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私がわたしを描く世界   作者: 宇槻 叶
序章
3/70

むかしばなし と のーと

題名が読めたノートだったが、仕事に取り掛かってからは、その存在すら忘れてしまっていた。

ぽっかり記憶を抜き取られたようだった。

そして、高田に言われた嫌味にぶつかるように、今日の訪問予定を午前中から良いペースで進めていく。

3件のアポイントがなんとか終わったのは、午前の11:30。


パソコンで少し内勤業務をしたいのと昼食ををとるべく、コンビニの駐車場へと入った。

昼前とあり、トラックや営業と思われるスーツ姿の男の人が運転席に座る車などで、15箇所ほどある駐車スペースの半分以上が埋まっていた。


駐車場へ着くやいなや、会社用のスマートフォンがけたたましいアラーム音で鳴り響いた。

聞き慣れない音に驚き、慌てて、空いている駐車スペースに車を頭から突っ込んで駐車する。


こんな音に設定した覚えはないが、取引先からか、会社からだろうかと、画面を覗き込んだ。

表示の電話番号は、担当の市外局番でもなく、携帯電話の番号でもない。


「01234567890」


何かのいたずらだとは思った。だから、留守電に入るまで置いておくことにした。だが、一向に留守電にならず、コール音だけが鳴り響く。


怖くなって、着信を拒否した。


「さくら…? やっと出てくれた…ザザ…はやく…ザザ…き…て…」


ブチッという音とともに急に切れ、ツーツーツーという音だけが残った。

微かに聞こえていた声は、どこか懐かしい女の子の声だった。


ただ、そんなこと以上にこの不可思議な体験は、背筋を凍らせた。


心霊体験だったのか、それとも夢でもみていたのか…。


着信拒否をしたにも関わらず、電話に出たことになっていた。

それに、「さくら」と名を呼んだことも不思議だ。


今日はやたら変なことが起きる…。


ノート。


急にまた、思い出した。無くしていたピースがはまり込んで、パズルが完成した感覚だった。


カバンを漁り、ノートを探す。

書類の間からのぞく黄緑色の帯はすぐに見つかった。


『私の描くわたしのせかい』というタイトルが朝よりも気のせいか、より太く、よりはっきりとした文字になっているようだった。


恐る恐る、ページを開く。

そこには、一文しかなかった。


『サクラ姫がおさめる国の周りには、8つの街がありました。』


そして、思い出した。

小学生の頃に自分が描いていた、色々な物語の数々を。

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