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脳筋戦法で異世界蹂躙!  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:異世界
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第四話 同居生活

 俺は朝、小鳥の囀りという何とももまぁ平和なきっかけで眠りから覚めた。

 俺は寝ぼけた目を擦りながら辺りをキョロキョロと見渡しここが今までの自分の部屋でないことを認識した。

 そこで俺は思い出したのだ、あぁ、俺は異世界に蹴り落とされたんだっけか、と。



 「夢じゃなかったんだなぁ……」



 昨日までは、ずっと長い夢だと思うことがたびたびあった。

 そりゃそうだろう、あんな非現実的なことが突発的に起こったんだ。すぐに信じる方が凄い。

 それに、現在俺が着ている服も、先日フランさんに買ってもらった服だ。



 「アスカ―!」

 「はい、なんですか!」



 といきなり部屋のドアがノックされて外からフランさんの声が聞こえた。

 俺は驚きついつい声が大きくなってしまった。

 フランさんはガチャリと部屋のドアを開けて朝食が出来た旨を伝える。

 俺はとりあえず、フランさんに聞いて洗面台の場所まで行き顔を洗って歯を磨いた。



 「おはよ」

 「おはようございます」

 「ちゃんと眠れたか?」

 「はい、おかげ様で」

 「そりゃ良かった」



 リビングに行くとフランさんが朝食をテーブルに出しているところで、声をかけてくれた。

 昨日会った時、フランさんは赤い髪を後ろで結んで小さいポニーテールを作っていた。

 だが今はその赤い髪を下ろしているため印象が全然違い俺はそれにドキリとした。



 「朝は髪下ろしてるんですね」

 「おう、そうだぞ。変か?」

 「いえ、そっちの髪型も素敵だなと」

 


 言った後に気付いた。

 俺は今物凄く恥ずかしいことを言ったのではないか?

 フランさんもきょとんとしてるし。

 これ………やっちゃったな………。



 「そそうか? ありがと……」

 「い、いえ……」



 朝から微妙な雰囲気を作ってしまった。

 やっぱり俺に人付き合いは向かないようだ。

 その後俺とフランさんは朝食を食べて着替え、今日の予定を立てた。

 今日はさっそく昨日武器屋のおじさんからもらったガントレットと防具の使い心地をチェックするため依頼へ、そのあとはフランさんが軽く街を案内してくれる予定だ。



 「アスカ、片づけ手伝ってくれ」

 「はい!」



 朝食の後片付けをして、着替え、俺たちは外に出た。

 夢なんかじゃないとはっきりわかった、異世界生活二日目の始まりだ。



△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△



 「うーん………どれにしようかな」

 「昨日より増えてますね」

 「まぁな」



 ギルドの依頼掲示板には昨日よりも多くの依頼が貼ってあった。

 逆にその横のパーティー募集の掲示板は昨日よりも減っていた。

 つまりそれだけほかの人と組むことになった人が大勢いるというわけだ、俺みたいに。



 「よし、これだ!」

 「どれです?」



 フランさんが掲示板からはぎ取った依頼書を俺は見た。

 その依頼書には『ゴーレム三体の討伐』と書かれていた。

 しかもその横にはドクロマークがまるでエンブレムのように貼ってあった。



 「フランさん、これもしかしなくても難しいやつですよね」

 「そうだな」

 「二回目でこれですか」

 「頑張ろうぜ!」

 「えぇ………」



 そしてフランさんは俺が何かを言う前にさっさと受付にもっていき依頼を受理させ、反論する隙も与えられず俺はこの依頼への参加を余儀なくされた。

 ギルドの外に出るとフランさんは俺に、昨日ゴブリンたちのところまで行った速度で目的地まで走ってくれないかというのだ。



 「場所わかりませんよ?」

 「あたし背負ってくれれば、あたしが道案内するよ」

 「……わかりました」



 なんとなくいけそうだったというだけのアバウトな理由で俺はフランさんの提案を飲んだ。

 俺はフランさんを背中に背負って絶対に振り落とさないように腕に力を入れた。

 そしてあの天使さんから貰ったこの得体のしれない魔法じみた何かを発動させて足を踏み込んだ。



 「うはあああああああぁぁぁ!!!!」

 「大丈夫ですかフランさん!」

 「大丈夫大丈夫!! 気持ちー!!」



 大きく斜め上に跳躍した俺の背でフランさんは無邪気な子供のように楽し気な笑い声をあげた。

 俺のジャンプは軽く家を飛び越えるどころか数軒家を越しても減衰しなかった。

 これには流石に自分でも驚いた。



 「って、フランさん道案内!」

 「ああそうだった。そのまま右行け右!」

 「了解!」



 俺は家を十数軒飛び越したところで減衰し、他の人の家の屋根に着地してまた飛んだ。

 その間にもフランさんは道案内をしながらも楽しげに笑っていた。

 そうして到着したのはまだ新しい感じの鉱山だった。



 「お前凄いな! あんなの初めてだぞ!」

 「俺だって初めてですよ、あんなことしたの」

 


 俺は背中からフランさんを下ろして辺りを見渡す。

 一見何の変哲もないところだが……本当にいるのだろうか。

 と、フランさんは鉱山の中の洞窟へとすたすた歩いていった。

 俺もその後を追って坑道の中へと入っていった。



 「本当にこんなところにいるんですか?」

 「あぁ、ここは一見鉱山のように見えるが、れっきとしたダンジョンだからな」

 「ダンジョン、ですか」



 ダンジョンということはよくRPGに出てくるあれか。

 フランさんは俺に説明はいるかと聞いてきたが、俺は分からないことがあったらお願いしますと答えた。

 フランさんと共にどんどん奥へと進んでいくとフランさんは立ち止まるように俺に指示した。



 「照らせ。ライト」



 短くフランさんは呪文を唱えるとフランさんの手から明かりがポゥっと出た。



 「なんですかそれ!?」

 「なにって魔法だろ」

 「凄い……初めて見た!」

 「いやこれよりさっきのお前の方が十分凄いからな?」



 凄い、凄いぞ異世界!

 やはりそうでなくては!

 見るところフランさんはダガーとかは携帯しているようだがそんなにがっつりとした武器は持っていない、ということは魔法主体で戦うのだろうか?

 つまり異世界の特権である魔法が近くで見れるということか!



 「どうした、そんなににやけて」

 「あっ、いえ、なんでも、ないです」

 「そうか、んじゃ進むぞ」



 フランさんは光球をもう複数個作って自分たちの周りにふよふよと浮遊させて常に辺りを照らせるようにした。

 それから進むこと体感で約数分、またしてもフランさんの動きが止まった。

 


 「来るぞ」

 「来るって………」

 


 その瞬間目の前の道の横の壁がドゴンと大きな音を立てて穴があけられ、そこから岩石質の化物が姿を現した。

 赤く光る眼に岩石で出来ているのであろう大きな体、きっとこいつがゴーレムだろう。

 やばい、めっちゃ怖い!



 「参ったな、こんな狭い道でゴーレムか」

 


 現在俺たちがいるのはただの道で俺とフランさんは道の真ん中を歩いている。

 それにそこまで広くはなくもう二人ほど人がいて横に並んだら結構密着するかもしれない。

 フランさんは構えろ、と短く告げて戦闘態勢に入った。



 「炎よ、我が手に集え! フレイムショット!」



 フランさんが呪文を唱えるとフランさんの手から大口径の火球が放たれゴーレムに直撃した。

 だがゴーレムは後ろにのけ反って怯みはしたもののまだぴんぴんしていた。

 


 「もっとどでかい魔法を使えればいいんだが、最悪道が崩れるな」

 「……俺が、やります」

 「何言ってんだ。ゴーレムの一撃は岩をも砕く」



 それを聞いて、俺はすぐにある作戦を考え着いた。

 作戦というにはまりにお粗末なものだが。



 「だったら、その攻撃よりも固くなればいいってことですよね?」

 「はぁ!? だからそんなの――――」

 「このガントレットの強度どれくらいか分かりますか?」

 「………まず滅多に壊れないだろうな。詳しいことは後で説明してやる」

 「それさえわかれば十分です」



 俺は全身に力を入れて体勢を低くした。

 横にいるフランさんからは行くなという指示が下っているが俺はそれを聞き入れなかった。

 ゴーレムは重低音の叫び声を坑道全体に響かせ、俺はそれを合図に、一瞬でゴーレムの懐へ移動した。



 『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 


 少しのタイムラグを設けてゴーレムが俺に気付き、頭上から拳を振り下ろしてくる。

 俺は右腕に力を入れて片手でゴーレムの拳を防いだ。

 そして拳を払い、右手を握って力いっぱいゴーレムの胴体を殴りつけた。



 インパクトの瞬間、ガントレットに埋め込まれていた赤い宝石が光り、俺の右手は赤いオーラを纏った。

 鈍い音がゴーレムの胴体に響き、そのまま一直線にゴーレムは殴り飛ばされて衝撃波でただの小石になった。

 俺は殴った時の体勢から普通の状態に体勢を戻してフランさんの方を振り返った。



 「どうですか!」

 「おぉ………」



 その時のフランさんの表情は何とも言えない表情をしていた。

 一つだけわかったのは、若干引いていたということだった。

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