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脳筋戦法で異世界蹂躙!  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:異世界
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第十話 稽古

 「ほんとにあたしでいいのか?」

 「お願いします。それに、フランさんの方が戦い慣れてますし」

 「んまぁいいけど、あたし基本的に感覚で教える派だからな」

 「ええ、構いません。俺もそっち派ですから」



 翌日、俺はフランさんに頼んで稽古をつけてもらうことになった。

 ぶっちゃけ今の俺の戦い方は能力に頼りっぱなしの猪突猛進スタイル、いつかは必ず限界が来る。

 ならそうならないように、せめて素の近接戦くらいは体に覚えさせておきたい。



 「では、胸を借ります、フランさん!」

 「よし来い!」



 と、意気揚々に俺はフランさんの家のだだっ広い庭で立ち向かっていったわけなのだが。

 結果は負けた、まぁ、うん、そりゃそうだよね。

 能力の使用有無問わないなら俺にだって幾らか可能性はあったけど、それを差し引いたら素の実力はただの一般人並もしくはそれ以下だ、敵うはずがない。



 「では、ダメ出しをお願いします」

 「全部?」

 「分かってましたけどもう少し具体的に」

 「うーん………単調なんだよなー。それとこう……なんていうか全体的に遅いっつーか探り探りっつーか」

 


 フランさんは俺にダメ出しをしつつ自分が体を動かして実際にどういうことかを説明する。

 が、何やってんのかさっぱりわからない。

 動きとしては蹴る殴るとかの簡単なものだったり回避運動だったりするのだがそのどれもが一々アクロバティック。

 さも当然のように空中で一回転しながら蹴り上げるし回避にいたっては手を使わずに縦横無尽に側転やらなんやらするし、一般人の視点ではただただ「凄いですね」としか言いようがない。


 

 「分かったか?」

 「いえ全然」

 「あー、うん、あたしもやっててなんとなく分かってた」

 「基本的な動きから指導お願いします」

 「基本的っつってもなぁ、大体みんなアカデミーで習うからどうしようも………あ、一人適役いたわ」

 「誰なんですか?」

 「ん、あぁ、あいつだよ―――――」



△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△



 「――――それで、私のところに来たと」

 「お前教えるの上手かったろ?」

 「ぬぅ………」

 「お願いします、キアラさん」



 俺とフランさんは先日訪れたばかりの神殿へと赴き、そこでシスターをやっているキアラさんを訪ねた。

 キアラさんは最初こそ渋っていたものの困っている人を見捨てられないのかため息交じりに了承してくれた。

 俺は深々と一礼して、キアラさんから手ほどきを受けることになった。



 「じゃあまずは組み手をしてみようか」

 「お願いします」



 俺はキアラさんと軽く組み手を交わしたのだがやりながらキアラさんの強さをひしひしと感じていた。

 多分、トップスピードで挑んでも直に捉えられてしまうだろう。

 キアラさんは俺に関節技を決めながら「ふむ」と言って俺を解放した。


 

 「やっぱり基礎がなってないな、これじゃ戦闘というよりただの喧嘩だ」

 「どうすればいいでしょうか」

 「トレーニングを積むことから始めよう」

 「トレーニング、ですか」

 「あぁ。筋トレや走り込みとかそういうところから始めた方が良いな、組み手ならフランがいるから大丈夫だと思う」

 「どれくらいやればいいでしょうか?」

 「……ちょっと待ってろ」



 キアラさんは一度教会の中へと入って一枚の紙を持ってきてくれた。

 そこには色々とトレーニングメニューが事細かに書かれてあった。

 


 「まずは手始めにこのメニューを一カ月続けてくれ、今日からだ」

 「家から神殿まで三往復……?」

 「片道二~三kmくらいだ、そうたいした距離でもないだろ。一往復ごとに五分の休憩を設けてくれ、勿論アビリティの使用はなしだ」

 「……頑張ります」

 「こりゃ大変だな、頑張れよアスカ」

 「お前もだぞ」

 「へ?」

 「一人でやるより複数人でやった方がやる気も出るし、お前の訓練にもなるからな」



 そうしてフランさんも巻き込まれてしまい、俺とフランさんは神殿から走って家まで帰り、そして五分休んでから再び神殿に向かって走っていった。

 結論から言って、一応走り切ることは出来たのだがラスト一往復に関してはもう二人とも息も絶え絶えになりながらフラフラと走り、三往復目が終わると二人とも庭に倒れて瀕死状態になっていた。



 「き…………きっつぅ……………」

 「キアラの奴………鬼だな………」

 「誰が鬼ですか」

 「うぇえ!? キアラ!?」



 庭に倒れている俺とフランさんのところへキアラさんが突然現れた。

 もしかして走ってきたのだろうか、そう思ったがどうやらそういう魔法があるらしい。

 魔法というものは、全く便利なもんだ。



 「ほら二人とも休んでいる暇はないぞ、次のメニューは腕立て五十回を二セットだ」

 「くっ……頑張れば達成できそうな回数に設定してあるのが憎い……!」

 「強豪校の部活内容みたいになってますね……」

 「その部活というのはよく分からないけど、ほら始めるぞ」

 「ていうかなんでここにいるんだよキアラ」

 「しばらくは私が二人の監督役をする」



 その瞬間俺は悟った。



 「あ、これ逃げられないやつだ」と。



 俺とフランさんは腕立て合計百回腹筋合計百回それから体感トレーニングを一時間ほどやってからさらに再び格闘訓練をしてその日は終了した。

 その夜、俺とフランさんはくたくたの状態で泥のように眠った。

 体感としては、ベッドに入って瞬きしたら次の瞬間朝になったような、それほどまでに熟睡していた。



 「じゃ……行きますか……」

 「おう……行くか……」



 そして、俺とフランさんは今日のトレーニングメニューを始めた。



△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△



 それから月日はあっという間に過ぎ、一か月が経った。

 毎日トレーニングをこなしながら依頼もこなしての毎日、正直きつかったがそれと同時にキアラさんからは逃げられないことが判明したため諦めた。

 原因はフランさんがトレーニングをさぼってしまい、キアラさんが完膚なきまでに叩きのめしたからだ。



 「でもまぁ、おかげで筋肉も付きましたし格闘戦にも慣れてきました」

 「あたしとしては、あんまし腹筋割れすぎててもなぁ………一応これでも乙女だし」

 「そうですか? 悪くないと思いますけど」

 「あたしだって色々と気にしてんの」

 「とりあえず、一か月お疲れ様二人とも」



 俺はしっかりと割れた自分の腹筋を触りながらここ一か月の過酷さを改めて感じていた。

 でも体全体が引き締まったし何より体が軽い、少し生まれ変わった気分だ。

 フランさんは鍛えられた腹筋を見て何やら複雑そうな顔をしていたが、まぁこれはこれで俺的には眼福だからいいかと。



 「効果が出たからと言って止めずにこれからも続けろよ、まぁ……このメニューでとは言わないが」

 「走り込みくらいは頑張ります」

 「あぁ、ぜひそうしてくれ。そうだ、一つ思っていたことがあるんだが……」

 「ん、どした?」

 「アスカ君はアカデミーには通わないのか?」



 それは至極当然な質問だった。

 俺の年齢でいえばこの世界ももといた世界も、普通ならば学校に通っている年齢だ。

 学校か……そんなこと考えもしなかったな」



 「……特に今は考えてません」

 「まぁ事情が事情だから仕方がないが、興味があるのなら行ってみるといい。扱いは転入扱いになるだろうかお金もかからないし、一年くらいしか通わないと思うぞ」

 「友達作りしてくればいいんじゃねぇか?」

 「友達………ねぇ………」



 学校か、正直あんまりいい思い出はないんだがな。

 人付き合いの塊みたいなものだし、思春期特有のめんどくさい感情がひしめき合っている魔境だ。

 でも――――



 「……少し、考えてみます」

 「あぁそうしろ、若いうちは何事も挑戦してみるといい」

 


 ――――せっかく異世界に来たんだったら、もしかしたらあっちなんかと違って面白いのかも知れないな。

 俺はアカデミーに通うことを頭の片隅に置いておいた。

 数日後に、アカデミーで学校祭的な催しが行われることが分かり、そこへ俺は足を運ぶことにした。

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