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脳筋戦法で異世界蹂躙!  作者: 羽良糸ユウリ
第二章:アカデミーにて
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第三十話 主様とやらについて

 なぁ、そういえば主様って結局なんなん?



 俺のそのたった一言で俺は小一時間ほどノンストップでアイリから主様についての講習会らしきものを強制的に受けさせられていた。

 いや、別に主様について知りたいわけじゃないんだと言ってもアイリは許してはくれなかった。

 いつの間にかフランさんも巻き込まれて夫婦そろって長々とお話を聞いていた。



 「アイリ、この話どこまで続く?」

 『私の知識が尽きるか限り……だな』

 「ちなみに知識のストックはあとどれくらいでしょうか」

 『そうだな……文献一冊分といったところか』

 「日が暮れるわ!!」



 俺とフランさんは思わず叫んで強制的に打ち切ってアイリの話を中断させた。

 アイリは『あぁ……』と心底悲し気な声を上げたがもしここで情に負けて救いの手を差し伸べてしまえばその手ごと底なし沼の底の底まで引きずり込まれて二度と戻ってこれないだろうと俺たちは分かっていた、だから心が痛むがそこは無視した。



 翌朝起きるとアイリが真っ先に聞いてきたのは『今日は主様の話はいいのか?』とのことだった。

 だから俺もフランさんも同じことを言った。

 


 

 「もういい」と。




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「それはまた、難儀だな。ともあれ結婚おめでとう二人とも」



 この日俺とフランさんは神殿へと訪れていた。

 教会の中のテーブルにキアラさんを交えて三人で話をしていた。

 今日も今日とて教会には沢山の人が訪れており敬虔な信者たちがこの世界での聖書らしきものを手に銅像の前で祈りを捧げている光景も見られた。

 


 「にしてもエトランゼとも暮らしているとは……昔のフランからは想像できんな」

 「あたしもびっくりしているよ」

 「……主様、か。ある意味では私たち信仰者と似ているのかもしれないな、崇拝の念を持っている」

 「そのために他の世界に侵攻しに来るかフツー?」

 「考えられはするだろうな。宗教戦争があるくらいだ、それの上位互換だとしても不思議じゃない」

 「はぁ~……そ」

 「それに、その主様の目的が分かったり蘇ったりしたところで何かアクションを起こすつもりなのか?」

 「あたしはないな」

 「君は?」

 「俺もないです、今のところは」



 今のところは、というのはもし俺やフランさんや近しい人たちが危険な目にあわされたりしなければということだ。

 それに俺がこの世界に転生したのもそういうのを食い止めるような主人公のような目的があって来たわけじゃない、余計なことには首はもう突っ込みたくない。

 この世界での幸せを手に入れた今、あとは平穏に過ごしたい。



 「あそうだ。結婚祝いをやらないといけないな」

 「いいよ、わりぃって」

 「そういうわけにもいかんだろう。ちょっと待っててくれ」



 そう言ってキアラさんは一度離席し、十分ほどして戻ってきた。

 その手には二つのお守りがあった。



 「この青いのが家内安全、こっちの緑が子宝だ。大事にとっとけよ」

 「ありがとうございます!」

 「なに、礼をされるほど大層なものは上げてないよ……っと、悪いがそろそろいいか? こっちも予定が入ってるものでは」

 「あぁ、わりぃな。急に来ちまって」

 「構わんよ。また何かあったら来い。もし子供が生まれたら加護を付けてやるよ」




△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△




 「お守りですねー」

 「あいつの作った奴なら効果はあるだろうな、アカデミーの時から注目されてたし」

 


 フランさんが言うにはアカデミーに在籍していた頃から護符の効果や技術などは教会側から注目されるくらいにずば抜けて効果が高かったらしい。

 しかしどうしてそんなにキアラさんの作った物が効果があるのか本人にも分からないらしいがキアラさん本人は「祈りが通じたからだろうな」と言っていたという。



 俺たちは少し買い物をした後に家へと帰った。

 リビングのテーブルの上にはアイリからの置手紙が残されており『暇だからギルドに行ってくる』と書いてあった。

 エトランゼであることがばれないだろうか、大丈夫だろうかとそれを見た時は心配していたがまぁ大丈夫だろう。

 お茶を二人分用意してテーブルに置きソファに腰かけながら息を一つ出して体を伸ばし、隣にフランさんも座った。

 


 「子宝ねぇ……」

 「子宝ですねぇ……」

 「作るか?」

 「ごふっ!」



 俺は飲んでいたお茶を勢いよく噴出した。

 真面目な顔して凄いことを言いだすなこの人。

 あ、いや、でも、夫婦なら普通のことなのか? あれ、どうなんだ?



 「何ボーっとしてんだ」

 「いやその……フランさんがいきなりそう言うこと言いだすもんで……」

 「変か? あたしはそのつもりだぞ?」

 「へ?」

 「まぁまだ時間があれだしな、夜になったら待ってろよ」

 「あの………フランさん? 目が………怖いです」

 



 そして俺は、今日もまた寝不足になるのであった。

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