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私がわたしを描く世界   作者: 宇槻 叶
2章
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(6 旅立ちの準備に垣間見える現実世界)

私の承諾があってからは、旅の準備の全てがスムーズに進んでいるようだった。


ルーキは、ハイネに言われた薬の調合に精を出しており、すり鉢の中に、赤紫色の葉や黄色の花、乾燥した何かを入れてゴリゴリとすっている。普通なら茶色になりそうだが、なぜか、白い色合いに段々と変わっていく。それを火にかけるべく、鍋に移した。


オルは旅に連れて行ってもらえないことに不貞腐れながらも、厨房に食材を取りに向かった。20分ごろが経過した時に、食料や飲料を手に抱えられるだけ抱えて戻ってきた。その表情は、何かいいことがあったのか口元が緩みきっていた。嬉しそうな顔のまま、持ち帰った食材や壺に入った飲料らしきものを大きな鞄の中にぎゅうぎゅうに詰め込んでいた。


私はその動きを見ながら、机の前で立ちすくんでいたわけではない。ハイネとシャル、私は用意した地図の前でこれからの動きを確認していた。


しかし、訳の分からない地形や地名、会ったこともない種族の名前を話されても正直よく分からず、頭に入ってこなかった。だからこそ、ルーキやオルが大きな音を立てる際には、耳と目を奪われてしまった。


ハイネとシャルの話をまとめるとこうだった。


まず、八季の現状を知る必要がある。そのために、友好関係の深いキンナラと移動手段となるカルラを目指す。

そこで現状を把握し、必要ならばカルラの足を使い、各地に移動し、問題を解決していくというものだった。

キンナラに向かうための一番安全な抜け道や、姫のことを何と言って紹介するのか、儀式の日程をどうするのかに関して意見を交わしていた。


「シャル、もちろん、この国の問題を解決するのは早い方がいいわ。ただ、姫の安全を担保できなければ意味ないのよ。」


「けれど、どこまでも慎重を重ねすぎては、問題解決までに時間を要しすぎて、事に間に合わないかもしれない。」


「たしかに、わかるわ。でも、今まで私たちは4人で動きすぎたのよ。今になってそれが仇となっているわ。急に人目に着くところで3人でいたら、嫌でも目がつくわよ。」


白熱した議論を交わしていて、話に出来れば入りたくない。けれど、思うところがあり、声を発したくなった。


「あの…外部に出る前に、城の中でもう1人他の種族からでも仲間に引き入れてはいけないんですか?それで誰かに似せる…と…か…」


言い切る前にこちらにハイネとシャルが顔を向けたこともあって、的外れなことを言ったのだと思い、言葉が尻すぼみになった。


先程まで、迫力がありすぎていたハイネの顔が緩んだ。いや、彼女が意識的に緩めたのだろう。目の奥の尖までは消せていない。


「姫、ご助言頂き、ありがとうございます。…しかし、それはできません。」


「なぜですか? …この国の…仲間…なのでは?」


出来る限り穏便に済ませたくて、お客様に話をするように言葉を選んだ。


ハイネは、表情は変わらないものの、地図にひろげていた掌をぎゅっと握りしめて拳を作った。かすかにだが、言葉に感情がこぼれている。


「たしかに、この城には城を、姫を、国を守るための各衆の精鋭が集まっております。しかし、そんなに統率が取れているかというと、実は内部での争いは醜くもあります…。」


シャルが急に言葉を挟んできた。


「その内容は、私からお話させてください。」


シャルに顔を向けた時、目の端で右側にいたハイネが地図から手を引っ込めていた。地図には赤い絵の具のようなものがポタポタと垂れていた。血が滲むほどにハイネは怒り、拳を握ったのかもしれない。


「この地で最も力があるのは、あなた様…姫様です。そして、その次に力があるのは、種族の差はあれど、「姫の涙」を多く持つ者です。」


わざとらしくも自分の持つ、赤き石に手を触れた。


「この、姫の涙は、姫に近いものほどに多く与えられます。そして、それは平和を愛し、最も他の衆と争いの少ないキンナラに与えられました。他の者たちに多く与えては、戦争にもなりかねませんので。」


「なるほど…つまり、キンナラの皆様が他の衆の方々に弱みを見せると、そこをつけ入れられて、次の儀式の際に分配に関して意見があるかもしれない…ということですね?」


なんとなく、わかる。会社の私の位置みたいだから。みんなでやった方が効率がいいのはわかるが、それを行うと部長から嫌味を言われ、成果を取られ、最終的に居場所がどんどんなくなっていく。自分自身の力を見せつけないといけない…。


ただ、こうやって他人事として聞くとなんと無意味なんだろう…。


「ただ、私が…姫である私がキンナラの皆さんに恩恵が分配できるようにすればいいのでしょう? 私は、国を壊したくないし、平和的に解決したいです。力を貸してもらいませんか? 検討してみてください。」


上が別の態度を取れば、話が変わる。そう思って、口に出した。しかし、2人は言葉を失い、黙り尽くした。現実を引っ張りすぎて、自分の言って欲しい言葉を発してしまった。早く結論を出しすぎた。

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