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私がわたしを描く世界   作者: 宇槻 叶
5章
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(反攻を紡ぐ音)

あけましておめでとうございます。

新年一発目の更新です。

 ルーキと私は攻撃してくるアシュラの戦士たちの隙をついて岩陰へと駆け込んだ。ルーキは辺りをきょろきょろと確認すると、息が上がったままオカリナを口に加えて演奏を始める。優しい音色が私たちを包み込んだ。


 演奏が始まった数秒後、私たちを追って戦士たちがやってきた。しかし、彼らは見えない音の壁に阻まれていた。大きな拳を突き上げて攻撃したり、剣やハンマーなどの道具を使って攻撃をしたり、タックルをしかけたりと大きな戦士たちが私たちに向かってくる。しかし、音の壁は優しく包み込み、攻撃がなかったかのようにした。彼らの様子を正面で見つめながら演奏をするルーキの額から玉のような汗が吹き出し、頬を伝って流れ落ちる。かなりの集中力が削られているようだ。


 そうこうしている間にも向こうでは、ランレイたち3人を取り囲んでいるアシュラの戦士たちがジリジリと距離を詰めていくのが見えた。しゃがみこんでいたズーハオも左腕を抑えながらゆっくりと立ち上がり、彼らを恐ろしい形相で睨みつける。


 音の結界で戦士たちはかなり動揺をしている。意識を集中することもできそうだ。それに、これなら、私の力を使ってもきっとキンナラの力と誤解するだろう。そう不思議と自信が沸いた。そして、もうひとつ不思議な自信があった。私の力で彼らを助けることができるということだ。キンナラではたまたま怪我を治すことができただけなのに、頭の中に彼らを助ける映像が流れ込んできた。


 キンナラでみんなの怪我を治したときのように目を瞑り、自分の神経を集中させる。風よ、力を貸してとそう願いながら、頭に流れ込んできた映像をもう一度思い浮かべる。ぐっと眉間に力が入り、瞑っている目がより固く閉ざされた。


 身体の周りを穏やかにまとっていた風が音を大きくしていき、頭上からゴロゴロと唸り声のような音が聞こえ始める。彼らの方向に向かって突風が吹きつけたのを合図にしたかのように、バケツをひっくり返したような雨と、辺りを割くようなバリバリという雷の音が耳に流れ込んだ。

 

 目を開くと、頭の中の映像がそのまま現実でも起きていた。どす黒く厚い雲が辺りを包み込み、一粒一粒が大きい雨が滝のように降り続いている。その雨の隙間を掻い潜るようにして雷が大地へといくつも落ちていく。


 ランレイたち3人とメルロー、シャルは体を包む球体の中にいるように、雨と雷が彼らの周りだけそれていた。辺りにいたアシュラの戦士たちの中には雷に打たれ黒く焼け焦げて倒れているものもいる。ランレイたちやメルロー、シャルは何が起こっているのかわからず、立ちすくんでいるようだった。


 私自身も自分で起こしたことに驚き見入ってしまったが、そんな中でも攻撃を再開させようとよろけながら立ち上がる戦士たちを見て、我を取り戻した。


「走って! 早く!」と何度も声を張り上げる。

 

 シャルが我に返ったのか、「おい、走れ! あっちだ!」と冷静な声で私たちの方を指差し、一番に走り出した。メルローがそれに続き、ランレイを担いだジァンとタイランが最後に向かってくる。その最中、彼らに向かってくるアシュラの戦士に対して雷や風が攻撃をした。誰1人として、彼らを傷つけることはできなかった。


「天気が味方したの……?」

ぽつりと呟くような声が下の方から聞こえた。その方向に視線を送るとルーキが楽器を持ったまま座り込んでいた。「これ、姫様が?」と振り向きざまに聞かれる。


「そう、みたいです」と歯切れの悪い回答しか出てこない。私だって、信じられない。


「ハイネ様! ご無事で?」の声とともにシャルたちがやってくる。シャルもルーキも体全体が傷だらけで、立っているだけでも辛いのか足が震え、息が上がっていた。


「これからどうする? とにかくここを離れないとだよな」とメルローが続く。


 確かにここから離れる必要はあるけど、不用意にこの国から出ていこうとして攻撃されたら次こそひとたまりもない。もう一度同じことを起こせば、私の力がばれて最悪の結末になりかねないし、同じことができる保証もない。それにみんな傷つき、疲れ切っているから、そんなに遠くに行くことはできない。


 頭を悩ませてもいい答えが浮かばない。こんな時、この国に一番詳しいランレイさんがいてくれればと思っていると、袖をぐいと引っ張られた。驚いて目を向けるとジァンだった。


「コチ……! コチ……!」と奥に見える洞窟のようなものを指差している。


「あっちにいいところでもあるのかな?」とルーキ。


この魔法のような現象がどれだけ持つかもわからないし、もう迷っていても仕方がない。


「皆さん、行きましょう。ジァンさん、案内をお願いします」


 自分にも言い聞かせるように、大きな声ではっきりと言い切った。もう逃げられないなら、少しの望みにかけるしかない。


 ランレイを背負ったタイランが先頭を走る。私たちはそのあとを追うように走り、最後尾にジァンが付いた。降りしきる雨を背に暗い洞窟へと私たちは身を潜めた。


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