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兵士は休めない

 治療施設は今日もにぎわっていた。

 治療施設がにぎわっているのはおかしいかもしれないが、実際にそうなのだから仕方ない。

 耳をすますと、会話が聞こえてくる。

「くふふっ・・・このあと一緒にごはん食べに行かない?」

「君何歳なの?」

「痛いから時間かけてゆっくり治してよ」

 ここで働けお前らなんて言ってはいけない。

 一応は俺の先輩方なのだから・・・。

 因みにそんな彼らに、治療係の人たちは、

「嫌です。暇じゃないんで」

「やかましいです」

「セクハラで訴えますよ?」

 と、現実を教えてあげていた。

 あ、一人見回り兵士が泣き出した。なんか言ってる。

 なになに?これで十四人連続?

 ・・・何を言ってるんだろう。よく分からないや。

「こんにちはああ!?大丈夫ですか!?」

 俺の怪我を見て、受付嬢は挨拶しながら驚くという面白いリアクションを見せてくれた。

「見た通り大丈夫じゃない。治療を頼みたいんだけど」

 俺が言うと、受付嬢は申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。

「すみません、今手が空いている人がいなくて・・・」

 それは予想通り。というかいつもそう。

 だが今回は俺にも考えがある。いつもいつも待たされるのは御免だ。

「じゃあ、君が治療してくんない?」

 俺の提案に受付嬢は目を見開く。

「そんな、ムリですよ!私受付嬢だしそんなひどい傷の治療はやったことないし・・・」

「じゃあ傷の治療自体はやった事あるんだね?」

 治療施設の受付嬢は、治療係の見習いがすることが多い。この受付嬢もそれだったらいいなぁと思ったのだが、言ってみるもんだ。

「いや完全に治さなくてもいいんだ。痛みを緩和するだけでも」

 俺は今普通に喋っているが、本音を言えばかなり辛い。ちょっとクラクラする。

 止血はしてきたが、それだけなのだ。

「・・・わかりました。できるかぎりやってみます。目を閉じてください」

 やった!いい人でよかった!頼んでみるもんだなぁ。

「じゃあいきます・・・」

 深呼吸したのち、受付嬢は魔力を集中する。

「・・・ヒール」

 おお、あったかい!

 説明する必要が無いかも知れないが、今受付嬢が使っているのは初級回復魔法『ヒール』。その効果は術者の魔力に依存する。

 そして回復魔法の質がいいと、治療中患部が温かく感じるのだ。

 つまりこの人、いい治療係になるんじゃないの?

 と、感心してたその時。

「・・・もう・・・限界です・・・」

「へ?」

 回復魔法が途切れ、治療が中断した。

「す・・・すみません・・・」

「・・・うん、大丈夫大丈夫痛みは引いたから・・・」

 さっきよりはまし・・・だよね。そういう事にしよう。うん。

「ありがとね。じゃ」

「えっ、駄目ですよ!全然治ってないじゃないですか!」

「大丈夫大丈夫」

 本格的な治療を受けるにはまだまだ時間がかかりそうだ。その間適当に包帯でもまいて、そのへんで時間を潰そうかと思ったのだが受付嬢に止められてしまう。

「いやだから、ちょっと時間を潰すだけ・・・」

「オイ、ちょっといいか?」

 俺の台詞を遮って、頭の中の声が話しかけてきた。

(どうした?)

 俺は声に出さず答える。

 頭の中の声との会話は、やろうと思えば心の声で会話できる。これって便利だが結構神経を使う。だからこいつは人と話しているときに話かけてこない。

 話かけてくるとすればそれは・・・。

 そこまで考えた時、治療施設の隅で雄叫びが上がる。

 そして後から聞こえる悲鳴。

「なんだなんだ!?」

 俺は受付嬢が何か言うのを無視して、騒ぎが起きている場所へ向かった。

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