ボロボロになっても
ぶん!と空を斬る音とともに、剣が俺に迫る。
いやらしいほどの正確さと、確かな殺傷力を持って。
「・・・っ!」
俺は声にならない悲鳴を上げつつ、体を限界まで反らして剣を避ける。
相手の攻撃を受けてはいけない・・・。
それは、一番最初に剣を交えて分かってしまった。
重すぎるのだ。一撃一撃が。
俺はどちらかと言うと力より剣速優先で、敵の攻撃がくる前に自分の攻撃を当てて倒すタイプなのだ。こんなパワー馬鹿と真っ向から斬りあうことなど出来ない。
そして俺の長所である速さも、腕と足の怪我で失われてしまっている。
「オイ、このままじゃ・・・」
「わかってんだよ!!」
紫の兵士の剣をかいくぐり剣を叩きつけるが、負傷した右腕では満足な斬撃ができず、鎧に弾かれる。
「ぐあっ!」
その傷みに斬った自分が呻いてしまう始末だ。
なんなんだよ。
なんなんだよこれ!
「オイ」
「なんだよ!?」
こんなときに話しかけるな!
「手加減してる場合じゃねぇぞ。殺す気でやれ」
「っ!」
頭の中の声に動揺して体の動きが一瞬止まる。
そこに斬撃がきた。
「・・・あ」
避けられない・・・。
左腹部に冷たい金属が侵入し、その感触を残しつつ通過する。
「うあっ!」
見回り兵士の薄い鎧などまるで役に立ってない・・・。
「くそ・・・」
床を蹴り、一度大きく距離をとった。が、それが限界だった。
体から力が抜け、膝をつく。ぱたっと倒れる。
腕と腹から血が流れ、床を赤く染めていく。
血を多く失ったせいで、意識がもうろうとして・・・。
「よかったな」
頭の中に声が響く。
「なにを・・・言って・・・」
この状況のなにがよかったのか、俺にはまるで分からない。
「ほら、間に合ったぞ」
「・・・え?」
治療施設の扉が大きな音と共に開き、たくさんの兵士がやってきた。
誰かが増援を呼んでくれたのか・・・。
「確かに、よかっ・・・」
そこで、俺の意識は完全に途絶えた。