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高宮さん  作者: 卵焼き
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高宮さんとの出会い

初投稿です。この小説を手にとって下さりありがとうございます。小説の執筆に関して初心者で、拙いところも多いと思いますが、お付き合いくださると嬉しいです。

 窓から入ってくる涼しい風が気持ち良い。足に太陽の光が当たって暖かい。この教室は、そんな春のあたたかさに触れたのか、とても穏やかな空間になっていた。窓から見える桜は、僕の席からみると絶景で、そのまま絵になるくらいだった。僕はそんな絶好の席にいた。


「相川君、前向きなよ」


 ただ一点を除いては。


 隣の席の高宮ゆかりと初めて話したのは、席替えの直後だった。


「よろしく」


 彼女はぶっきらぼうに挨拶した。(少なくとも僕はそういう印象を受けた。)整った顔立ちに、腰まで伸びる長い髪。思わず一目惚れしてしまいそうだった。


「あぁ、よろしく」


 僕はそんな彼女を見て、少し緊張気味に答えた。

 この学校は隣の席に異性が座るのが基本のようだった。したがって、僕の隣に女子が座るのは必然だった。でも、僕ははっきりいって、女子が苦手だった。僕はその理由の一つとして、僕の家族に女性が少ないことが挙げられると思う。小学校から女子とほとんど話さなかったし、話す時は緊張した。それがわかったのか、話しかけてきても、継続的に話しかけてくる者はいなかった。慣れるものらしいけど、この悪循環で女子は未だに苦手だった。

 だから僕は、僕が女子と話すことが苦手なことを汲み取ってくれる、”理解のある女子”と隣になりたかった。しかし、彼女は”理解のある女子”ではなかった。


 最初の会話はそれで終わった。僕はほっとしていた。


 翌日、いつものように授業が終わり、休み時間に入った。そこで僕は気づいた。


 国語の教科書がない。


 僕は焦った。前も国語の教科書を忘れているのだ。仲の良い友達である小池君に相談しようと思ったが、今日は休みだった。

 結局僕は、一人で次の国語の授業までおどおどしていた。


 先生が言う。


「それでは、二十四ページを開けてください」


 僕は少しの勇気を出して、先生にこう言った。


「あの、すいません。国語の教科書を忘れました」


「・・・そうですか。では隣の席の人に見せてもらってください」


 少し不機嫌のように聴こえた。


「・・・わかりました」


 高宮さんは黙って、教科書を真ん中に持ってきてくれた。教科書を真ん中に持ってくるのだから、教科書が見やすいように椅子を少し高宮さんの方に寄せなければならない。椅子を寄せる。鼓動が速くなって、顔が熱くなった気がした。頭がうまく働かない。


「では、相川君から二十四ページの九行目から最後の行まで音読してください」


「は、はい」


 思わず必要のない返事をしてしまう。

 僕は困っていた。頭の中がパニックになって、どこを読めばいいか聞き逃していた。なかなか読み出さない僕に、高宮さんは綺麗な白い人差し指で、読むべき場所と思われる箇所を指示してくれた。僕はそれに従って音読を始める。

 矢継ぎ早だったが、なんとか読み終えてほっとする。顔の熱が引く。けれど、隣に高宮さんがいると思うと、また顔が熱くなった。


 授業の終わりのチャイムが鳴って、礼をした後、僕はほっとしたように席に着く。


「大丈夫?」


 高宮さんが心配そうに尋ねてくる。そういえば、授業中に助けてもらったのだから、お礼を言わなければならない。


「あ、うん、大丈夫。それとありがとう。助かった」


「どういたしまして」


 手を口に当てて、上品に笑う彼女が魅力的で、思わず目を逸らした。


「もしかして、相川君って・・・」


 彼女が相槌を待っている。


「な、何?」


「女の子苦手?」


 僕の心臓がドクンと脈打った。

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