたのはあの七鬼『憤怒の雷神』、
「・・・ゴルド・ナズマ‼」
俺は先手必勝とばかりに睨みつける。そして、足元を固めるが、
「・・・はっ」
と鼻で笑い、雷の衝撃で氷を破壊した。
俺の氷は大抵、中途半端な衝撃じゃ破壊されない。例えるなら、岩や木を破壊するタクトの強声でも破壊されない。それくらい強固な氷だが、破壊されるのだった。
(・・・一筋縄ではいかないか)
俺は舌打ちをしつつ、
「フウは無事なんだろうな?」
と言うと、また鼻で笑い、
「・・・さぁ、どうだろうな?」
とニヤリと笑った。俺はイラッと来て、拳を握り、駆けて行った。
「ここは俺に・・・」
そう言って、横から通信を送って来たあの男が近くの椅子を投げた。俺はそれをかわすが、
「・・・・わかってる」
とかわした方向にテーブルが投げられた。やばい、とかわそうとするが、間に合わず、ガード体勢をとった時、
「危ない‼」
とエマが押し倒した。
「それは、予測してなかった」
と頭をぼりぼり掻いて男はそう言った。
「危ないだろ、エマ」
「ラットこそ、らしくないぞ。いつもの冷静な君はどうした?」
エマはそう言って、俺の顔を見つめた。すると、
「・・・余裕そうだな」
そう言って、話している俺ら二人に向かって、男はナイフを投げた。俺はエマに手を引かれ、ナイフを避け、一度さっき投げつけられたテーブルの陰に隠れた。
「・・・仕方ないだろ。冷静になれるわけがない」
「あいつが、フウさんの仇だからか?」
「あぁ」
「なぜそう思うんだ?」
「対等に戦えるのは七鬼のあいつくらいだから」
「・・・そっか」
僕は机を蹴り飛ばして、
「んじゃ、僕は七鬼じゃない、あの男と僕は戦う」
「・・・やめろ、無茶だ。というか、お前は早く・・・」
「信じてくれ」
俺は『逃げろ』と言う前にエマは俺の顔を見て言った。
「僕はあいつを倒す。それを信じて君はあの七鬼と戦ってくれ。リーダー命令だ」
俺はそう笑って言うエマにニヤッと笑って、ため息をつき、
「全く・・・リーダー命令じゃ仕方ないな・・・」
と言った。そして、
「んじゃ、よろしく頼む」
「あぁ、任せろ」
そう言って、前を見ると、
「話し合いは終わったか? 待ってやってたんだ。少しは楽しませてくれよ‼」
そう言って、二人の男はこっちに向かって駆けて来た。俺とエマはそれを見て、
「行くぞ、エマ」
「あぁ」
とエマはナイフを抜き、戦闘態勢に入った。




