(自分の過去と未来の狭間で)
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サクラ姫とシャル、ルーキ、メルローの一行は、旅先のアシュラで出会ったランレイらと仲良くなった。しかし、アシュラのズーハオ国王とテンのジュンとコウによってその楽しい雰囲気は消し去られた。サクラ姫を救おうとシャルやルーキ、メルローは立ちあがり抵抗したものの、一緒に戦ったアシュラのジァンとタイランでさえアシュラの戦士たちには敵わなかった。そんな場面に外に出かけていたサクラ姫とハイネが走って戻ってきた。
2人は逃げることをせずに、他のものたちと一緒にズーハオが率いるアシュラの戦士たちと戦うが、1人また1人と倒れていく。サクラ姫は自分の力を使いみんなを助けようとするが、その力がテンたちに見つかって、サクラ姫はテンにさらわれてしまった。
テンに姫が連れていかれて、数か月が経つとテンたちが大きな魔力で作り上げた兵器で国の街を侵略し始めた。抵抗する者は殺され、皆が従うほかなかった。そして、八季の国はそれぞれの季節や楽しい日々を失い、テンという国に名を変え、冷たい氷の国へ姿を変えた。
おわり
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今までであれば本に書かれる内容はあくまで私が起こしたことによって決まるか、私がペンで示したことだけが反映されていた。ただ、今回は違う。今、私が選ぼうとしている……考えている道の未来が書かれている。実際、この通りになるかどうかも分からないけれど、今までのことを考えると頭から否定することはできない。
そして、私をこの世界に引き込んだあの声。また聞こえた……悪い道へ誘うようなかわいい声の意味って一体何……。
「姫様、危ない! 伏せて!」という声が耳に届いたと実感した次の瞬間、後ろから強い力で押し倒され、気付いたら砂埃を立てて太陽の熱を持った少し暖かい地面に倒れ込んでいた。声の主が私の体の上で起き上がりながら再び声を掛ける。
「大丈夫ですか? 姫様」と柔らかい笑顔を浮かべるルーキの姿がそこにはあった。しかし、表情とは裏腹に身体中に切り傷や打撲の跡が暗がりでもわかるほどについている。ルーキのその姿ではっと我に返り今の状況を理解し直した。すぐ近くでシャルやメルローも剣を抜いて戦っている。彼らの周りを取り囲むようにアシュラの戦士たちが戦闘態勢をとっていた。ただ、ランレイの姿がその中にはなかった。
「ランレイさんは……?」
「そんなことを今は気にせず、姫様は早く逃げてください!」
ルーキの声が先ほどよりも強さを増す。けれど、その言葉にただ従うことはできなかった。安全な場所へ逃がそうとするルーキの背中に押されながらも、辺りを見回す。左手の奥に何かを中心に円を描いている人だかりがちらっと視界に入りこんだ。アシュラたちの大きな体に阻まれて、何があるのか見ることができない。目を凝らそうとその場で立ち止まったとき、ルーキの背に押されてバランスを崩し、その場に倒れ込む。その時ちょうど人だかりの足の隙間から、魂が抜け落ちたかのように座り込むランレイと近づいていくズーハオの姿が視界に入った。
「ランレイさん! ランレイさん逃げて!」
自分でも気が付かないうちに声が出ていた。しかし、ランレイはその場からピクリとも動こうとしない。紐を切り落とされた操り人形のようだった。ズーハオの左手が彼女の首を掴み、持ち上げる。周りのアシュラの戦士から歓声がこぼれる。それに対抗する声が2つ聞こえた。
「ラレ! ハナセ!」
「ズーハオォォォォ!」
二つの大きな影がズーハオの左右から飛び出し、切りかかる。ジァンとタイランだった。周りにいる屈強な戦士たちに比べると、一回りか二回りほど体が小さく見える。それでも、2人の魂の叫びはその周辺を包み込むほどに響きわたる。一瞬、ズーハオの体の反応が遅れた。その瞬間を2人は逃さなかった。周りの戦士たちの放った弓矢や剣先に捉えられ、流血しながらも彼らのまっすぐにランレイに向かって走った。ジァンがズーハオに体当たりをし、タイランが奴の腕にハンマーのような武器をぶつけた。鈍い音が響き、ズーハオの低い呻き声とともにランレイの拘束は解かれた。タイランがしっかりとランレイを宙空で受け止める。あっという間にランレイの救出は成功した。しかし、周りの戦士たちが彼らに追いつき、包囲する。逃げ場がない。
「ルーキさん……キンナラの音の結界はアシュラでも出せますか?」
ひらりと敵の攻撃をかわしながら、ルーキがこちらを向く。
「え?姫様……?」と戸惑うルーキに「答えてください」とせかしてしまう。
「問題ないと思います……たぶん。お城でも使えたので」
「力を貸してください」と言いながら彼女をじっと見つめた。
「姫様!?」
ルーキからは困惑の表情が読み取られた。――――当たり前だ。自分の命を張ってでも私を逃がそうと戦ってくれている人に、逃げないどころかお願いだなんて。でも、それ以上に何もしないで逃げることができなかった。ランレイさんのためだけじゃない、シャルさん、ルーキさん、メルローさん、ジァンさん、タイランさんの全員が死んでいくところなんて見たくなかった。昔の自分と同じように自分のために他人を見捨てることなんてできなかった。
自分のために、自分を守るために私は彼女を拒絶した。私は私を支えてくれた彼女を攻撃することしかできなかった。――――今は、自分を守るしかできなかった過去とは違う。夢の中だか、小説の中だかわからないが、こんな場所でも同じことは絶対に繰り返したくない。
まっすぐ見つめる私の目から一度は目をそらしたルーキだったが、目を瞑った後、決意の満ちた目で見つめ返してきた。
「わかりました。姫様……何をすればいいですか?」
そう言いながら腰につけているポーチからオカリナの様な楽器を取り出し、口にくわえた。




