第十一話 海上と戦場
「エマ達、大丈夫かな?」
「ミイは最近エマ達の話ばかりするね」
ケイはそう私に言った。
「え? そうかな?」
そう言ってケイは赤い眼鏡をくいっと人指し指であげ、
「気に入った?」
「気に入ったというか、面白いよね、あの人達」
「あんたもね」
とケイが言った時、
「ミイ、敵船付近に着いたぞ」
と知らせて来たのは、アルカル・ルイード。身体強化系SC『嗅覚強化』を持った黒髪の彼は、生まれつき鼻がよく、探し物は勿論、敵の数、戦力等の判定もできる。簡単に言ってしまえば、感情系SC『警戒心強化』の身体強化系SC版だ。
「敵数は?」
「船は木の小舟が四隻。鉄の大船が二隻だ。小舟には一隻に二から三人くらい。大船には・・・・十人はいるな。一隻に」
「SCとかはわかる?」
「ん~、それは遠すぎてわからないな」
「そ」
アルカルのSCには欠点があって、それは、敵数が多ければ多いほど、『におい』が混ざり、敵の戦力の判定がしにくいという事。それが、警戒心強化との違いだ。
「行くのか? ミイ」
「うん。んじゃ、今回は三、一、三で分けよう」
『三、一、三』は前衛、中衛、後衛の数だ。ちなみに私は前衛。身体強化系SCの『合掌』で相手を威嚇し、攻撃することができるからだ。
「んじゃ、準備はいいかな?」
「おう、任せろ」
彼は茶髪の男剣士コルア・ルキア。身体強化系SC『集中力強化』。集中力を強化し、通常以上の力を使用することができる。欠点はその集中力はもって二、三時間という制限時間があることだ。
「え~、もう行くの? 寝たりないな~」
とそう言ってあくびをして、黒髪短髪で黒のフードを被り、白いマスクと額にアイマスクを付け、黒白の縞々(しましま)タイツをはいている少女は身体強化系SC『睡眠強化』をもったサナ・メリート。寝れば寝るほど、攻撃力が上がり、自己治癒能力も上がる。簡単に言ってしまえば、『狂戦士』ってやつだ。
欠点は終わった後、かなりの疲労がたまり、最低でも半月くらいは休まないといけなくなるらしい。
「中衛での監視は俺に任せろ」
そう言って、鼻をクンクンさせるのはアルカル・ルイード。さっきも説明した通り『嗅覚強化』のSCを使って、『推理力強化』のSCを持つケイと協力して、作戦をたてる。
「後衛の援護も頼むぞ」
「うん」
「任せてよ」
後衛はケイとスナイパーのム―、マイのコルネリア姉妹。
赤に近い茶髪でポニーテールの姉ムーのSCは『四倍視力』といって生まれつき目がよく、スコープ無しで撃つことができるというSCだ。一方、オレンジ色で短髪の妹のマイは『迷彩』という身体強化系SCで昔から隠れるのがうまく、それが強化されたらしい。
「よし、行こうか」
そう言って私とコルアとサナは船へ駆けて行った。
◆
バンッ‼ ドンッ‼
カンッ‼ コンッ‼
バルンッ‼ ポンッ‼
そんな僕らのギルドと相手のギルドの狙撃手同士の戦いが後ろで行われている中、
「俺らはここにいたら迷惑になる。早く移動しよう」
と言って、僕とラットは敵の兵を迎撃しながら、前に進んでいった。そして、
「なんだ・・・ここ・・・」
僕達の前の街の出入り口には、たくさんの僕らのギルドの人達が気絶して倒れていた。
「ん? なんだ? まだいたのか?」
そう言ってパレットと筆を持った茶髪の男と、
「本当ですね? 誰でしょう?」
と言う黒い姿の男が立っていた。
「エマ、こいつら、強いよ」
そうグミが耳元で囁いた。
「あぁ、僕もなんかビリビリとそんな気配を感じる」
と〈フレイムダガー〉を構える。すると、
「・・・全く」
そう黒い姿の男は呟いたと思ったら、
「・・・遅いですよ」
と気付けば後ろにいた。一瞬だった。本当に一瞬だった。
(・・・まずい)
と僕は振り向き、ナイフを構え直すが、男が剣を振り下ろす方が早く、間に合わないと諦めかけたその時、
「・・・間に合った」
と言って、当たるギリギリのところで、アカネが刀でガードしていた。
「アカネ‼」
「良かった。間に合った。危なかったな、エマちん」
そう言って、男を蹴り飛ばす。しかし、微妙な当たり方で、すぐに体勢を立て直し、また、
「・・・遅いんですって」
と気付けばアカネの後ろにいて、
「まずは一人」
とアカネを斬る。しかし、
「あんた、どこ狙っとるの?」
と『身代わりの術』を使ったアカネは後ろに回り込み、今度は跳び回し蹴りをして、顔面に当てようとするが、男は後ろにステップを踏み、それをかわした。そして、
「行け、エマちん、ラット。こいつはうちに任せな」
と僕とラットに言った。僕は荒波のギルドの方向に向き直り、走ろうとすると、
「誰がいいって言った?」
と急に壁が出来た。
「ここから先は行かせない」
と前でパレットをもった男が筆で何かを空中に書き始めた。そして、
「・・・空中投げナイフ」
と三本のナイフが急に現れ僕達の方へ向かって来た。避けようとするが、いつの間にか僕とラットの周りは壁に囲まれていた。
「さぁ、死ね」
とナイフが僕とラットに当たりそうになった時、
「・・・ふんっ‼」
という声と、
「早く、来いよ‼」
という大声が聞こえ、気付けば、投げナイフは地面に落ちていて、壁も破壊されていた。それもそのはず、僕とラットの前には、あの投げナイフを下に叩き落としたのであろうカレンと、遠くで手を振るタクトがいた。
「エマ。こいつは私に任せて、先に行って。すぐ追いつくから」
とそう言ってカレンは駆けて行き、パレットを持った男の腹に向かって思いっきりパンチしたが、男は片手でバク転をしてかわした。
「さぁ、覚悟してくださいね」
「ほう、威勢だけはいいな」
とその男がにやりと笑い、大鎌をどこからともなく出し、カレンに向けて振る。カレンはそれを二つのナイフで受け止めるが、受け止めきれず、家の壁に当たる。しかし、カレンはすぐ立ち上がり、男の所へナイフを持って駆けて行った。
そんなカレンに僕は、
「ありがとう、カレン」
と呟いて、タクトの方へ走って行った。




