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私がわたしを描く世界   作者: 宇槻 叶
4章
34/70

(守る気持ちの衝突)

「あいつら……?」

「そ、あいつら。」

リクターは私の言葉を軽く受け流すだけだった。

これ以上、聞かない方がいいのか?

何か聞いてはいけないことなのか?


そんな思いが自分の中を巡り、言葉が喉に詰まっているように声が

出なかった。率直に聞くのは良くなさそうだから、こんな聞き方は?

と言葉を思いついては、やっぱりダメだと落ち込むループに入った。


恐らく私の顔は面白いほどに百面相をしていたのだろう。

リクターは私に笑顔を向けて話し始めた。


「なあに? 姫様、もしかして気になってたのお? 聞いてくれれば教えるのに。」

「え!」

「そんなに大したことじゃないからと思っていたから言わなかったんだけどね。

姫様なら知ってると思ってたから。」

「あ、そうだったんですね。私はすべてを理解しているわけではないので、教えてください。」

「あらそう? あの頭のかたーい、ゲンダツバのやつらよ。」


ゲンダツバ。

ここにきて何度か耳にしたことがある。

この国の街の1つだったはず。そこの人たちから聞いたってどういうことなんだろう。

もうすでに噂が流れているっていうこと……?


「ゲンダツバさんたちは何と言っていたんですか?」


そう聞くと、リクターは口を使って寝床の草の下から細長く折りたたまれた紙を取り出した。

紙はところどころ汚れており、細かい皺がいくつも入っている。

紙を私の手へと押し付けるので、リクターの口から受け取った。

縦に4つ折りされた紙を広げるときらきらと光る粉塵が舞う。


「これが奴らの占いの結果よ。」

「占い……」

紙に目を落とすと、まるでエジプトの壁画や楔形文字のような文字が4行並んでいる。

見たこともない字なのに、また読むことができる不思議な現象が起きた。


そこには、詩のような言葉が記されている。

『鳥籠に乗ってくる尋ね人は大切な子の新たな門出

 1つの花を守るため二つの影が相まみえる

 光の珠に気づくとき新たな道が開くだろう

 水が清くなったとき空が笑う』


何かの比喩表現だとは思うが、皆目見当もつかない。

リクターがメルローだけに向かわせたことを考えると、1行目のことが今起きていること

だとは思うけど。


「変な占いよね。詩なんてさ、カッコつけちゃってね。それとも中途半端なことをいっておけば、

外れた時に誤魔化せるとでも思っているのかしらね。ああそうそう、この占いをなんでもらったか

っていうとあいつらにね、この間あたしの脱皮した皮を送り付けてやったのよ。

あたしの皮はね、防具に使えるくらい硬いんだってさ。で、対価を支払わないとっていうことで、

そのお礼に私の占いとメルローの未来の占いをもらったのよ。」


リクターのマシンガントークのおかげである程度、状況が分かった。


「今見せてもらったのが、メルローさんの占いですよね。」


「そ。あたしのは、姫様がここに来ることと世界の分岐点みたいなことが書いて

あったわ。」


「そうなんですか!?」


「そうなのよ。あいつらの占いは100発100中っていうわけではないけど、結構当たるのよね。

むかつくことに。」


「ちなみにこの1行目の詩の意味は、これから会う人によってメルローさんの生き方が変わるっていう

ことですか?」


「おそらくね。ただ、それ以外の1行以外はあたしも自信ないのよねえ。今回の占い難解すぎ。」


リクター曰く、占いは精度が高ければ高いほど難解な内容になるらしい。

しかもそれはゲンダツバの中でも理解されていないことなのか詳しく教えてもらえないらしく、

星読みって信じられないのよね。ということだった。


ゲンダツバという種族のことも知らなければ、詩の意味だって理解しているわけではないのだけれど、

なぜか占いの意味が想像できてしまう。


多分、リクターの判断は正解で、メルローとシャルが私のいない場所で会うことは必要だと思う。

この世界に来た頃から説明ができないことばかりで、正直自分でも意味が分からない。


=================================

「ったく……リクターもハイネもなんだよ」とブツブツ文句を言いながら、ぬかるむ道をメルローは

駆けていく。


爆発が起こった場所に近づくと、カルラ族の羽音と声が聞こえてきた。


「旦那、お嬢ちゃん、大丈夫ですかい?」


「……いたた……。あたしは大丈夫」


ルーキの声がかわいらしく回答する。ただその声は一変した。


「シャル!? 大丈夫?」

「旦那!」


2人の焦りの混じった声が一人の男に向けられた。


「あの……だい……」メルローが話し掛けようと近づいたとき、地面に落ちていた枝を踏んだ。

ぱきっという軽い音が響いた。


男の目がカッと開き、腰につけていた刀を抜いたとメルローが把握した時には、メルローの目の前に

シャルがいた。


「何者だ。本を……姫をどうした。」


かすれた声で息を上げながら、シャルは刀の刃をメルローの首元に突き立てた。


「え、ちょ、たんま……」


メルローは状況が全くつかめていなかった。自分は見に行けと言われただけで、何もするつもり

もなかったのに、なぜ首元に刃を突き付けられているのか……。


「おい、聞いているのか。お前に問うている。答えろ。」


シャルがもう一度、強い口調で問いただす。

「じゃあ、あっしは……」カルラ族もよくわからない状況ながら、これ以上巻き込まれるのはごめん

だという思いで、業者人らしい笑みを浮かべて翼をばたつかせている。


「ちょ……状況だけでも」

メルローがカルラ族に向かって手を伸ばそうと動かすと、「誰が動かいていいといった」という声と

ともにメルローの腹部に鈍い痛みが走った。


「シャル!!」ルーキの金切り声があたりに響いた。


目の前にいる男は目が血走っており、息が上がっている。まるで獣のようだった。

「もうやめて! 落ち着いて!」

ルーキがぬかるみに足を取られながら徐々に近づいてきて、やっとシャルのところまでたどり着いた。

シャルの背中にルーキの手が置かれると、シャルの目が徐々に落ち着きを取り戻してきた。


――鳥籠に乗ってくる尋ね人は大切な子の新たな門出

 1つの花を守るため二つの影が相まみえる――

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