第十話 酒場と狙撃手
「え⁉ コノエさんって狙撃手だったの?」
「あぁ。一応な」
僕は敵と戦いながら荒波のギルドを目指して走っていると、追いついたラットが、コノエさんは狙撃手なのだと説明してきた。
「でも、コノエさんって酒場の店員だったよな?」
「酒場の店員兼、狙撃手だな。正しくは」
「でも、王国戦の時いなかったよな?」
「あぁ、あれな。なんか買い出しに行っている時に王国が攻めてきたみたいで、普通に住民と間違われて避難させられたそうだ」
と後ろで会話を聞いていたのか、タクトが僕達に追いついて説明した。
「でも大丈夫でしょうか?」
とラットが僕に追いついた時、同時に追いついたカレンがラットにそう聞いた。
「何がだ?」
「ずっと酒場にいたんですよ? 腕が落ちているんじゃ・・・」
「あぁ、それなら大丈夫だ」
ラットはそう心配するカレンの顔を見て言った。
「まず、あの人のSCは『聴力強化』って言って、俺みたいな五感に影響を与える身体強化系の上位SCだ。そして、あの人の凄い所は振動を聞き分けることができる」
「振動?」
「あぁ、振動。声や音って、空気を振動させて俺らの耳に伝わる。その振動一つ一つを正確に聞き分けることができる。まぁ、つまり十人に一斉に話しかけられても、それを正確に返すことができる」
「すごいけど、それって・・・」
「あぁ、戦闘向きのSCではない。少なからず近接向きじゃない。ただ、遠距離の狙撃戦だったら、話は別だ」
「だけど、たぶん相手の狙撃手のSCも強いよ」
「あぁ、たぶん身体強化系だろう。だが、山に近いギルドには、山に近いギルドの戦い方がある。奴らが船で戦うようにな」
そう言ってラットはニヤリと笑った。
@
(・・・見っけ)
私は路地で銃を構えた人影を発見し、引き金を引いた。しかし、すぐに消え、家の壁に当たり不発。う~ん、と首を傾げつつ、前にあった岩の陰に移動し、目を瞑った。すると、
バンッ‼
(・・・敵の位置・・・北西三十度・・・街中の・・・家の屋根の上・・・ね・・・)
移動が速い。銃声を聞き取ることはできたが、どう考えても、さっきまで三十メートルくらい先の路地の裏にいたのに、移動が速かった。
(・・・・となると・・・)
私は弾を変えた。そして、近くの北東四十五度にあった岩、そして、北西三十度に見えた遠くの岩に向かって銃を撃った。そして、私は、
(・・・よし・・・)
と近くにあった木へ向かって走って移動した。
◆
「どういうことだ? ラット」
「まぁ、見てろ」
そうラット言った時、
バンッ‼
と銃声が近くで聞こえた。そして、また銃声が聞こえる。ギルドの方からだ。敵と戦っているうちにカレン達とはぐれた僕とラットは一度建物の陰に隠れて様子を伺っていた。
「たぶん外れた」
と言ってラットは首を振った。そして、数秒も経たないうちにまた銃声が聞こえた。
そして、その後二発。しかし、その二発は撃った方角はバラバラで、まるで適当に撃ったようだった。だから、ラットを見るが、ラットはニヤリと笑って、
「・・・きた」
と呟いた。その瞬間、パリンッと遠くの屋根の上から音が鳴る。そして、
「あぁぁ‼」
という叫び声も聞こえた。僕はラットにどうして、と説明を求めるように見るとラットは、
「海に近いギルドは海上での戦いが得意だ。鉄の船を所有してるくらいだからな。だが、山に近いギルドにはそれなりの戦い方ってもんがある。今のがその一つだ。弾薬が通常の弾とは違う」
「というと?」
「質問に質問で返すようで悪いが、お前は今までどんな木の実を見たことがある?」
僕はそう言われ、思い返した。
「店で売ってるような実しか見たことないよ。ミゴンとか、リングとか」
この島ではいろいろな木の実があり、その木の実までもがSCも持っているという。それがスリージース島の不思議な力なのだった。
「あぁ、そう言った木の実は大抵、甘いのや酸っぱいのがあっておいしい。けど、なかには危険な木の実がある。例えば触れると棘ができる木の実、落ちると毒ガスを噴出する木の実、ゴムのように弾む木の実なんかもある。そして、それは山にある」
「え、んじゃ、危ないじゃん。僕らのギルド」
「だが、その木の実は使い方次第で戦力と化す。さっきコノエちゃんが使った銃弾もその木の実で作られた弾む弾。ゴム弾だ」
「でも・・・それって・・・」
そこまで言って僕はとんでもないことに気が付く。それを察したのかラットはニヤリと笑い、頷いて、
「あぁ、コノエちゃんは一発目で銃のスコープを、二発目で狙撃手の横腹を当てられるようにすべて計算して撃ったんだよ」
と言った。
@
(う~ん、横腹に当てたのになんか当てた気がしないのよね~)
私は耳で感じ取れる振動的にそう思いつつ、四倍スコープを八倍に取り換え覗くと、そこには人によく似た『人形』が倒れていた。
そして私は、東の方から銃を撃った振動を聞き取り、
(なるほど~)
とニヤリと笑って、岩陰に隠れ、その攻撃を防いだ。そして、その方向に撃つとまた、うぎゃ、という声が聞こえた。しかし、やはり人を打ち抜いた時の音の振動とは違い、八倍スコープで覗くとそれはまた人に似た『人形』だった。私はそれを見て、手を頬に当て、
「久しぶりに、お姉さん。少し本気を出そうかな」
と言って舌で唇をなめた。




