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私がわたしを描く世界   作者: 宇槻 叶
4章
33/70

(決まっていた運命)

やっと。。。投稿できました!!!

カルラ族のオジロの荷台に乗ったシャルとルーキには恐ろしい旅の最中にいた。

荷物が乗る場所だとは言われても程度のんびりした旅になるだろうと予測していた2人だったが、実際は全く息つく暇のない状態が続いている。


窓も何もない暗い袋の中で、シャルの体に容赦なく冷たい風が吹き付ける。

キンナラやマゴラガのような城から南西の方角にある街の気候は基本的には20~25℃で湿気が高い。

城とその2つの街しか行ったことのない2人にとっては味わったことのない寒さだった。


息ができないほどの強い風で顔を動かそうにも簡単に動かすことは叶わず、正面から風を受け止めるしかなかった。

重力もひどくかかっているようで、腕の自由もあまり効かない。


シャルの背中にしがみついているルーキも同様に必死だった。

シャルのおかげで風を真正面から受けずにすんでいるものの、手先が凍るように冷たくなくなり、シャルの服をつかんでいる感覚すら消えかかっていた。

しかも気を抜けばあっという間に積み荷に向かって弾き飛ばされそうだった。


その状況が数分経過した頃、ルーキの腕が小刻みに震え、徐々にシャルをつかむ力が弱くなっていった。

その時シャルはやっと、風を正面から受けなくていいように顔の向きを変えることに成功した。

「大…丈夫か…ルーキ?」

重力に逆らうようにシャルが言葉を発する。

ルーキは応答しない。シャルはもう少し下に目を向けられるように顔を沈めて、ルーキに掴まれている腹部を確認した。


そこには見たことのない真っ白な腕があり、左腕からは真っ赤な血が流れていた。

どうやらルーキは痛みで意識を保とうと自分自身で腕を傷つけたようだ。

ただ、その腕もほどけそうになっている。


身動きの取りづらい状況に変わりはないがシャルは自らの髪を縛る紐を外し、その紐で自分の腹部に回されているルーキの両腕を縛った。


「ルー……キ……。もう少し……の……辛抱だ……」


言葉を発しながら、ルーキの手を自分の手で包み込んだ。

限界を迎えそうなルーキの体の状態を知ってか知らずか、カルラ族の男はゆっくりと高度を下げ始めた。

2人に掛かっていた目に見えない圧力がふっと消えた。

ほっと心を落ち着けたシャルだったが、それも束の間、下からも前からも強い風が吹き荒れてきた。

そして、二人の後ろに積んであった積荷が襲いかかってくる。


シャルはどうにか体の方向を変え、左横を向いて自分の腕の中にルーキを抱きかかえ、左腕で襲い掛かってくる積み荷を受け止めた。

風の力と元の荷物の重さで、左腕がミシミシと音を立てた。

白く滑らかな腕に赤紫色の斑点が大きく広がっていく。


尋常ではない痛みに耐えながら、意識を失っているルーキを守るようにシャルはその姿勢を貫いた。

地上へと向かっていくほどに積荷もどんどん落ちてくる。


徐々に重くなっていく荷物にシャルの意識も薄れていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「テンの仕業よ」と凄むリクターの声が洞窟内に反響した。

びりびりと肌が震える。

そして、目の間には先ほどと同じ人だとは信じられないほど、眼光が鋭いリクターの姿があった。

野生の獣を目の前にした時のように腰が抜けてしまいそうだった。


相当私が青ざめていたのか、リクターは我に返った様子で話を続けた。


「あらやだ! あたしとしたことが、いやあねえ。怒っちゃうと変わっちゃうのよねー。

でね、テンの仕業っていうのはね、あたしたちの気づかないうちに奴らがこの街におかしな

仕掛けをして、作物をとれなくしたり、蛇化を進めたり、人々が来られないようにしたりして

いったのよ! ひどいと思わない?」


先ほどの姿が本性だとすると、逆にオネエ言葉になる方が怖い……と思いながらも、

「そんなことが……」と相槌を打つ。


「そうなのよ、でね」そう言ってリクターがさらに話を進めようとしたときに、洞窟中を蛇たちの声が覆いつくした。


「え、もう今日はカルラは来ないはずだよね? なんだろう」


メルローは不思議そうに呟いた。リクターはあまり驚いていなさそうに、「メルロー、あんた行っといで」とだけ伝えた。


「じゃあ私も……」と言いかけたときに冷たい滑らかなものに口を押えられた。

リクターの尻尾であった。リクターを見ると私の目を見て、なぜかウインクをしてきた。


「えー! 俺だけ?」

そういうメルローをリクターはにらんだ。


「……わかったよ。行ってくるよ」と言い残し、渋々洞窟の外へと出かけて行った。

彼の姿が消えると、口を覆っていた尻尾がほどかれた。


「あの……なんで……?」

そう聞くと、リクターはため息をついた。


「すっごいむかつくんだけど、あいつらの占い通りの訪問客なら……ここで迎えに行くのが正しいのよ」


天井に広がるを星を眺めながら、残念そうに言った。

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