人の終焉と原初の神の目覚
人の終焉と原初の神の目覚
2018.7.4
たかかいべ良介
断面宇宙とは、そして宇宙のありかた
宇宙は現在過去未来が同時に存在している。我々の観測結果からすると、宇宙はゼロから膨張し、収縮しゼロに帰するようになっているようだ。
我々の宇宙と違ってゼロから膨張し続ける宇宙もあるかも知れない。
いずれにしても宇宙を理解するために時間軸を組み込まざるをえない。それは我々が感知できる宇宙は本源宇宙の断面、言い換えれば本源宇宙の波動の一点であるからである。我々には隣接する断面宇宙ですら物理的には感知することはできないのである。
本源宇宙は始まりと終わりとその中間地点が同時に存在するものなのだ。
そして、我々の断面宇宙はその本源宇宙の中を波動として進んでいる。
ちなみにブラックホールは断面宇宙の一部が本源宇宙の始点と終点のどちらかのゼロ点に帰する現象なのだ。
イメージ的には回転楕円体の長軸の両端を、回転楕円体の中を進む断面宇宙の住人である我々は宇宙の始まりと終わりと認識しているのだ。
だが本源宇宙からしたら元々そのような存在であるから現在過去未来は同時に存在しているのである。
我々は目や耳や鼻などの感覚器官や思考を司る脳を利用して外界を感知し、その情報をもとに自分がどうすべきか考え、場合によっては外界に働きかけているわけだが、その自分と言う存在を統合する自我は精神世界、言い換えれば内的世界にある。内的世界は物理的宇宙と表裏一体となる内的宇宙である。内的宇宙は断面宇宙の一時点に留まるものではなく、深層においては隣接宇宙、さらにはその先まで広がっている。予言とか私たちがときどき経験する既視感はそのために生じるのである。
隣接宇宙は現在の断面宇宙の過去未来に近似したものではあるが、そのものと言うわけではない。あくまで現在の断面宇宙は我々の時間軸の過去の結果だし、未来は我々の断面宇宙にある様々な存在の様々な活動によって生じる可能性である。物理的存在である外的宇宙は因果律により支配されているが、それと表裏一体となる内的宇宙にある我々の自我を含む様々な精神活動によって行われる行動によっても影響をうけている。
内的宇宙の働きかけにより未来は変わるのだ。
隣接している各断面宇宙の現在過去未来が近似しているのは、本源宇宙にもそれと表裏一体となる内的宇宙があり、各断面宇宙の内的宇宙は深層においては繋がっている。そこには一定のベクトルが存在しており、それが大きな違いが生じないようにバランスをとっているからである。
一つの断面宇宙には始まりと終わりがあるが、断面宇宙は本源宇宙の中に無数に存在し、無限に生成消滅を繰り返す。そして、表裏一体の内的宇宙は深層部においては混沌として消滅することなく、自我の覚醒と混沌への帰還を繰り返し絶えず変動し、その変動は新たな断面宇宙を生み出す波動となっている。
開始点では絶えず新しい断面宇宙が生まれ波動のように本源宇宙の中を終点に向かって進んで行くのだ。
補足として、自分と言う内的宇宙の一部は眠っている時は内的宇宙の混沌にあり、たとえ死んだとしても内的宇宙の一部であることには違いはないのだ。
脳には物理的に記憶と言う機能があるので眠りから覚めたとき、過去からの自分が記憶されているので自分は連続的に存在していると認識している。
ここで言う記憶は生まれてから現在までの内的外的共に自分という存在をつくりあげてきた全ての軌跡をさす。そして自分と言う部分の内的宇宙が自我として自分を自分として認識している。
しかし、眠っていて夢をみていない時は自分と言う部分の内的宇宙は混沌の宇宙に戻っている。
見方を変えれば記憶と言う機能がなければ自分と言う存在は連続的存在ではなく目覚める度に新たな自分と認識するかもしれない。
話しを戻すと、朝目覚めた時、自分を自分と認識している内的宇宙の一部が同じものであってもなかっても、支障なく自分は何時ものように死ぬまで自分は自分として生き続けることができると言うことである。
自我である自分が自分であるという特定は記憶によってなされているということであり、曖昧な存在であるが、そこには今まで生きた全ての記憶があり、いわば自分の作品であり、それを成したものは永遠の存在でもあると言うことだ。
内的宇宙の一部である自分がゼロから自分と言う作品を創作しているわけだ。
尚、死とは自分が連続的存在であると言う認識が断ち切られると言う認識である。
たとえ、内的宇宙の一部である自分が永遠の存在であっても生きるためには記憶は必要であり、記憶により自分は自分を連続的存在と認めてしまい、そこに死と言う認識が生じるのも仕方がないことではある。
物語の始まり
ある恒星系がその終焉を迎えようとしていた。その第三惑星も45億年の歴史、知的生命体が生まれから50万年の歴史を終えようとしていた。この惑星の生命を育んだ恒星も後数年以内に赤色巨星となりこの星系には高等生物は住めなくなる。近接恒星系の居住可能惑星に向け数百人を準光速船で脱出させたが、この大絶滅に対する対策は今の人類にはそれ以上のことはできなかった。
「残される人類は50億人の内500人だけだね、第4惑星に10万人ほど宇宙開拓民はいるけど、どのみち私たちと同じ運命になるわね」「エリートでもない凡人の僕からしたら奇跡みたいな話だよ。わずかでも他の恒星系に人類が脱出できたことは、もし数十年科学技術の進歩が遅かったらそれすら人類はできなかったよ。今さらながら人類の科学技術としぶとさには敬服するよ。言っとくけど僕が脱出組に選ばれるなんてこれっぽっちも思っていなかったよ。それこそ凡人には夢みたいなことだから、僕が死ぬのは仕方がないことだと思っている」「でも、恒星の巨大化にともなってジワジワ焼かれて死ぬなんていやよ。いっそう超新星爆発して、一瞬の内に私を消滅してくれないかしら」「そう心配することないさ、先月連邦議会で安楽死法案が可決され3ヶ月後に施行されるそうだ、今、自死用の薬剤を急いで製造されていて法案施行と同時に役所で申請すればもらえるそうだ」「でもやっぱり、私はギリギリまで自死はしないわ、だって、この恒星系がどのように最期をむかえるか興味あるじゃない?」「ところで君は今どこにいてるんだい?」「私はこの惑星の西経74°北緯40°のあたりよ」「あなたはどこ?」「僕は東経140°北緯35
°辺りだよ」
つい先ほど、この恒星系に広がる内的宇宙の『そのもの』から、『あなたたち二人はこの恒星系の内的宇宙の核となるの、これからあなたたちを中心に全ての思いが集まるの、そして、その思い全てと共に本然宇宙の開始点ゼロに向かうの、あなた達は死んでいく人たちの死は無意味ではないと言う希望なの、お願い頑張って』と。
その後、内的宇宙を介して僕たちは会話ができるようになった。この不可解現象に僕たちは何故か疑問を持たなかった。この恒星系の危機的状況に今まで混沌としていた内的宇宙が一つの方向に意識を持ち始めたのだと、僕たちは何故か納得していた。
それから3ヶ月後、安楽死法が施行されることになったが、その申し込み者は連邦政府の予想を遥かに下回った。大部分の人々は家族と、恋人と、友達と、ペットと、仕事と、趣味と、思い出のある故郷と、山と、海と、川と、大地と、自分の大好きなものと最期まで生き死んでいくことを選んだ。
それから3年後、恒星が巨大なフレアを放ちながら膨張を始めた。
「ねえ、これから私達、多くの人達の思いを受けとめ同化していくことになるわ、最期をむかえる人々の痛み、苦しみ、愛するものとの別れの哀しみ、寂しさ、私にそれを受けとめられるかしら」「その不安は僕も同じさ、そのものはきっと僕達がそれに耐えられるから、『希望』になれと僕達を選んだのだと思う、それに人はひとりではその苦しみに耐えられないから、お互いに支えられるようにひとりじゃなくて僕と君のふたりをえらんだのと思う、もう始まってしまったんだ、今は『そのもの』を信じよう。」
「あなたはまだ生きているの?」「いや、僕はもう肉体を失った」「死ぬのはくるしかった?」「あぁ」「私はひとりなの、私が死ぬ間、私の隣にいてくれない?」「そうか・・・、すぐいくよ」「ありがとう!!!」
彼女は死の苦しみに顔を歪め泣き叫び死んだ、僕と彼女は暫し彼女自身の肉体が炎をあげながら消滅していくのをながめていた。
この惑星が一回自転する毎に半数の人々が死に、その思いは僕達の自我に溶け込んできた。でもその思いは始めは苦しみにもがいていても、やがて愛する家族や、愛する人や、愛するものがそばにいることを感じると、その思いは穏やかに、そして安堵に包まれて、ホンノリと輝きだした。
それから3年後、この恒星系の最後の思いが溶け込んできた、僕達はそれを慈しむように同化していった。
「ついに終わったな、これでこの恒星系の知的生命体である人が全て絶滅したことになる」「そうね、でもこれから『おおいなる再生』が始まるのよ」「そうだな、さあ行こう本源宇宙の開始点ゼロへ」
そこは本源宇宙の開始点ゼロ、そこではビッグバーンが次々に起こり絶え間なく断面宇宙の創世が続いている、そして僕たちはその中の一つの断面宇宙に、それと表裏一体となる内的宇宙の一部として溶け込んでいった。
その断面宇宙の中で無数の恒星が誕生と終焉を繰り返し有機生命体を構成する様々な元素を作り出していった。
そして数十億年後、僕たちは一つの恒星系にいた。その第三惑星には大量の水と炭酸ガスがあり、有機物が生成され、単純な生物が誕生し、複雑な生物へと進化していった。それにともない僕たち2人の自我は拡散していき、いよいよ別れの時がきたのが解った。
「今度は有機生命体・・・人として君と出逢いたい・・・」「私もよあなた・・・」「また逢えるだろうか?」「きっと逢えるわ『そのもの』は私たちにそれぐらいのご褒美はしてくれるわよ、きっと・・・」「さよなら、僕の大切な人」「さよなら、好きよあなた」
次に逢える日まで、暫し眠りにつこう・・・・・
おしまい。