表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋戦法で異世界蹂躙!  作者: 羽良糸ユウリ
第一章:異世界
1/32

プロローグ 異世界

 「残念ですが………」

 「そんな……ことって………」



 俺はその場に膝から崩れ落ち、自分の不甲斐なさを痛感した。

 こんなことってあるのか……これほどまでに、自分はどうしようもなく救えないやつだったのか……!



 「お顔を上げて下さい。今回は特別に、私自らがあなたに魔法を付与させていた

 だきます!!」

 「……ありがとうございます、貴方くらいなものですよ……俺に優しくしてくれ

 るのは」

 「向こうの世界で、やっていけそうですか?」

 「はい! 頑張ってみようと思います!」

 「それは良かった……! では早速あなたを向こうに送りたいと思うのですが、

 心の準備は良いですか?」


 

 俺は両の手をぐっと握りしめて顔を上げ、立ち上がった。

 そうだ、俺はここから生まれ変わるんだ。



 「お願いします!」

 「では、行ってらっしゃいませ」




 そうしてこの瞬間、俺はたった一つの魔法チートを持って、異世界へと突き落とされた。



△▼△▼△▼△◆△▼△▼△▼△



 昔から、俺は人と上手く接することが苦手だった。

 自分なりにどうにかこうにかコミュニケーションを取っていたつもりだったのだが、それは全て裏目に出てついぞ役に立つことはなかった。

 今日だって、集団でいじめられているところに出くわして、人助けのつもりで介入したら返り討ちにされて助けたつもりの人にさえ恨まれた。


 

 「お前が入ってくるから明日から余計にあいつらがタチ悪くなるじゃねぇか!」

 「俺はただ、助けようとしただけで……」

 「調子に乗ってると思われたらどうするんだよ! こっちの気持ちも考えろよ!

 この偽善者!」



 あの時の彼は本当に心の底から怒っていたのだと思う。

 毎日、毎日、嫌になるほど全てが裏目に出て俺自身も煙たがられていじめられるようになった。

 


 「もう……いいか」



 俺はこれ以上何かをすることに対して嫌気がさしていた。

 家に帰ると机の引き出しから、小学校の頃に使っていたカッターナイフを取り出して自分の首元にあてて動脈を切ろうとした。

 だが途端に怖くなってしまいカッターナイフを投げ飛ばした。



 俺は何故か、制服姿のままコンビニに向かっていた。

 少しでもこの当てのない気持ちを誤魔化そうとしてここまで来たのだろうがどうして来たのかその理由が分からなかった。

 イヤホンを耳につけて俯きながら自動ドアの前に立ち開くと同時に若干食い気味に店内へと入っていった。



 「動くな!!」

 「えっ?」


 

 急に怒号が聞こえて顔を上げるとそこには全身真っ黒の如何にも強盗ですという格好の男が拳銃を構えて立って俺の方に銃口を向けていた

 俺は無意識のうちにその場から逃げ出した、だが体を反転させた瞬間発砲音が聞こえ背中に激痛と血が流れ出ていく感覚が頭を支配した。


 

 「はは………は………」



 何故か俺は笑っていた。

 きっと死ねたことに満足している自分がいたのだろう、不謹慎ながらそう思ってしまった。



 後ろからは男の焦った声が聞こえてくる、どうやらうっかり引き金を引いてしまっただけのようだ。



 俺は消えゆく意識の中、最後の望みをポツリと口から漏らした。



 「次生まれ変わるなら………面倒な世界じゃないと………いいな…………」



 人付き合い一つで人間性そのものが査定されてしまうような生きづらく息苦し異世界よりも、単純で多くの人が個性豊かに楽しく生きているファンタジーのような世界に。



 そうして俺は死んだはずだった、にもかかわらず気が付くと知らない場所に俺はポツリと一人立っていたのだ。



 「あ、気が付きましたか?」

 「あなたは……?」



 声のする方に振り向くとそこには綺麗な女性が一人立っていた。

 反射的に誰なのかと問うとその女性は俺を生まれ直させるためにいる天使だと名乗り名前は言わなかった。



 「あなたの最期の願い、受領しました!」

 「…………」

 「僭越ながら私があなたを異世界の住人として生まれ変わらせてあげます!」

 「えっと……その、良く状況が理解できないんですけど」

 「簡単に言うとあなたは死にました」 

 「でしょうね」

 「それであなたは死ぬ間際にもっと生きやすい世界に生まれ直したいと言いまし

 たよね?」

 「言いましたね」

 「だからそれを叶えようということです」

 「起承転結の転が抜けている気がするのですが」



 天使さんの言葉によると俺は死んでこの人は俺の最期の願いを叶えようとしているのだと。

 そして天使さんの職業は死んだ人間をこことは違う世界に送り込むという何ともご都合主義展開の職業だとも言った。



 「なら早いとこ送ってください」

 「その前に、あなたにはこちらのゲームをやってもらいます!」

 「ゲーム?」

 「異世界でのあなたのパラメータが決まるミニゲームです!」



 なるほど、人生は運ゲーだということか。

 ここまで運要素しかないとむしろ清々しい、それに死ぬ前の世界(あちら)とは違って自分で決めることが出来る分良心的だ。

 ゲームはよくあるルーレット方式でボタンを押すとスタートしてもう一回押すと結果が出るという至極シンプルなもの、俺はせめて何か一つくらいいい結果が出ればと願いながらボタンを押した。



 結果は惨敗。

 俺はただの村人Aとして生まれ変わるしかないようだ。



 「残念ですが………」

 「そんな……ことって………」



 俺はその場に膝から崩れ落ち、自分の不甲斐なさを痛感した。

 こんなことってあるのか……これほどまでに、自分はどうしようもなく救えないやつだったのか……!



 「お顔を上げて下さい。今回は特別に、私自らがあなたに魔法を付与させていた

 だきます!!」

 「……ありがとうございます、貴方くらいなものですよ……俺に優しくしてくれ

 るのは」

 「向こうの世界で、やっていけそうですか?」

 「はい! 頑張ってみようと思います!」

 「それは良かった……! では早速あなたを向こうに送りたいと思うのですが、

 心の準備は良いですか?」


 

 俺は両の手をぐっと握りしめて顔を上げ、立ち上がった。

 そうだ、俺はここから生まれ変わるんだ。



 「お願いします!」

 「では、行ってらっしゃいませ」




 そうしてこの瞬間、俺はたった一つの魔法チートを持って、異世界へと突き落とされた。



 そう、文字通り突き落とされたのだ。

 扉が開き俺は天使さんに蹴り飛ばされて青空に突き落とされた。



 「あなたの魔法は『身体能力の超向上』ですのでー!!!」

 「それだけの情報でどうやっていけとー!!!?」

 「言葉は通じまーす!!!」

 「せめて所持金を持たせようぜー!!!?」



 天使は扉の内側から現在パラシュートなしのスカイダイビング中の俺にそう言い残して扉ごと消えてしまった。

 俺はパニック状態に陥りながら高度数万mから落ちていった。



 「やばいやばいやばいやばい!?」



 俺は魔法の発動方法すら聞かされていない状態で必死に発動してくれと念じて全身に力を入れてみた。

 すると自分の体の周りに淡い緑色のオーラ的なものが出たかと思うと体が軽くなった気がした。

 その状態でジャンプするような行動をとるとなんと空中でのジャンプが出来たのだ。



 「うわまじか!」



 俺は自分のこの超人的な行動にこれ以上ないほどにテンションを上げながら笑っていた。

 人生は運ゲーだが案外捨てたものではない。

 段々と高度が落ちてきて眼下には見たことのない衣服を着て見たことのない街並みの大きな都市らしき場所が見えていた。



 「これが……異世界か……!!」



 テンションが上がってしまい、俺は誤ってその街に突っ込むようにして空中を蹴ってしまった。



 「あっ……」



 俺が自分の過ちに気付くよりも早く体は超速度で街に突っ込んでいき、



 そして、



 墜落した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ